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【ネタバレ有】「君の名は。」感想とあらすじ・伏線の徹底解説!/超ロングランの大ヒットアニメ映画!

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【2017年3月9日最終更新】
※あらすじ紹介以降、かなりのネタばれを含みます。ご注意を!

かるび(@karub_imalive)です。

新海誠監督の最新アニメ映画「君の名は。」は、素晴らしい映画でした!

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何度リピートしても楽しい、よく考えられた脚本や伏線、ストーリー、設定などに加え、「新海マジック」と言われる作画へのこだわりや、練り上げられた映像美も非常に良かったです!

本エントリでは、映画のあらすじや感想、伏線などを書いていますが、かなりの部分でネタバレを含みます。あらかじめご了承下さい。

1.映画「君の名は。」基本情報

<オフィシャル予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【公開日】2016年8月26日(金)
【監督】新海誠
【作画監督】安藤雅司
【キャラクターデザイン】田中将賀
【音楽・サントラ】RADWIMPS

足掛け3年の月日をかけて制作された、新海誠監督の勝負作品となった本作は、作画・ストーリー・舞台設定・演出全てにおいてハイレベルで密度の濃い大作映画となりました。新海誠本人が手がけた原作小説、コミカライズの他、2016年10月から、小海町、飛騨、東京と「君の名は。」展の巡回も始まっています。

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「君の名は。」展に行ってきた感想!

2.興行収入&動員数やこれまでの評価など

興行収入、動員数のまとめ

観客動員数も絶好調。2017年3月1日時点で、速報値ながら、興収は240億円を突破。ちなみに、アニメ映画の興収歴代ベスト5はこんな感じです。

★アニメ映画興収ベスト5
1位「千と千尋の神隠し」(308億円)
2位「君の名は。」(240億円)※2017年3月現在
3位「ハウルの動く城」(196億円)
4位「もののけ姫」(193億円)
5位「崖の上のポニョ」(155億円)

他国での配給決定も続々決定。賞レースへのノミネートも!

興収1.5億円だった前作「言の葉の庭」から100倍以上の巨大な成果を得ることになった本作ですが、その評判は他国にも伝わっています。

2016年11月には、「ロサンゼルス批評家協会賞」をアニメ部門で受賞。さらに、2017年3月には日本アカデミー賞「脚本賞」他、3部門で受賞。アジア各国、ヨーロッパに加え、アメリカ・カナダなど北米でも公開が決まっており、世界規模で好評を得ています。

宮崎アニメのエッセンスを取り込んだのもヒットの要因か?

宮﨑駿監督が一旦アニメ制作から引退した空白期間、潜在的に興収100億円超を稼ぎ出せる市場がぽっかりと開いている状況でした。ジブリ直系の米林宏昌や、細田守、神山健治ら次世代のアニメ映画監督がポスト宮崎駿の座を伺う中、その市場スペースを埋めたのが今回の「君の名は。」だったとも解釈できます。

実際、新海監督はここ数年、ジブリの王道アニメのエッセンスを自分のモノにするためのステップをしっかり踏んできています。前前作「星を追う子ども」は、メジャー化を目指し、宮崎アニメの表現方法を作品中において意欲的に試した実験作でした。そして、今作で作画監督を務める安藤雅司氏は元ジブリ出身であり、キャラクターデザインを担当した田中将賀氏は、大ヒットした青春アニメ「心が叫びたがってるんだ」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」で実績を積んだ業界のエース格。確実にジブリ映画などの大作アニメのエッセンスと、自身の作風の融合を図ろうとしていたのです。実際、普段アニメを見ないライトな映画ファンの中には、今回の「君の名は。」を宮崎アニメの新作だと思っている人も多数いたようです。 

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3.「君の名は。」結末までのあらすじ(※ネタバレ注)

父親と東京の都心に住む男子高校生・立花瀧(たちばなたき)と、岐阜県の山奥の糸守町(いともりちょう)に住む女子高生・宮水三葉(みやみずみつは)。朝起きると、ひょんなことから二人の意識が入れ替わり、ドタバタ生活が唐突に始まるところからストーリーが始まります。

