あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】「キセキ あの日のソビト」の感想とあらすじ・伏線の徹底解説!/GReeeeN結成時の熱い青春ストーリーを描いた映画!

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かるび(@karub_imalive)です。

先月1月28日に封切りされ、GReeeeNが出来上がるまでの実話を元に製作された映画「キセキーあの日のソビト」を見てきました。熱心なファンが開始初週につめかけた初動型なのかと思っていたのですが、お客さんは家族連れ、学生、中高年と幅広い年齢層の人が来ていました。

早速ですが、映画を見た感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「キセキ-あの日のソビト」の基本情報

<映画「キセキ」予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】兼重淳(※助監督「海街diary」「そして父になる」「海よりもまだ深く」
【配給】東映
【時間】111分

是枝裕和監督下での助監督としてのキャリアが長い兼重監督。今作は2009年以来の監督作品となりました。予想外と言っては失礼ですが、動員数は非常に好調。東映系では久々に興収20億円以上が狙える邦画実写作品となりました。年末に大爆死した「ポッピンQ」と公開順を逆にすればもっとヒットしたかも・・・。

2.映画「キセキ」の主要登場人物とキャスト

JIN(松坂桃李)
GReeeeNのプロデューサー兼作曲・編曲担当「JIN」がモデル。
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HIDE(菅田将輝)
GReeeeNリーダー、作詞作曲担当「HIDE」がモデル。
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ナビ(横浜流星)
GReeeeNメンバー、「Navi」がモデル。
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クニ(成田凌)
GReeeeNメンバー、「92」がモデル。
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ソウ(杉野遥亮)
GReeeeNメンバー、「SOH」がモデル
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誠一(小林薫)
JINとHIDEの父親。
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珠美(麻生祐未)
JINとHIDEの母親。
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3.ラスト・結末までの詳しいあらすじ(※ネタバレ注意)

3-1.音楽活動に熱中するJIN、受験勉強に励むHIDE

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森田仁(以降、JINと表記)は、メタルバンド、High Speedのリーダーで、ボーカル担当。今日もステージで大暴れし、興奮のあまりステージ上で観客を負傷させてしまった。そして、負傷者が運び込まれた病院が、父、誠一の勤務する病院だったことが運の尽きだった。

帰宅し、血が出るほど激しく鉄拳で叱られるJIN。昔から喧嘩は滅法強いJINだが、厳格で森田家の絶対君主である父、誠一にだけは全く頭が上がらない。

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ようやく父から解放されて自室に戻ると、弟、英明(以下、HIDEと表記)が机に向かっていた。HIDEは、医学部を目指して現在1浪中。中高生の時は、兄弟ふたりで音楽に打ち込んでいた時期もあったが、今は大事な受験の直前期。HIDEは音楽活動を完全にストップして受験勉強に集中していた。

そして、試験当日。猛勉強も虚しく、HIDEは1浪後も本命、国際医科大学を落ちてしまう。姉、ふみも帰宅し、祝賀会をするつもりで久々にJIN以外の家族全員が揃った夕飯のすき焼は、お通夜のようになってしまった。折しも音楽活動を本格化させていたJINは、今日もライブで家には戻ってこなかった。

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父、誠一は心臓外科医だ。目下、一番の悩みは先日入院してきた、拡張型心筋症という難病を抱えた患者、高校1年生の櫻井結衣のことだった。しかし、実家で息子たちに見せる厳しい顔とは打って変わって、優しく患者に寄り添うように診察する誠一だった。

3-2.JINのメジャーデビューとHIDEの医学部不合格

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後日、2浪目に突入したHIDEは、今日も同じく2浪目へ突入した友人、ナビと予備校で講義を受けていた。講義終了後、行きつけのHMVで海援隊のCD「贈る言葉」を購入した。最近レジ担当に入ったアルバイトの新人「木下里香」が気になっていたが、この日会計の時に思い切って話しかけてみた。話が合いそうだ。

一方、JINにはこの日、嬉しいニュースがあった。ライブ終了後、プライマルミュージックのやり手のディレクター、売野哲夫から直接メジャーデビューへの誘いを受けたのだ。音楽で身を立てて父を見返したいJINは、自宅で父に報告するも、逆に鉄拳を受けてしまった。口答えしたため、居間の日本刀まで抜かれてしまう始末だ。JINは、家を出て一人暮らしをすることにした。

父との関係はこじれたが、メジャーデビューが正式に決まった。景気づけに、12万もする高い部屋を借りて、本腰を据えた。家に残してきた機材は、後日HIDEに届けさせた。

