かるび(@karub_imalive)です。
ここ数年、静かな「縄文ブーム」が広がっていると言われます。最近20年ほどで一気に進展した日本の考古学成果と歩調を合わせるように、縄文土器や土偶など、世界でも類を見ない独特の「縄文の美」が見直されてきています。
そんな中、2018年7月3日から、東京国立博物館にて「特別展 縄文ー1万年の美の鼓動」の開催が決定しました。縄文時代に生きた人々の「美意識」を発掘された数々の文化財で振り返るという画期的な展覧会です。
先日、その概要を公表する記者発表会が東京国立博物館にて開催されたました。まずは速報として、その発表された概要をお伝えしたいと思います!
※なお、本エントリで使用した写真・画像は、予め主催者の許可を得て撮影・使用させていただいたものとなります。何卒ご了承下さい。
- 2018年7月、特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」が開催決定!
- 今回の「縄文」展の最大の特色とは?
- 展覧会の4つのみどころ~縄文の美をたっぷり味わおう!~
- ひと足早く展覧会の予習が平成館1Fの考古展示室でできちゃいます!
- 展覧会の予習にはコレ!オススメの関連書籍を紹介します!
- まとめ
- 展覧会開催情報
2018年7月、特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」が開催決定!
今回開催されることが決定した特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」は、ちょうど学生の夏休みを挟んだ2018年7月3日(火)~2018年9月2日(日)の2ヶ月間、東京国立博物館の平成館の特別展示室をすべて使って開催されることが決定しました。
21世紀に入ってから、東京国立博物館では、日本の考古学に関する特別展を過去2回開催してきました。2001年に開催された特別展「土器の造形ー縄文の動・弥生の静ー」、2009年の「国宝 土偶展」です。
特に、2009年の「国宝 土偶展」ではNHKの強力なTV番組特集との連動も奏功し、当初の予想を上回る128,285人もの入場者数を記録しました。予想外の集客の伸びは、関係者を驚かせたとともに、日本にも静かに考古学ブームが始まっている予兆を感じさせるものがありました。
そして、今回満を持して9年ぶりに開催されるのが、本展「縄文ー1万年の美の鼓動」です。まさに、9年分蓄積されたエネルギーを爆発させるかのように(?)縄文時代の国宝6件全件と、多数の重要文化財を含んだ合計約200点の総力展示となる予定です。(※国宝6件が出揃うのは、7月31日(火)~9月2日(日))
今回の「縄文」展の最大の特色とは?
これまでは、「土器」や「土偶」といった考古学系の展覧会が開催される場合、ほとんどは「考古学的視点」のみから当時の人々の狩猟・漁労・葬祭などの各生活文化や歴史が特集されることが多かったといいます。
しかし、今回の展覧会では、縄文時代の美意識に着目し、土器や土偶、土製品といった各出土品の「デザイン」にも注目していく「美術展寄り」のアプローチが取られる予定なのです。
いわば「縄文の美」をガッツリ追求して見ていこう!というのが今回の展覧会の最大の特色になるということですね。
それでは、具体的にどんな見どころがあるのでしょうか?「縄文の美」を味わうポイントを以下にまとめてみました。
展覧会の4つのみどころ~縄文の美をたっぷり味わおう!~
見どころ1:縄文時代の国宝全6件が上野へ大集結!
何と言っても、今回注目したいのは、縄文時代の国宝全6件が、会期中に一斉に東京国立博物館へと勢揃いすることです。(※全件揃うのは、7月31日~9月2日)関係者の粘り強い出展交渉によって、まさに奇跡の大集合となりました。昨年大好評だった京都国立博物館「国宝展」でも何点か登場しましたが、今度は東京で一斉にまとめて見ることができるとは思いませんでした。
縄文時代に多数出土した土器・土偶の中でも選りすぐりの個性と美を兼ね備えた珠玉の6件、是非味わってみてくださいね。
まず、こちらは縄文土器から、2018年現在では唯一「国宝」指定されている、新潟県篠山遺跡出土の「火焔型土器」です。いわば日本で一番有名な縄文土器であるといっても過言ではありません。縄文土器が一番ゴージャスで複雑なデザインへと発達した縄文中期の大傑作。縄目というより「炎」のデザインと一体化したかのような力強くプリミティブな造形は迫力満点です。
膨らんだ腹部、ふくよかな下半身から、豊穣の女神として「縄文のビーナス」とニックネームがつけられた国宝。一般的に、祭祀の途中ですべて壊されることが多かった土偶ですが、この「縄文のビーナス」は小さな土のくぼみに横たえられ、完全な形で見つかったそうです。
しかも、その後のX線分析によって、頭や腕など、各部位の粘土の固まりを接続するプラモデル方式(分割塊製作法)により丁寧に作られていることが判明。また、粘土には光沢を出すための「雲母片」まで混ぜられているという手の混みようです。
見た目以上に高い技術で製作され、縄文人に大切に祀られてきた「縄文のビーナス」。当時の人々の生活に思いを馳せつつ、是非間近でじっくり見てみたいです。
見どころ2:比較展示で、縄文土器の変遷をじっくり見る!