意識の入れ替わりがなぜ起こるのかは不明。二人は、当初、単純にリアルな夢を見ているのだと思っていました。しかし、朝起きると、週に2~3回ランダムに二人の体が入れ替わっているので、これは夢の出来事ではなく、これが現実世界の出来事であると認識し、互いの実在を確信するようになっていきます。

入れ替わった先では、当然お互いの生活のディテールが良くわからないし、入れ替わりは突然起こります。対策として、入れ替わった日の一日の終わりに、お互いのスマホにメッセージを残し合うという風変わりな形で、二人は交流を始めました。

戸惑いつつも、二人はやがてお互いの入れ替わった先の生活に次第に慣れて、楽しめるようになっていきます。三葉はあこがれだった都会生活を満喫し、瀧のアルバイト先のマドンナ的存在、大学生の奥寺先輩と交流を深めます。一方で、瀧は田舎の学校生活で一目置かれる存在になり、男子・女子限らずモテまくる毎日に。

ところで、三葉の家系は、祖母、一葉の代から糸守町の氏神様、宮水神社の神主を務めてきました。三葉とその妹、四葉は、ともに巫女としての家業を務める毎日です。

糸守選年の歴史が刻まれている組紐(くみひも)作りや、神楽を舞い、ご神体に奉納する口噛み酒を仕立てる神事などもこなします。

口噛み酒作りは神聖な儀式ですが、衆人環視の前で米を噛んで自分自身の唾液と混ぜて、升の中にゆっくり吐き出して作る工程は、やはり見られると恥ずかしいもの。三葉の密かな悩み事でもあるのでした。

ある朝、三葉と入れ替わっていた瀧は、一葉、四葉と山の上にある宮水神社のご神体へ、神事で三葉が作った口噛み酒を奉納しに行くことに。その際に、地域の伝承を一葉から聞くことになります。「口噛み酒はあんたらの半分なのだよ」と一葉に言われるもその時は意味もわからず、糸守町の方言で、「黄昏時(たそがれどき)」を表す夕暮れの「カタワレ時」を迎えるのでした。 

そんな二人が入れ替わり生活に馴染んできたところで、ある日、瀧は、あこがれの奥寺先輩とデートにでかけることになります。入れ替わっていた三葉が設定してくれていたのです。デートの日、瀧は本来の瀧として奥寺先輩と会うことになりますが、三葉はなぜか胸騒ぎがして、涙が流れてしまいます。(この時点でもう瀧のことが好きになっていた暗示)

三葉は、結果が気になって実際に瀧に会いに行こうと東京に出掛けますが、デート当日、瀧への携帯はつながらず、二人のデートシーンには会えませんでした。

三葉が代わりに会えたのは、中学生だった瀧でした。

なんと、二人の間には3年の時差があったのです。2016年に生きる瀧と、2013年に生きる三葉。二人は、時空を超えて入れ替わっていたのでした。

三葉の世界線である2013年は、瀧はまだ中学生。奥寺先輩とは面識がなければ、三葉にも会ったことすらないわけです。

偶然、中学生の瀧を満員電車の中見つけてしまった三葉は、瀧の無反応にいぶかしくも思いますが、なんとか別れ際に一声かけ、自分の髪をゆわえていた組紐を瀧に渡して岐阜に帰り、失意のうちに髪を切ってしまうのでした。(小説版では、失恋に似た感情を覚えたためと描かれている)

一方で、2016年の瀧は瀧で、何故か奥寺先輩とのデートだというのに、三葉のことが気になってデートに集中できません。デートで立ち寄った六本木の国立新美術館の展示で、偶然糸守町の写真展示を見つけてしまい、奥寺先輩をそっちのけで食い入るように見つめる瀧。奥寺先輩には上の空であることを見透かされ、「今は別の好きな人ができたんでしょ」と言われてしまう始末です。

そして、それ以降なぜか二人の入れ替わりは、二度と起きませんでした。

入れ替わりが途切れてしまった瀧は、三葉のことが気になって仕方ありません。そして、自ら描いたスケッチを片手にとうとう現地入りし、糸守町の場所をつきとめます。

しかし、行ってみたら糸守町は3年前、2013年の彗星落下災害で消滅してしまっており、図書館で見つけた犠牲者名簿に三葉の名前を見つけてしまいます。瀧は、ようやくここで全体像を理解します。三葉は亡くなってしまったので、入れ替わりがストップしていたこと、実は入れ替わりは3年の時差があったことを悟ったのでした。