その後、HIDEは、里香と自然に付き合うようになった。恋愛は順調な反面、成績は一向に上がらない。HIDEは、歯の不調に悩む母の言葉を聞き、より合格可能性の高い歯学部へと進路変更することを決意し、父、誠一に思い切って宣言し、了解を得た。

3-3.High Speed解散とGReeeeNの始動

JINのメタルバンド、High Speedはめでたくメジャーデビューを飾ったが、セールスは伸び悩んだ。2ndシングルのため何度もダメ出しを受けるうち、メンバー内の方向性の相違から、バンド内の雰囲気が悪化した。そして、ある日とうとうプロデューサーの売野にキレてしまうJIN。事実上、バンドは空中分解してしまった。

一方、歯学部志望へと進路変更したHIDEは、今度こそという思いから、成績を伸ばして今度は合格を掴み取った。再び姉も揃った2年目のすき焼は嬉しい祝勝会となった。そして、HIDEは封印していた音楽を再び始めることにした。塾時代からの友人、ナビに加え、沖縄でDJをやっていたクニ、カラオケ上手なソウと意気投合し、ヴォーカル・グループを結成することになった。

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早速、キャンパス近くの河川敷で曲作り、練習に打ち込み、1曲めのオリジナルソング、「声」が完成した。問題は、誰に編曲をしてもらうかだが、HIDEは、迷いなく兄のJINの家に頼みに行った。JINは、HIDEから渡されたデモテープを聴いて、彼らの才能を感じて本気でアレンジを行った。

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グループ名を「Green Boys」とした彼らは、こうして完成した「声」を披露するため、友人や恋人の里香を呼んで、ライブを行った。大成功だった。ライブにはJINも来て、喜んでくれた。

3-4.GReeeeN、メジャーデビューへ!

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JINには編曲だけでなく、プロデューサーとしての才能もあった。彼らの才能に賭けたJINは、プロデビューを渋るHIDEを説得しつつ、プロデューサーの売野に、彼らが学業にも専念できるよう、前代未聞の「覆面アーティスト」として売り込んだ。JINが何度も粘り腰で交渉・調整した結果、4人はグループ名を一新し、「GReeeeN」として1stシングル「道」でデビューが決まった。

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GReeeeNの成功は、JINに新しい気づきと自信をもたらした。High Speedのように自身が主役で戦うのではなく、彼ら4人の縁の下の力持ちとしての自身の才覚を発揮できる喜びと、音楽業界でやっていけそうな手応えを得た。

1stシングルの発売日、母、珠美や姉、ふみは素直に喜んでくれたが、JINとHIDEが本当に認めさせたいのは父、誠一だった。父を説得し、乗り越えることで本当の意味で将来が開けるのだ。

3-5.GReeeeNの飛躍、父誠一との和解

JINは、父誠一の病院へ行き、「音楽で心のドクターになる」と宣言したが、音楽に傾倒するあまり、成績が悪化していたHIDEは、逆に父から叱責されて一時はGReeeeNの活動を休止することを考え始める。悪いことに、彼女の里香とも喧嘩して、この時期疎遠になってしまった。

危惧したJINは不器用ながら弟HIDEに「絶対続けろ」と激励した。これで覚悟が決まったHIDEは仲間とJINに感謝し、2曲目の製作に取り掛かる決意をした。

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数ヶ月後、完成した2曲目のシングル「キセキ」はオリコン1位を獲得する大ヒットとなり、ヒットチャートを席巻した。そして、HIDEは父、誠一に音楽活動を公認してもらうため、改めて誠一に頭を下げた。

一方、誠一はこれ以上の病状の悪化を防ぐため、結衣の拡張型心筋症手術に踏み切ることを決意した。最初は不安だった結衣だったが、GReeeeNの「キセキ」を聴いて勇気づけられ、誠一に手術を受けることを申し出た。

HIDEの大学2年の夏休み。父、誠一から音楽活動を許されたHIDEは、JINと合宿して音楽作りに臨むため、機材を積んで出かけようとしていた。出掛けに、誠一から「お前ら、GReeeeNって知ってるか?お前らも、GReeeeNみたいな曲を作れるようになれ」と叱咤された。JINとHIDEは、ようやく父に認められ、晴れ晴れとした気持ちで仲間との夏合宿へ向かった。

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それから数年、HIDEは国家試験に合格し、歯科医となった今も覆面アーティストとして歯科医とアーティストを兼任する忙しい毎日だった。誠一の結衣への難手術は成功し、結衣は退院して美大へ進学した。結衣の決意を促したGReeeeNは、今や誠一の心の支えとなっているのだった。