エドワード・モース
引用:Edward S. Morse - Wikiwand
日本の考古学は、明治時代初期の1878年、エドワード・モースが大森貝塚の発掘を行った時からスタートしたと言われています。始まってまだ150年ほどの、非常に歴史の浅い学問分野でもあるということですね。
今回の展覧会では、改めてその草創期から晩期まで、縄文土器の変遷をわかりやすく見比べることができる展示構成になるとのこと。縄文時代は草創期から晩期まで、約10,000年の歴史があります。その間、縄目の付け方・デザイン、土器のかたちは地域や時期によって目まぐるしく変わっていきました。
▼草創期(紀元前11,000年~前7,000年)
縄文草創期に製作された土器は、縄目も横一列で非常にすっきりしていますし、自立することもできません。この後、劇的に縄文土器の様式が発達していく中期や後期に比較するとシンプルそのものですよね。
▼中期(紀元前3000年~前2000年)
縄文土器の文様やデザインが一番派手になった縄文中期に制作された土器です。縄目は太く、複雑な形状へと進化しています。すでに、生活用品というよりアート寄りの非日常感あふれるデザインとなっています。国宝「火焔型土器」もこの時期に生み出された作品です。
▼晩期(紀元前1000年~前400年)
縄文晩期になると、縄目の文様は平らになり、形状も立体というよりエンボス加工のような控えめな質感へと変化しています。実用本位なシンプルな形の中で、陶磁器の絵付けのように、あくまで「入れ物」としての機能を邪魔しない程度のデザイン性へと後退しています。
このように、本展では、約10,000年の間に、縄文土器がどのように変化していったのか、わかりやすく解き明かしてくれそうです。
見どころ3:奇抜でかわいい土偶・土製品の数々!
そして、縄文時代と言えば、土器も良いですが、やっぱり土偶ですよね?!その世界にも類を見ない個性あふれるプリミティブな造形は、一つ一つがユニークかつ奇抜で、どこかしら「かわいさ」が感じられます。
岡本太郎が、1950年代に「縄文の美」と讃えた縄文人の独特な美意識と感性を感じられる、様々な土偶。それぞれ、「縄文のビーナス」「仮面の女神」など、一つ一つニックネームがついているのですが、その由来は何なのか?実際に実物を目の前にしながら、1つずつ紐解いていくのも面白いかもしれません。
コレなんかは、歴史の教科書やいろいろな書籍・イラスト等で見たことがある人も多いかと思いますが、通称「ハート形土偶」と呼ばれています。顔の形がユニークすぎますよね(笑)
また、出土したのは「ヒト」型の土偶だけではありません。「犬」や「イノシシ」を形どったかわいい動物型の土製品も多く作られました。
このように、奇抜だけど、どこかしら「かわいさ」を兼ね備えた土偶・土製品を思う存分味わる展覧会になりそうですね。どんな土偶と出会えるのか、非常に楽しみです。
見どころ4:まだまだある!縄文人の美意識がわかる暮らしのアイテム
縄文人の美意識がわかるアイテムは、土器や土偶だけではありません!獲物を仕留めるための武器である「尖頭器」(せんとうき)や、木の実などを保管しておく「木製網籠」(もくせいあみかご)、アクセサリーである「耳飾り」など、生活に根ざした様々な出土品からも、縄文人の中に息づいていた「美」へのこだわりを感じることができるはずです。
なんと、縄文時代に作られた、木製の網籠が、中に木の実が入ったまま、そのまま木炭化した状態でみつかったという奇跡的な出土品も出展されます。こちらもニックネームとして「縄文ポシェット」なる妙に可愛いニックネームがつけられています。展覧会のグッズなどで、お土産として実用化されていたら驚きですね^_^;
このように、今回の展覧会では、こうした彼らの暮らしのアイテムの中にも、積極的に「美」を見出していこう、というコンセプトが貫かれています。土偶や土器だけではなく、彼らの使っていた「日用品」からも意外な美しさを感じ取っていけたら良いですね。
ひと足早く展覧会の予習が平成館1Fの考古展示室でできちゃいます!
