かるび(@karub_imalive)です。
先週、お盆で里帰りした際に、東京で見逃していた「始皇帝と大兵馬俑展」を大阪の国立国際美術館で見てきました。
帰省すると、母が朝日新聞からタダ券もらったから行こう、ということで、最初は「どうせ兵馬俑がいくつかおいてあるだけなんでしょ?まぁタダ券だから行ってみるか」とそんなに期待していなかったのですが、展示が予想外にしっかりしていてびっくり。
兵馬俑の実物だけでなく、その他出土品や、「秦」国が成立する紀元前8世紀頃~春秋戦国時代を経て滅亡するところまでの歴史を通した「秦」国に関する出土品、また始皇帝が中華統一を成し遂げた後の治世での施策がわかるような出土品なども出展されており、純粋な意味で「勉強になりました」。非常に良かった!
以下、感想を書いてみたいと思います。
- 1.混雑状況と所要時間目安
- 2.音声ガイドは壇蜜
- 3.「始皇帝と大兵馬俑」展とは
- 4.一番の目玉は兵馬俑の実物8体
- 5.その他気になった展示
- 6.同時開催のミニ展示「キングダム展」
- 7.まとめ
- 展覧会開催情報
- おまけ:今回の展示会の予習/復習で役に立ったもの
1.混雑状況と所要時間目安
2016年2月に終了した東京展は、40万人以上の人出で大変な盛り上がりだったようですが、大阪では会期当初こそ混雑していたものの、8月に入ってからは落ち着いているようです。
とはいえ、僕が行ってきたのは夏休みのお盆の真っ最中でしたので、非常に混雑していました。会期終了まで、土日はやはり混雑するとは思いますが、不快なほど人が連なっている感じではないと予想します。
子供連れがかなり多く、夏休みの自由研究のためにノートを熱心にとっていた学生も目立ちました。隣に科学博物館が隣接しているので、ハシゴで見に来る子供も多いのかもしれませんね。
所要時間目安は、約90分程度でした。音声ガイドが通常展示よりも少し項目数が多いので、音声ガイド付きなら2時間あればじっくり見て回れると思います。撮影可能場所が出口直前に2ヶ所、入口前に1ヶ所あるので、カメラを持っていくと良いですね。
2.音声ガイドは壇蜜
(引用:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000143.000009214.html)
セクシータレントながら、知性も兼ね備えたマルチタレントとして活躍の幅を広げる壇蜜ですが、本展の音声ガイドに起用されています。2015年度のNHK中国語講座のホスト役を務めたこともあり、割と違和感はなかったような。落ち着いた語り口で非常に聞きやすかったです。
また、音声ガイドではないですが、子供向けの「ジュニアガイド」も、インフォメーションデスクで配布されています。ネットからもダウンロードできますので、子供を飽きさせないためにも、事前にチェックしてみるのもいいかもしれません。
★ジュニアガイドをダウンロードする
http://heibayou.jp/wp/wp-content/themes/ver2.1.1/pdf/guide.pdf
3.「始皇帝と大兵馬俑」展とは
「秦の始皇帝」という言葉って、よく聞きますよね。紀元前3世紀中盤の古代中国の西方の大国、「秦」の王位を継いだ嬴政(えいせい)が中国の歴史史上はじめて全国統一を成し遂げた際に、「王」を超える「皇帝」として、自ら「始皇帝」と名乗ったことにちなみます。
★秦の領土(全国統一後)と始皇帝陵の場所
(引用元:http://heibayou.jp/column)
今回の展示会では、展示後半部分に設置された、秦の始皇帝が、秦の王都「咸陽」に建設した巨大な始皇帝陵に埋葬品として作製した、自身の兵隊を模した「兵馬俑」の展示とその副葬品が目玉です。
展示前半では、紀元前8世紀頃から、秦が滅亡する紀元前206年までの歴史を振り返り、青銅器や武器、土器などの変遷を見ながら、秦が辺境の小国から強大な帝国へと成長する過程・歴史を見ていきます。
それ以外にも、中華統一を成し遂げた始皇帝は度量衡の統一や大規模な土木工事、通貨や文字の統一など様々な政策を打ち出しました。それを裏付ける発掘品の数々が中国全土の博物館から厳選され、今回の展示会に持ち込まれています。
4.一番の目玉は兵馬俑の実物8体
大兵馬俑・・・というには実物展示は8体しかなかったわけですが、それでも実物を目の当たりにするのは非常に刺激的な経験でした。将軍や部隊長クラス、弓兵、歩兵など、各クラスの実物大人形が1体ずつじっくり見れるように展示されており、それぞれの人形に、詳しい解説と音声ガイド項目が用意されています。
実際の並びはこんな感じでした。大部屋にどーんと8体並べられています。
(引用元:http://umeda.keizai.biz/headline/photo/2312/)
じっくり見てみると、靴の裏の滑り止めや、髪の毛の結び目など、細かいところまで写実的な造型が施されており、見れば見るほどよくできているな~と感心しきりでした。
5.その他気になった展示
それ以外にも、今回の展示会では沢山の展示品が並んでいました。個人的に印象深かった展示品を、いくつか紹介したいと思います。