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4.感想や評価(※ネタバレ有注意)

主人公の成長が周りに好影響を与え、家族も団結するという王道ストーリー

本作では、2種類の「キセキ」が描かれてます。主人公であるJINとHIDEがそれぞれの試練・挫折を乗り越え、GReeeeNとしての活動を軌道に載せるまでの「個人」としての成功譚と、GReeeeNの音楽を媒介として、次第に「家族」がわかりあい、団結するというストーリーです。

物語前半で、音楽という「冒険」に乗り出すJINとHIDEの前に立ちはだかる誠一という強力な「ゲートキーパー」。超強力でした。JINは家を出て逃げ出し、HIDEも度々歯科医との両立に弱気になりますが、最後は音楽に対する情熱、原点を思い出し、兄弟を中心として「キセキ」という名作を生み出します。

すると、後半はその彼らが作り出した「キセキ」が厳格な父、誠一の心を動かし、父子の和解と家族の団結がもたらされました。JINは、GReeeeNのプロデュースを通して世間に認められ、そしてラスボスである父からの承認も勝ち取り、真の意味で自立を果たしました。

ストーリーとしては、やりすぎなほど典型的な王道パターンではありますが、そうだとわかっていてもやっぱり泣けますね。主人公の成長と家族の団結というテーマは、普遍的です。落ち込んだ時、元気がほしい時に何度も見返したくなる映画でした。

わかりやすい歌詞、ストレートなセリフ回し

僕が感じるGReeeeNの曲の魅力の一つは、HIDEが紡ぎ出す「直球ストレート」なわかりやすい歌詞です。力のある4人の歌声に乗せたポジティブな歌詞は、どんな時でもスッと入ってくるので、安心していつでも聞けます。

それを反映してか、映画中のセリフも余計なまわりくどい表現は一切なし。場面場面で、ズバズバと各キャラクターは歯切れよく素直に気持ちを伝え合います。

例えば、音楽と学業の両立に迷うHIDEとデートに来た里香のシーン。会うやいなや、

里「・・・ヒデってホントは何がしたいの?」
ヒ「何がしたいとかじゃなくて、親父は俺が歯医者になるって思ってるし」
里「え、でも、お父さんのために生きてるの?」

世間話もせず、いきなりビシっと直球勝負(笑)!そして、HIDEがまだごちゃごちゃ言うと、あっさりその場を去っていく里香。おいおい、支えてやれよ!と思ったのですが、本作はクライマックスにかけて始終こんな感じで、複雑さよりわかりやすさが優先されているような印象が強かったです。もうちょっと工夫しろよ!と一瞬思ったのですが、GReeeeNの世界観なら、むしろ余計な飾りとかはいらないのだろうな、と思って、このあたりは割り切って鑑賞させてもらいました。このベタすぎるセリフ回しは、評価が別れるところかもしれません。

松坂桃李の表現するJINの孤独さ、菅田将暉の演じるHIDEの天真爛漫さ

しかし、今作は主役2名が非常に好演でした。父と反目し、バンドの空中分解を抑えきれない中、孤独感を抱えながらGReeeeNのサポートに活路を見出そうとするJIN、知らず知らずに周りを引きつけ、天真爛漫で陽性なHIDEと、それぞれ非常にキャラクターが立った熱演でした。ベタすぎるセリフ回しがなくても、この二人の表情を追っているだけで、ストーリーがしっかり頭に入ってきます。

映画が進んでいくにつれて、対照的な性格の二人が、音楽ではバッチリ相性を発揮して傑作を生み出していくという、二人の間のケミストリーみたいなものが確かに感じられたのは、個人的には非常にみどころでした。

反面、GReeeeNの他メンバーはやや空気な感じなのが少し残念

今作のテーマではない!と言われればそれまでですが、JINとHIDE以外の3人のメンバー、クニ、ナビ、ソウがほぼ空気だったのはちょっと残念だったかも。また、今回の映画の構成なら、HIDEの彼女、里香は居なくても良かったと思います。(だって、逆境で少し言い合いしただけでそのまま去っていくのなら、彼女っていえます?)

2時間を切るコンパクトな構成の中、JINとHIDEの2人のそれぞれのストーリー+父親のサイドストーリー、さらには里香とのエピソードを取り扱ったので、GReeeeNの「仲間集め」のシーンや、その他メンバー3人のエピソードはカットせざるを得なかったのでしょう。少し長くなってもいいから、彼らメンバー内の葛藤や試練に焦点を当ててほしかったです。

5.伏線や設定などの解説(※ネタバレ有注意)

タイトルにもある「ソビト」ってどんな意味?