その時、瀧は三葉となってご神体に奉納した口噛み酒を思い出し、これを飲めばもう一度入れ替わりがおきるのではないかと思い、衝動的にご神体のある山上へ向かいます。ご神体の中には、三葉が作った3年前の口噛み酒がありました。瀧が、ためらわず口にすると、瀧の推測通り、3年前、つまり2013年の彗星落下直前の三葉に入れ替わりが起きます。三葉は、代わって山上の2016年の瀧へと入れ替わり、眼前の糸守町の消失を見て呆然とします。

2013年の三葉に入れ替わった瀧は、糸守町で幼なじみのサヤちんとテッシーの力を借りて、彗星落下から村人を安全な場所に避難させる作戦を立てます。瀧は、何故かその時山上のご神体に三葉の気配を感じ、三葉を呼びます。

そして、神様が気まぐれを起こすという、カタワレ時(=夕暮れ時)がやってくると、互いの姿が目の前に顕れ、二人のこころとからだが元通りに戻り、二人は初めて対面を果たします。瀧は、3年前電車の中でもらった組紐を、三葉に渡して、彗星の災害から糸守町を守る作戦を引き継ぎます。

しかし、カタワレ時が終わると、二人はまたお互いが見えなくなってしまい、お互いの名前すらなぜか忘れてしまいます。それでも、三葉は糸守町を守る作戦を成功させ、彗星は落ちて町は消滅したものの、大半の町民は無事に生き延びたのでした。そして、三葉や町民たちは、東京でそれぞれの新たな生活をはじめました。(つまり歴史が書き換わり、三葉は死ななかった)

それから数年が経ち、大学生になった瀧は就職活動を経て、社会人になります。記憶が風化する中、「ずっと何かを、誰かを探しているような気がする」と漠然と心に引っかかりながら毎日を過ごす瀧。そこで、とうとう偶然に東京で瀧と三葉が出会います。お互いの名前は思い出せないけれど、大切な人。そして、二人は同時に、四谷の須賀神社の階段上で、「きみの、名前は・・・?」と問いかけをするシーンで、ハッピーエンドとなりました。

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4.伏線や設定の解説!(※ネタバレ注)

ムダのない設定と見事な伏線回収

伏線の設定と回収は見事でした。物語序盤で紹介される、夜と夕方の境目であるたそがれどきを表す糸守町の方言「カタワレ時」、宮水神社で巫女の手によって作られる「組紐」(くみひも)、祭祀の際に巫女の唾液を介して造られる世界最古の酒「口噛み酒」(奉納される際に組紐で封印される)これらが物語中で有機的に絡み合い、時を超えて二人が結ばれる媒介物となっていきます。

カタワレ時f:id:hisatsugu79:20160826223824j:plain

物語クライマックスで、瀧が三葉の「口噛み酒」を飲み、再び入れ替わりが起きると、時空の境目を象徴する「カタワレ時」にとうとう二人は正位置で再会します。その、僅かな時間の間に、2013年の満員電車内の出会いで、三葉から瀧に手渡された「組紐」が、再び三葉に戻ります。

そして、それを媒介していたのが、「組紐」同様、二人の絆を暗示する「彗星」で、組紐と相似形なのであります。

また、舞台の「糸守町」という、組紐を連想させる名称や、主人公の「瀧」(さんずいに竜)という彗星を暗示させるような名前もすごく良かった。

ちなみに、「糸守町」は岐阜県の飛騨高山地方をモデルにした、架空の地名です。飛騨高山から、さらに奥地に入った山間の小さな町、という設定です。(聖地巡礼はできませんのでご注意!)