今から待ちきれない「特別展 縄文ー1万年の美の鼓動」ですが、展覧会が始まるのはまだまだ先になります。そこでオススメなのが、展覧会までに東京国立博物館平成館の「考古展示室」で予習をしておくことです。
実際、2018年2月時点では、展覧会にも出展される予定の3つの作品が展示されていました。
重要文化財 遮光器土偶 青森県つがる市木像亀ヶ岡出土 東京国立博物館蔵
また、気軽に触って重さや質感を確認できる土偶のレプリカや、鳴らせる銅鐸のレプリカが設置されているなど、平成館の展示室は、単に見るだけでなく気軽に「体験できる」常設考古展示コーナーなのです。一度見てみると、本当に面白いですよ!
持つとひんやりしてて、意外にずっしり重たい
総合文化展(平常展)のチケットか、開催中の特別展のチケットがあれば無料で入れますので、こちらも是非予習にチェックしてみて下さいね!
※縄文展とは関係ないですが埴輪も奇抜でかわいい(笑)
展覧会の予習にはコレ!オススメの関連書籍を紹介します!
ここでは、僕が展覧会の予習として、特別展「縄文」のために実際に読んでみてよかった書籍を紹介していきます。随時7月まで読み進めていきますので、その都度、オススメの書籍があればどんどん追記していきますね。
「週刊ニッポンの国宝100」第9号(バックナンバー)
縄文時代の土偶や土器について特集した書籍は多数出版されていますが、初心者でもわかりやすい解説とカラー写真で、しかもワンコインで手軽に楽しめるのが、こちらの書籍。小学館より昨年10月から刊行中の分冊百科本「週刊ニッポンの国宝100」第9号です。こちらでは、本展に出展される縄文時代の国宝土偶5体を特集しつつ、土偶の持つ不思議な美しさについて、徹底解剖してくれています。
▼週刊ニッポンの国宝100「第9号」誌面
まずは最初にこちらを読んでから、いろいろな専門書へ移っていくのが良さそうです。僕はこちらの雑誌、すでに4周ほど読みました!!
縄文人の生活文化を楽しく学べる本「知られざる縄文ライフ」
同じく、縄文時代に生きた人々の「衣食住」に関する生活文化を、軽妙で楽しい文体、ゆるいイラストで読ませてくれる入門書です。上記で取り上げた「週刊ニッポンの国宝100」同様、入門の入門には最適の書籍でした。
まとめ
昨年、日本を巡回した「ラスコー展」、そして古代ギリシャ文化のレベルの高さに刮目した2016年の「古代ギリシャ展」、現在国立科学博物館でつい最近まで開催された「アンデス文明展」など、私たちは、ここ日本にいながらにして、日本以外にも優れた古代の文化・文明は世界中に多数存在したのだということを目撃してきました。
しかし、ここ日本でも、10,000年以上前から「縄文式土器」「土偶」といった、プリミティブな美しさを備えた「縄文文化」が花開いていたのです。
今回の特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」は、日本中から集められた屈指の出土品で、縄文時代の最初から最後まで網羅した画期的な企画展です。私達日本人のはるか遠い祖先が生活文化の中で体現してきた「美意識」をじっくり感じる、またとない機会になりそうですね。今から夏の展覧会が非常に楽しみです。
それではまた。
かるび
展覧会開催情報
◯美術館・所在地
東京国立博物館 平成館
〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
◯最寄り駅
JR上野駅公園口、鶯谷駅南口より徒歩10分
東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅から徒歩15分
東京メトロ千代田線根津駅から徒歩15分
京成電鉄京成上野駅から徒歩15分
◯会期・開館時間
2018年7月3日(火)~9月2日(日)
09時30分~17時00分(入場は閉館30分前まで)
※毎週金・土曜日は21時まで
※日曜日及び7月16日(月・祝)は18時まで
◯休館日
毎週月曜日、7月17日(火)
※ただし7月16日(月・祝)、8月13日(月)は開館
◯入場料
一般1600円/大学生1200円/高校生900円(当日券)
一般1400円/大学生1000円/高校生700円(前売券)
一般1300円/大学生900円/高校生600円(団体券)
※中学生以下無料
※団体は20名以上で適用
※障がい者とその介護者1名は無料(障害者手帳の提示要)
※前売券販売期間:4月3日(火)~7月2日(月)
◯HP
・展覧会公式サイト http://jomon-kodo.jp/
・東京国立博物館HP http://www.tnm.jp
◯公式Twitter https://twitter.com/jomon_kodo