映画内では一切紹介されない、サブタイトル「あの日のソビト」の「ソビト」とは、彼らGReeeeNの造語で、「自由に新しいことに挑戦していく人のこと」という意味があるそうです。ちょうど、映画公開後にJINのツイートでも説明されていました。

ちなみに、ソビトは、漢字で書くと「素人」または「空人」と当てるそうです。なるほど~。

なぜ父はHIDEに音楽活動を許したのか?

父、誠一は、物語序盤でJINに「お前の音楽は所詮お遊びだ。医療に比べて、命のやり取りもない。ただのお遊びにすぎん!」と一刀両断していました。しかし、誠一の説得には渋っていた結衣が、GReeeeNの「キセキ」に勇気づけられ、拡張型心筋症の手術を決意したことから、誠一は音楽の持つ力を初めて認識させられました。

プラス、「俺は心のドクターになります」と宣言したJINの本気の決意にも感じるものがあったのでしょう。学業を疎かにしない、という条件付きでとうとうHIDEの音楽活動を公式に認めたのでした。

父、誠一はJINやHIDEがGReeeeNだと知っていたのか?

映画内のラストシーンでは、父、誠一がGReeeeNが息子たちであると認識していたかどうか、描写がぼかされ、鑑賞者にその判断は委ねられています。

ノベライズ版「キセキーあの日のソビト」では、最後まで「知らなかった」設定になっていますが、映画パンフレット内で、兼重監督は「それは鑑賞者の想像にお任せします」と、敢えて説明を避けました。知っていて、演技できるような性格じゃなさそうなので、僕もノベライズ版同様、父親は映画内の時間軸では知らなかったのではないかなと解釈しています。

ちなみに、現実のGReeeeNでは、もちろん父親は彼らの音楽のことはよく知っているそうです。(あたりまえですよね?!)

HIGH SPEEDは実在するバンドなの?

映画冒頭でJINがVoを務めたメタルバンド「HIGH SPEED」は、残念ながら架空のバンドです。ただし、2009年にデビューした、JINがVoを務めたハードロック系エレクトロバンド「High Speed Boyz」がモデルにはなっていそうです。

HIGH SPEEDのほうが、どちらかというとより北欧エクストリームメタル寄りの一昔前の王道路線に近くて僕は好きですが、映画内で披露された「UNCHAINED」「the way」の2曲は、残念ながら現状のところ発売予定はなさそうです。

6.実際のGReeeeNとの相違点は?

本映画作品は、完全に事実を追ったドキュメンタリー作品ではなく、GReeeeNの代表的なエピソードを参考にしつつ、独自に脚色されたフィクションです。(どちらかというと2016年3月に出版された自伝的小説「それってキセキ」のほうが、より事実に近い)

そこで、実際のGReeeeNの出自や活動履歴など、事実と映画で比較して、主な相違点をピックアップしてみました。

HIDEとJINの実家は日野市ではなく、京都市

HIDE、JINともに実家は京都市の嵐山の近くだそうです。地元でバンドやライブ活動を行っていたが、限界を感じたJINは単身東京へ出て音楽に邁進しました。HIDEは、東京の大学ではなく郡山の奥羽大学へ進学しています。

GReeeeNの活動拠点は郡山で、2人組のデュオでスタート

奥羽大学に進学したHIDEは、JINの力を借りつつも、浪人時代から友人だったnaviと、2002年に二人でGReeeeNを立ち上げています。グループ名も、「e」が一つ少ない「GReeeN」でした。映画内のように最初から4人だったわけではありません。

しかし、そこから1年ほど活動した後、低音部に厚みがほしいと考えたHIDEが、奥羽大学の学内で1学年下の「SOH」と同学年で1つ年齢が下の「92」をスカウトして、今の4人体制の「GReeeeN」になりました。

デビューは10社以上の争奪戦だった

JINの売り込みの才覚もあり、実際には、GReeeeNのデモテープを聴いたレコード会社から、10社以上のオファーが届いたそうです。最終的には、「覆面デビュー」OKとした現在の「Universal Music」からのデビューに落ち着きました。映画では、薄氷のデビューとして描かれていましたが、実際は、メジャーデビュー前から彼らの音楽は非常に注目されていたのですね。 

HIGH SPEEDはGReeeeNより後でメジャーデビューしている!