なぜ瀧と三葉の入れ替わりは起こったのか

先に見てきたとおり、男女の運命的な出会い”ムスビ”の象徴である組紐。入れ替わり能力のある(=夢を見る能力)シャーマン的な特殊能力を先祖代々受け継ぐ宮水家の巫女として、三葉は夜になると日頃から神社の内職として組紐を作っていたシーンが描かれていますね。

組紐とは(『伝統工芸って何?』より引用)
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見て分かる通り、組紐は、たくさんの糸をより合わせて作る古来からの伝統工芸品です。映画内では瀧と三葉の「ムスビ」を強く暗示させるアイテムとなっているのですよね。

そして、三葉自身の手によって紡がれる組紐の中でも、特にお気に入りのものは、三葉自身が髪に結わえていたのでした。実は、2013年時点で三葉はこの組紐を満員電車での別れ際に中学生の瀧に手渡しているのです。

タイムパラドックス的な状況ではありますが、この2013年の最初の出会いの時点で三葉と瀧は「組紐」を通してムスビの関係となり、三葉の入れ替わりの相手が瀧に確定したのだと解釈できます。そして、2016年、その入れ替わりが発動するとともにストーリーが動き出したのでした。

「糸守町」が岐阜の飛騨地方の山奥の街に設定された理由

三葉の住む糸守町は、岐阜の飛騨地方の山間部の架空の町という設定です。新海監督は、記者会見にて

「神秘的な雰囲気と、知られざる歴史を積み重ねてきたような場所というイメージで選んだ。あとはストーリー上、東京から、遠すぎず、近すぎずという距離感」

と飛騨を舞台に選んだ理由を明かしています。

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劇中で、三葉がいてもたってもいられなくて、奥寺先輩と瀧が東京でデートするところに会いに行こうとするシーンがあります。これ、本当に行けるのかと、「ジョルダン」で確認してみました。確かに、飛騨高山からなら何とか半日あれば東京まで会いに行けますね。

セカイ系的なストーリー展開

新海監督といえば、過去作品「ほしのこえ」に代表されるように、世界で起こる出来事の全てが恋人たち二人だけの関係に収斂していくセカイ系的なストーリー展開がお家芸です。今作も、もちろん前作同様に、設定や伏線のすべてが、物語終盤の二人の再会という一点へと収束していく流れは、セカイ系的な要素を確実に含んでいる映画と言えると思います。1200年に一度、周期的に大災厄をもたらす「彗星」までもが、時空を超えて二人をつなげ、結びつける強い「組紐」として描き出されました。

3年ずれた異世界同士での意識の入れ替えに伴う設定には、細かい破綻や描写不足もあらを探せば沢山見つかるのですが、強い感情を伴うセカイ系的ハッピーエンドの前には、(まぁ細かいところは・・・いいか。感動したし!)という気にさせられるわけです(笑)

5.「君の名は。」の魅力とみどころ

「空」を中心に緻密に描かれた美しい風景

新海誠監督の映画の最大の特徴は、星の見える「空」の風景を中心として、美しく緻密に描かれた作画です。苦手(であろう)キャラクター等のデザインは田中将賀氏に任せ、自身は美術監督として、強いこだわりを持って写実的に背景を描き込みました。

特に、注目したいのは「空」の表現。全体的に乳白色のフィルターが掛かったような幻想的な「新海マジック」と表現される独特の画風と、光線の美しさは、ラッセンやフェルメールを彷彿とさせます。

また、シーンの要所要所で挟まれ、状況に応じて様々に表情を変える「空」だけの風景に各シーンでの主人公たちの心象風景を暗喩的に語らせる手法は、新海監督の18番とも言える表現手法です。是非、2度目以降リピートする時は、背景、特に表情豊かな空の風景を楽しんでみてください。

試しに、公開動画から何枚か見てみます。

神社のシーン(空の多彩な表情に注目)f:id:hisatsugu79:20160826223221j:plain

糸守のご神体。空からのカメラ位置、背景には雲海f:id:hisatsugu79:20160826224007j:plain

電車のシーンf:id:hisatsugu79:20160921161230j:plain

新海監督の映画では、毎作必ずここぞ!という大切な場面で「電車」のシーンが多用されます。電車の中のシーンや、プラットフォームでのシーン、踏切のシーンなど幾つかタイプはありますが、作品における「電車」が暗示するものは、二人の別れやすれちがい、孤独感(たいてい立って窓の外の風景を見つめている)です。

