あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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映画「フィレンツェ、メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館」試写会行ってきました!

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かるび(@karub_imalive)です。

先週金曜日、美術ブロガーの大御所、ブログ「青い日記帳」のTakさん(@taktwi)に声をかけていただき、今年7月に公開予定のドキュメンタリー映画「フィレンツェ、メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館」試写会に行ってきました。非常に良かったので、感想を書いてみたいと思います。

1.本当は卒業旅行で行くはずだったフィレンツェ

もう18年前の話になります。大学卒業時に、仲の良い友達と卒業旅行に行くじゃないですか。自分も、非常に楽しみにしていて、当時サークルの親友二人(留年組/笑)と企画していたのですが、個人的な金銭的事情から、土壇場で僕だけ行けないことに。

ヨーロッパなんて、そうそう時間も無ければ思い切って旅行に行けないですからね。僕の回りほとんどが、エッフェル塔に行ったり、ストーンヘンジ見たり、システィーナ礼拝堂に行ったりする中で、僕はといえば、卒業間際の2月、3月は奈良ジャスコにて時給750円でレジ打ちバイトをしていました(泣)

それから17年。時は流れ今に至ります。社会人になって、随分と仕事でも海外に行かせてもらい、海外で面白おかしい経験もたくさんできたのですが、唯一心残りなのが、まだヨーロッパに行けていないこと。

妻と美術館に行ったり、テレビで「美の巨人たち」などの美術番組を見るたびに、ローマやフィレンツェ、ヴェネツィア、パリなどの映像が映るわけです。すると、その度に、妻の発する無邪気な(?)「あ、私ここ卒業旅行で行ったよ~」という一言。「ふーん、そうなんだ」と平静を装いつつも、心のなかでは地団駄を踏みつつ、子供もようやく小学生になったので、そろそろ本気で見に行かねば、と旅行計画を練っているところでした。無職になって暇だからね。

そんな折、冒頭のタケさんから、今回の、フィレンツェをテーマにした美術ドキュメンタリー映画の試写会の話をいただき、こりゃちょうど旅行の良い下見になるし、行くしかないな?と、喜び勇んで行くことになったわけです。

2.実は試写会に参加するのは初めて

映画は年に5,6回シネコンなどで洋画を中心に見るのですが、試写会に参加するのは実は初めて。よく、映画が終わった後のステマ的インタビューみたいなカメラを向けられたらどうしよう、その時はダッシュして逃げよう・・・とか自意識過剰に構えていったのですが、まぁそんなのはなかった(笑)

試写会専門の「試写室」っていうのがあるんですね。いや、全然知らなかった。今回試写会が開催されたのは、月島の倉庫みたいな一角を使った「BMS試写室」という所。

大江戸線月島駅から歩いて数分なのですが、これがまた素敵に迷いやすいところなわけです。案の定、入り口にたどり着くまで数分間ロストいたしました。

中はこんな感じです。
試写室と言っても、全部で60席くらいの小規模なものでした。f:id:hisatsugu79:20160608010414j:plain

ソファの大きさは明らかに通常の劇場よりも一回り大きく、フカフカしてます。f:id:hisatsugu79:20160608010456j:plain

今回は、3D映画ということで、このようなメガネを掛けての鑑賞となります。f:id:hisatsugu79:20160608010553j:plain

60名ほどの定員の中、定刻になり、半分の30名位が集まって、試写会が始まりました。

3.どんな映画なの?

映画のカテゴリとしては、ドキュメンタリー映画です。というより、超豪華音声ガイド付き4K・3Dヴァーチャル美術館ツアーといったおもむきです。

今回の映画では、メディチ家が一番栄えたルネサンス期を中心に、14世紀~17世紀でフィレンツェで生み出された建造物・壁画・彫刻・工芸品・絵画などを、ウフィツィ美術館を軸として、順番にヴァーチャル・ツアーで回って見ていきます。