5-1.秦の公鐘
(引用元:http://heibayou.jp/artwork)
秦は、紀元前8世紀頃に前王朝「周」の国土の一部を引き継いで建国されたのが始まりでしたが、この青銅製の公鐘は、秦建国当初に周王朝の影響下において製作されました。驚いたのは、これが約2900年前に作られた青銅器だということです。西欧だと、古代ギリシャ時代が始まったばかりの頃ですね。
ちなみに、古代中国の精巧な青銅器は、東京の根津美術館のコレクションが有名です。開館時は常設展示されているので、機会があったらチェックしてみてください。ここの青銅器も非常に見応えがありますよ。
5-2.水道管
(引用元:http://heibayou.jp/column)
始皇帝は、中華統一とともに、様々な統一事業を行いましたが、首都咸陽の王都では、雨水を集め、飲用水とするため、地中に土器製の水道管を張り巡らせる公共事業を行いました。
今でこそ当たり前の技術ですが、まだコンクリートも土木技術もそれほどなかった時代に、土器だけで手作りで力技で作ってしまう発想に感銘を受けました。これは一見の価値有りだと思います。
5-3.銅車馬
(引用元:https://pbs.twimg.com/media/CnIf6cdWAAAA02_.jpg:large)
始皇帝は、自ら大規模事業として手がけた広大な始皇帝陵において、死後の世界でも兵隊たちを率いて中華世界の王として活躍することを夢見たと言われます。この4頭立て馬車も、王墓に副葬品として収められたのですが、非常にリアルで精巧かつ豪華な作りが印象的でした。(※展示品はレプリカです)
5-4.兵馬俑のレプリカ(写真撮影OK)
展示会場出口の直前に、今回の展示会に合わせて作られた歩兵のレプリカが通路の左右に40体くらい設置されていて、写真撮影OKとなっています。兵馬俑の人形は8000体すべて顔つきや表情なども違うのですが、よく観察すると1体ずつ本当に表情が違い、リアルに再現されていました。
6.同時開催のミニ展示「キングダム展」
ヤングジャンプで連載中の、秦の始皇帝をモデルにした戦国大河マンガ「キングダム」とタイアップして、2016年2月に東京の山手線車内で実施した「キングダム展」で使った資料の一部が、「始皇帝と大兵馬俑」展の入口横部分に展示されていました。
キングダム初期の制作秘話や、キャラクター設定、原画など、非常に興味深い資料が盛り沢山ですよ。
また、「キングダム」のメインキャラ達と一緒に記念撮影できるコーナーなどもあり、「キングダム」好きにはたまらない展示会でした。
7.まとめ
2015年から東京、九州と回って、この大阪展が最後となる「始皇帝と大兵馬俑展」ですが、構想から実現まで数年間かけた、非常に大規模で丁寧な展示会です。現地・中国の西安では、今もまだ兵馬俑の発掘が継続されているということですが、いつか現地に行って、8000体全部を見渡してみたいなと思いました。
中国古代の歴史と文化に興味を持つきっかけにもなる面白い展示会でした。関西方面の方は、是非行ってみてくださいね。
それではまた。
かるび
展覧会開催情報
展覧会名:特別展「始皇帝と大兵馬俑展」
会期: 2016年7月5日(水)~10月2日(日)
会場:国立国際美術館(大阪)
公式HP:http://heibayou.jp/
Twitter:https://twitter.com/heibayou2015
※東京展、九州展は日程終了
おまけ:今回の展示会の予習/復習で役に立ったもの
今回の展示会が終わった後、秦の始皇帝について本格的に調べてみようと思い立ちました。まずはマンガから入ろう!ということで、気合でキングダムの既刊43巻全巻を読破しました。キングダムの漫画中で武将達が着ている甲冑や武器、馬車など、時代考証はちゃんとしているのだなと感心。
秦の始皇帝「政」が王位についてから中華統一を成し遂げるまでを描く一大叙事詩(となる予定)ですが、連載10年、40巻以上出版されている現在でも、まだ物語前半戦です。ストーリーのほとんどを戦場での戦闘シーンで埋め尽くされた男臭いマンガですが、一気読みして、中だるみしないのはさすがにヤングジャンプの売上No.1の人気マンガ。血沸き肉踊る戦国武将の熱さにテンションが上りました。ワンピースやジョジョのように超長期連載になりそうな名作です。
そして、「キングダム」とは対照的に、戦いのシーンがほとんど出てこないのがこちら。全4巻で、呂不韋と嬴政の父、子楚(荘襄王)が出会うシーンからスタートし、その子嬴政=始皇帝による中華統一までをコンパクトに描き出しています。史記の記述により忠実に、嬴政よりも、途中で失脚する嬴政の後見役、呂不韋に焦点を当てたストーリー展開からは、戦国の世の無常観や哀愁が感じられます。
電子書籍化されてすでに10万ダウンロードされた人気作とのことですが、2016年8月22日現在、KindleUnlimited読み放題対象となっています。ヒロイックな英雄譚を少年ジャンプ的なノリで熱く描き出すキングダムと比べると、落ち着いて淡々とした対照的な仕上がり。これはこれで、落ち着いて読めて面白かったです。