もう一つ大きな相違点としては、HIGH SPEEDのモデル(であろう)High Speed Boyzは、実は2006年にデビューしたGReeeeNよりも後の2009年にメジャーデビューしているということです。映画とは逆だったわけです。JINがプロデューサーとして業界で認知されたあとの結成であり、契約先については、やはり各社の争奪戦となったようです。

ちなみに、現在High Speed Boyzは(それほど売れなかったからなのか)一旦活動を休止した後、活動形態を少し変え、2014年から復活してネット上を中心に活動をしているようです。

7.映画内で紹介されたGReeeeNの音楽

Green Boys「声」

劇中、GReeeeNが最初に作り上げた曲。実際は、HIDEとnaviの2人体制の時に作られました。2人は、忙しい授業の休みの合間に郡山から深夜バスで移動して、東京に住むJINの自宅でレコーディング作業をするなど、かなり苦労したようです。

今回、映画製作を記念して、映画キャスト4人組でカバーした「Green Boys」版がリリースされました。思ったより実物に近くて、普通に聴ける良い仕上がりだったので、びっくりしました。今時の俳優は、歌もしっかり歌えるんですねぇ。凄い。

GReeeeN「道」

GReeeeNの1stシングル。映画ではHIDEが留年の危機に陥っていましたが、実際に成績が悪かったのはHIDEではなく、SOHなのでした。

留年危機により、SOHは父親から実家の佐賀に呼び戻されます。GReeeeN脱退の危機だと感じたHIDEは、SOHに対する思いを「道」の歌詞に綴ってを携帯メールで送り、一緒にGReeeeNを続けていきたい気持ちを伝えたと言われています。

GReeeeN「キセキ」

映画では2ndシングルとされていましたが、実際はデビューして1年半後の7thシングルでした。HIDEに国家試験が迫り、ギリギリのタイトなスケジュールの中、野球ドラマ「ROOKIES」の主題歌としてリリースされました。苦労した甲斐あって、この曲がGReeeeNの最大のヒット作となり、当時、2008年度のシングル年間売上第4位を記録しています。甲子園の入場ソングにもなりましたね。

GReeeeN「ソビト」

デビュー前から曲自体の構想はありましたが、お蔵入りしていた作品。今回の映画公開に合わせて、アレンジを2017年版へとアップデートして、リリースされたシングル。映画のエンドロールで流れました。お互いの出会い=キセキについて歌ったラブソング仕様ですが、男女に限らず、大切な仲間や家族との出会い、きずなについての曲としても解釈できます。

8.まとめ

いち地方の大学の同級生がたまたま4人集まり、たまたま身近なところに天才的なプロデューサー(JIN)がいて、歯科医師という本業がありながら、常識外の覆面顔出しNGという、破格の条件でメジャーデビュー。3rdシングル「愛唄」や代表曲「キセキ」を筆頭に大ブレイクし、デビュー10周年を経過してもその衰えない人気ぶりは、まさに規格外・常識外の出来事だと思います。

デビュー10周年を記念して企画された本作は、タイトル通り、そんな彼らの「奇跡」とも言うべきデビュー前後の「軌跡」をストーリー化した作品でした。多少あざとい脚色が入っていたり、人物像を追いきれていないところはあるものの、実話エピソードを元にした、見た人誰もが勇気づけられる佳作だと思います。

それではまた。
かるび

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年2月現在上映中映画の感想記事一覧

9.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

10周年シングルズ(初回限定盤)

デビュー10周年と映画「キセキ」にタイミングを合わせて発売された、シングルだけを集めた最新のベスト盤。デビューシングル「道」から、「キセキ」「愛唄」など代表作、そして最新の「ソビト」まで、これまでリリースしたシングル、約30曲が収録されています。かなり売れているみたいですね!

映画ノベライズ「キセキーあの日のソビトー」

映画脚本を土台として忠実に小説化された作品。誠一は、なぜ医師を目指したのか?なぜあんなに厳格なのか?母、珠美はなぜ誠一と結婚したのか、など、映画では省略された各サブキャラ(特にキーマンである父、誠一と母、珠美)の心情がより詳細に描かれており、映画の予習/復習に非常に最適なノベライズ作品。この作者は、ノベライズの力量があります!おすすめ!!

小説「それってキセキ」

2016年初頭にリリースされた、GReeeeNの自伝的小説。小説内の各キャラクターの名前は違うけど、出来事や人間関係などは、ほぼノンフィクションのドキュメンタリーに近い作品。「navi」「92」「ソウ」などJIN/HIDE兄弟以外の各メンバーにも綿密な取材で深く掘り下げている他、デビュー後の出来事(東日本大震災/2011年、4人の別離/2013年)も描かれています。デビュー後も、決して一直線ではなく沢山の課題や葛藤があって、それを乗り越えてのデビュー10周年だったのだな、ということがわかる1冊でした。買ってよかった。