予告編が、オフィシャルで公開されていますので、貼っておきますね。


映画『フィレンツェ、メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館3D・4K』予告編

映画全編を通じて進行役を務めるのは、サイモン・メレルズ扮するメディチ家のロレンツォ・デ・メディチ(1449-1492)。絶頂期のメディチ家当主をわずか20歳で継ぎ、その圧倒的な財力でフィレンツェの芸術家を庇護し、ルネサンス最盛期の美術・芸術を後世に残しました。治世晩年になり、宣教師サヴォナローラの反動的な宗教改革運動により、晩年にはフィレンツェを追放されてしまいました。まさに激動の時代を生きた人でした。

ロレンツォ・デ・メディチ
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そして、作品の解説役としては、ウフィツィ美術館長アントニオ・ナターリが起用され、たっぷりと各作品を解説してくれます。いいな~。知性あふれる一流文化人オーラがビンビンに出ている人です。こういう年の取り方をしたい。

http://i.res.24o.it/images2010/SoleOnLine5/_Immagini/Cultura/2012/03/Col-vaso-Medici.-258.jpg?uuid=43055288-6deb-11e1-b2e5-2d3508b6898c
(引用:http://i.res.24o.it/images2010/SoleOnLine5/_Immagini/Cultura/2012/03/Col-vaso-Medici.-258.jpg?uuid=43055288-6deb-11e1-b2e5-2d3508b6898c

4.映画のみどころは?

4-1:3D技術・4Kハイビジョンなど最新技術を駆使したリアルな映像

 

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3D、4K、ドローンでの至近距離からの撮影など、最新の撮影技術・手法を駆使して撮影されているので、非常に映像はリアルです。さながら現地に行って作品を見てきたかのような錯覚になりました。

生でその場で作品と対面した際の臨場感には一歩及ばないものの、書籍やネット画像で見るものとは違い、リアルな立体感がしっかり感じられました。特に、肉眼ではきっちり見えないような天井画や壁画の細密に描かれている部分や、空中から見た建築物などの全体像などは、映像ならではの良さが出ています。

4-2:前作「ヴァチカン美術館 天国への入り口」からの改善点

実は、本作に先駆け、2015年春、ローマのシスティーナ礼拝堂などを特集した「ヴァチカン美術館 天国への入り口」という作品が上映されていました。今回と同じ3D、4K技術を駆使して撮影された作品です。

ただ、Yahoo映画のコメントなどを見ていると、それほど満足度は高くなかったようなんですよね。

たとえば、「上映時間60分ちょっとで2,000円弱は高いんじゃないの?」とか、「ナレーターがいまいち」と不満も上がっていました。また、そもそも大阪では3D4Kを表現できる映画館がなく、仕方なく2Dで見た、、、という話もありました。

今作では、それら問題点にもある程度改善されているようです。上映時間は全97分と拡大し、日本語ナレーションでは、「美の巨人たち」ナレーターの小林薫を起用するなど、日本の美術ファンに違和感がないように工夫・改善されています。

4-3:ダヴィンチ未完の傑作「東方三博士の礼拝」修復現場ルポ

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(引用:https://cinema.ne.jp/news/uffizi2016053010/florence_sub3/

生涯、寡作で有名だったダ・ヴィンチですが、描きかけで絶筆となった「東方三博士の礼拝」という作品があります。この作品は傷みが進み、2011年からフィレンツェの修復専門工房にて、大規模な修復作業に入っています。

その修復がもうすぐ終了し、今年中には展示再開される見込みなのですが。その修復状況についてのリアルな現場が取材されています。ダ・ヴィンチの作品は、何度もキャンバスの上で本人が上書きを重ねて制作されるなど、後からの修復作業は非常に困難を極めたようですね。

5.映像で紹介された主な作品

今回、映像で紹介される主な作品は、オフィシャルサイトで予め紹介されています。そして、こちらが作品が点在する場所。有名なスポットから、まんべんなく作品が紹介されています。*1f:id:hisatsugu79:20160607201243p:plain

ここから、特に気に入った作品群を少し個人的に紹介したいと思います。(ところでこれってネタバレっていうのかな・・・)

5-1:ミケランジェロ「ダヴィデ像」

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全長4メートルもあるとは知りませんでした。システィーナ礼拝堂の大壁画にしろ、巨大彫刻にしろ、その美しさは当然として、これを一人で作り上げてしまう根性には恐れいりました。様々な角度から、至近距離で撮影されたダヴィデ像を堪能できますよ。