今作も、いちばん大切な「組紐」を三葉が中学生の瀧に手渡すシーンは、満員電車の中、「二人の別れ」あるいは「絆のきっかけ」として描かれました。

思春期の繊細で一途な心情描写

今作は、新海誠作品のお家芸である「SF的な舞台背景」で若い男女が出会って恋に落ち、「遠距離」でのすれ違いや葛藤を乗り越え、再び出会う所までを描く王道的ストーリーです。純粋でちょっと奥手なところもある二人が、物語が動き出す中盤以降に心の赴くまま相手のことを思い、一途に行動する若さや青春っぽさも見どころです。

「入れ替わり」の設定に甘えず、ストーリーとしての面白さを追求

男女、親子体が入れ替わる「とりかえばや」的ストーリーは、昔から「らんま1/2」や、東野圭吾「秘密」、最近だと押見修造の「ぼくは麻理のなか」など多いですよね。

今作は男女の体の取り替えっこによってもたらされる男女の「性差」から起きる設定に甘えたドタバタ劇に単純に終始することなく、入れ替わりでの葛藤や、お互いのコミュニケーションを通した心情の変化や、紡がれるストーリーそのものに主眼が置かれています。

そして、3年の時差をおいた入れ替わりのトリック。タイムトラベルSF的な要素が、ストーリーの面白さを倍加させていました。

東日本大震災へのオマージュ。被災者にも勇気を与える映画

また、新海監督は明言していませんが、この1000年に一度の彗星がもたらす周期的で不可抗力な天災の描かれ方は、我々日本人に東日本大震災を強く想起させます。

物語序盤で紹介された糸守町で起こった「繭五郎の大火」により、古文書が失われたエピソードは、長期間の間に風化する被災や災害の記憶を伝え続けることの難しさを象徴していました。1200年前に落ちた彗星によって地形が大きく変わり、湖が出来るほど甚大な大災厄の歴史も、年月を重ねる中、長年の間に風化していきます。「つなみてんでんこ」という、100年以上前に起きた津波被害の言い伝えや教訓が忘れ去られ、甚大な津波被害を出してしまった東日本大震災の前夜のような状況でした。

ただ、彗星落下後に壊滅した糸守町を出たてっしーやさやちんら、三葉の仲間がきちんと避難先の東京で新生活を始めるシーンなど、再生に向けて立ち上がる人間のある種のしぶとさ、力強さがきちんと表現されていたのは良かったです。

6.過去作品よりわかりやすい形でのハッピーエンド

公式ビジュアルガイドに掲載された新海監督のインタビューに、こんなメッセージがあります。ちょっと長いですが、引用します。

今回、奥寺先輩が瀧に”君もいつかちゃんと、幸せになりなさい”というセリフがあって、ちょっと謎めいた言葉にも聞こえるかもしれないけれど、あれはお客さんに対する僕の気持ちでもあるんですよ。[・・・]誰かの幸せを願うような作品にできたらいいなと。[・・・]日常がいつかなくなってしまうかもしれない感覚って、みんな日に日に強く抱えるようになっていると思うんですよ。でも、あと少しだけでいいからこの状態を続けていたい。好きな人と一緒にいたい。幸せって、そういう切実な想いの中で初めて見いだせるものだとも思うんです。 

新海監督の映画では、幸せへの渇望や喪失感を心の中に秘めた主人公が頻繁に描かれます。過去作「言の葉の庭」「秒速5センチメートル」では、出会ったふたりは最後まで結ばれることなく、切なくエンディングを迎えました。

しかし、今作は、二人は数年の時を経て、何度もすれ違って観客をハラハラさせつつも、ようやく最後にお互いへとたどり着きました。新海作品史上、一番わかりやすい形でのハッキリしたハッピーエンドは、新海監督の思いを届けるために必要な結末だったのかもしれません。

7.まとめ

今作は、新海監督作品の「難解さ」を薄め、わかりやすさを全面に出した監督にとってのメジャーデビュー勝負作でした。観客にどう「伝わるか」を真剣に考え、「エンターテイメント性を重視した」という監督のインタビューでの言葉通り、脚本制作だけで6ヶ月もかけた、練りに練ったストーリー。わかりやすいハッピーエンドでの結末、王道のラブストーリー的展開が、往年の宮﨑アニメのように広くファンの心を掴んだといえると思います。

新海監督が「107分間、1分も退屈させないように作り込んだ映画」と言う通り、コンパクトで完成度の高い作品でした。文句なくおすすめです!