5-2:サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂

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建設当時、ヨーロッパ最大だった大聖堂。ブルネッレスキが設計した斬新な二重構造のドームに、ドローンを飛ばして、通常なら難しそうな角度から撮影を試みています。見えない角度からみても、手抜き箇所は当然なく、建築物の壮麗さが際立って印象的でした。

5-3:ブランカッチ礼拝堂壁画 マザッチョ「楽園追放」

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(引用:Facciamo una pausa♪

壁画に描かれた初期ルネサンスの代表的な画家、マザッチョの「楽園追放」では、ルネサンス期以前で描かれることがなかった人間のリアルな表情や、よりリアルな立体表現が見どころです。

5-4:ティツィアーノ「ウルビーノのヴィーナス」

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西洋絵画で、まだ実際に見ていない絵画のうち、個人的に、今一番見てみたい作品です。これ、2008年来日時には見逃してるんですよね。後世の美術家たちの作品を見ていると、これに影響を受けたんだろうなぁという作品がいっぱい。ティツィアーノの代表作にして最高傑作だと思います。

5-5:ベンベヌート・チェッリーニ「メデューサの頭を持つペルセウス」

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(引用:http://yukipetrella.blog130.fc2.com/blog-entry-331.html

こういうのが普通に広場に鎮座してるのが、イタリアの凄い所だと思います。まぁ日本でも上野公園にいけば西郷隆盛像とかあるにはありますが・・・

5-6:その他有名絵画たち

その他、ダ・ヴィンチ「受胎告知」「アンギアーリの戦い」、ボッティチェリ「春」「ヴィーナスの誕生」、ミケランジェロ「聖家族」、ラファエロ「ひわの聖母」など、フィレンツェの美術館に収蔵されている有名絵画達はしっかりと網羅されています。

それぞれ、リアルな3D画像と、アントニオ美術館長の詳細な解説が入りますので、お楽しみに。これら絵画については、いずれ待っていれば、生きている間に日本に何回か来てくれるでしょう。そのための予習にも最適ですね。

6.感想とまとめ

今回のドキュメンタリー映画「フィレンツェ、メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館」は、最新技術の粋を尽くして極限まで「ライブ感」に迫ろうとしています。そして、全くの美術館初見の視聴者にもわかるように非常にわかりやすい語り口で解説されており、美術ファンとしては非常に満足しました。

わざわざ美術作品を「映画」という形で見なくてもいいじゃないか。という見方もあるかもしれません。所詮、映像で見た印象は、実際にライブでナマの作品と向き合った時の臨場感には勝てませんから。

また、美術展に関しては、日本は恵まれています。待っていれば、いつかは東京か京都に運ばれてきて、展示会で見ることが出来ると思います。実際、今回の映画でも紹介されたボッティチェリの「春」やダ・ヴィンチの「受胎告知」、カラヴァッジョのメデューサの盾など、大物作品であっても、普通にここ10年で東京に来ていますから。

でも、壁画や彫刻、ステンドグラスなどの大型工芸品、そして建築物なんかは、どう見ても日本に持ってこられないわけで、こういった五感に訴えるリアルなヴァーチャル・ツアーは時間・場所を超えてどこでも安価に芸術鑑賞を楽しめるという点で、非常に貴重な機会だといえます。

公開は、7月9日よりシネスイッチ銀座他で始まります。技術的な制約や、作品のメジャー性から、公開される劇場は限られてしまいますが、機会があったら是非足を運んでみてください。良いドキュメンタリー映画でした。そして、Takさん、本当に良い機会をいただきありがとうございました。

【7月15日追記】
7月13日~10月10日にて国立新美術館(東京)、10月22日~2017年1月15日で大阪国立近代美術館(大阪)
で、アカデミア美術館所蔵「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展がスタートします。今回映画でフィーチャーされるフィレンツェとはまた違う流派のイタリア・ルネサンスの名画を集めた展示会です。もしよければ、こちらも足を運んではいかがでしょうか?

それではまた。
かるび

*1:アカデミア美術館からは、そういえば7月13日から国立新美術館「アカデミア美術館展 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」が始まりますね。これも楽しみ。