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年3月現在上映中映画の感想記事一覧

8.新海誠の過去作品が一気に見れるオンライン動画サービス

映画「君の名は」のヒットを受け、VOD(ビデオ・オン・デマンド)配信各社とも、新海誠監督の過去作品を配信を強化しています。コスパが一番いいおすすめサービスは、Huluです。「秒速5センチメートル」「ほしのこえ」「言の葉の庭」「雲の向こう、約束の場所」など、新海誠の過去作品が、加入後見放題となるからです。Hulu加入後最初の2週間は無料なので、是非見てほしいです!

過去作品を見ると、「君の名は」が、新海監督の映画キャリアの集大成であり、総集編でもある、というのがよくわかりますよ!

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おまけ:2周目を楽しむための小説・外伝・公式ガイド・設定資料集など

約120万部を売り上げ、オリコン2016年度文庫本ランキングでNo.1となった原作小説。映画の世界観そのままを文章に詰め込んだ感じ。映画と小説を両方味わうことで、より深く作品を楽しめますし、複雑な伏線をスムーズに理解するための予習復習にも非常に有用です。監督の書き下ろす小説はこれで3作目ですが、着実に小説の腕も上げている印象。

今作の脚本協力として活躍した加納新太氏による外伝です。こちらも約30万部を売り上げる大ヒット。本編に収録しきれなかった伏線部分やサイドストーリーを、主人公以外の視点(四葉、トシキ、テッシーなど)で描き出しています。本編では単なる悪役にしか見えない父親トシキの秘めたる苦悩、糸守町の秘密や伝承など、本編を深く理解し、楽しむために非常に役に立つ骨太な作品でした。2周目を楽しむため、もっともオススメしたい必読の書です!

封切と同時に発売されたコミカライズ版第1巻。1巻では、物語前半部分が原作に忠実に描かれますが、このあと映画本編とは異なる展開・結末となる予定とのこと。絵柄は映画とそれほど変わらず、違和感はありません。

映画カットを使ったストーリーガイドに、監督・声優・RADWIMPSへのインタビュー記事、設定資料集など、映画を細部まで味わうためのガイドブックです。新海監督がこの映画に込めた想い、制作での苦労、超美麗な作画がどのようにして作られたのか、丁寧にまとめられています。基本的にはネタバレなので、映画本編を見終わった後に楽しむと良いと思います。

デビュー作「ほしのこえ」から今作まで、CM作品を含めて新海誠監督の業績を完全網羅した充実のまとめムック本でした。作品紹介、神木隆之介と新海監督の対談、画集パートなど、ファン垂涎の一冊となりました。文句なくおすすめです。

4万字以上の新海誠監督への超ロングインタビュー他、制作スタッフへのインタビュー、文化人からの推薦コメントなど、新海誠監督の「人物」に焦点を当てて制作されたムック本。この内容ボリュームで1,000円以内に抑えられており、かなりお得な一冊です。

「君の名は。」のキャラクターデザインや色彩設計、風景の美しさの秘密などを制作スタッフのキーマンたちにロング・インタビューした丁寧な記事作り。ほぼ1冊全部「君の名は。」特集です。色彩設計の三木陽子氏の「『君の名は。』の色彩設計は彩度が高いポップなものに振っている。思春期の若い人たちに向けた作品だから。」は納得。Kindle Unlimited指定書籍なので、読み放題の人は是非。

やりすぎなほど非常にディープな分析はさすが硬派な文芸誌。明らかにIQの高そうな読み手に響きそうな、長文での、こじらせてるんじゃないかと思えるほどの深読み映画評がズラッと並ぶ圧巻の内容でした。色々関連書籍を読んできて、最後にこれを読むのが正解かも(笑)。「君の名は。」を極め尽くしたい人にオススメです!