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あいむあらいぶ

都心のウサギ小屋に住む、自主休暇中の専業主夫が、休暇中に色々見聞きしたことを綴っていくブログです。美術展関係が多め。

「俺たちの国芳 わたしの国貞展」の感想→浮世絵って面白い!

美術・芸術
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かるび(@karub_imalive)です。

先週3月19日から渋谷Bunkamuraにて始まった、幕末浮世絵師の巨匠、歌川国芳と歌川国貞をフィーチャーした浮世絵展「俺たちの国芳 わたしの国貞展」に行ってきました。

じつは、恥ずかしながら浮世絵を始めとする日本画の美術展はほとんど行ったことがないので、どんなもんなのかな、と思っていたのですが、これが予想以上に良かったのです。

僕は、浮世絵については、子供の頃からふとしたきっかけから、日常生活の中で親しんできました。母親が永谷園のお茶漬けが好きだったこともあり、そのお茶漬けのモトのおまけについていた「東西名画選カード」の中に、葛飾北斎や東洲斎写楽などの浮世絵が結構あったんですよね。

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(出典:http://w2222.nsk.ne.jp/~kita1ym/random2.html

とはいえ、僕の中の浮世絵のイメージといえば、かなり残念な感じ。ステレオタイプな風景画か美人画位のもので、まぁお茶漬けのカードに描いてあったとおりだろう、、、と思っていたのですが、今回の展示会では、いい意味で大きく期待を裏切られることになりました。いや、すごかったです。それでは順番に少し紹介してみたいと思います。

混雑状況について

検索で来てくれる人は、まずこの「混雑状況」がやっぱり気になるかと思いますので、先に書いておきますね。僕の行ったのは、初日3月19日の午前11時頃。雨の中行ってきました。

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入り口の写真などを見るとわかりますが、それほど人は入っていません。ただし、このBunkamuraの展示スペースは中が狭いので、少し人が入っただけですぐに息苦しくなります。

入場者数はそれほど多くなかったですが、1点1点の絵の周りにはがっつり人がいて、やや混雑しているように感じました。特に、西洋絵画と違い、浮世絵1点1点は非常に小さいので、人だかりができたらもう見ることができません。良い絵の周りには人が一杯で、ちょっとしんどかったです。がっつり行くなら午前中か平日推奨です!

初日朝にグッズが売り切れる怪(笑)

で、入り口にこんな注意書き看板があったのですが、特に歌川国芳がネコ好きだったエピソードから臨時発売されたフィギュアショップ「小夏屋」の「大王ネゴラ 歌川国芳ヴァージョンは売り切れました」と。

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いやいやおかしいでしょ。いかに雨降ってたとしても、カルトな人気があったとしてもそれはちょっと変だよな、と思って、帰ってからヤフオクを見たら案の定、出品されまくりで引いた。

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せどり屋さんも土曜日雨降りの中、朝から展示会には興味ないのにご苦労さんなことです。フィギュア買い占めるなら、お前らせめて展示会は見ていけよな!!最高だったから!!

音声ガイドは歌舞伎役者

音声ガイドは、中村七之助でした。

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出典:グッズ・音声ガイド|ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞|日本テレビ

中村勘三郎の息子ですね。やっぱり浮世絵の展示会だけに、歌舞伎や能などの伝統芸能の芸能人か、関連する文化人が起用されてるのかなと思ったら、思った通りでした。それほど手慣れた感じはしませんでしたが、一生懸命解説で声を張ってくれてました。

ところで、国芳と国貞って誰なの

この展示会で取り上げられている二人の浮世絵師は、歌川国芳、歌川国貞です。兄弟じゃないですよ、もちろん。歌舞伎や落語みたいな日本の伝統芸能でよくある、代々襲名されていく芸名であります。彼らはいわゆる同門の兄弟弟子であり、ライバルでした。共に師匠は初代歌川豊国。

主に、徳川家斉の治世下で花開いた「化政文化」から、水野忠邦による「天保の改革」を経て、幕末を迎え、幕府の威信が大きく揺らいでいく激動の時期に生きた絵師でした。

歌川国貞(1786-1864)は人気役者が演じる好漢達を描いた役者絵や伝統的な美人画で当時絶大な人気がありました。人気歌舞伎俳優の表情やしぐさの特徴を的確に捉え、当時の女性ファンの心を掴んだといいます。

『あつまのわか手五人男』

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(出典:http://data.ukiyo-e.org/mfa/images/sc172578.jpg

まだ写真がなかった頃だから、各歌舞伎興行に合わせて、5枚一組などでこうした一線級の浮世絵師の書く「ブロマイド」代わりの浮世絵が飛ぶように売れたそうですね。

一方の歌川国芳(1797-1861)は最後は大浮世絵師として歴史に名を残しましたが、当時ブレイクしたのは30歳を過ぎてから。江戸中に「水滸伝」ブームを巻き起こした豪傑の絵が大当たり。ここから、江戸時代のいわゆる「ヤンキー」を描いた「武者絵」という新ジャンルを確立して、人気浮世絵師になっていきます。

『通俗水滸伝豪傑百八之一人浪裡白跳張順』

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(出典:http://www.geocities.jp/shinzogeka/SuikodenKuniyoshi.htm#56

当時は二人はライバルであり、国貞が結局3代目「歌川豊国」として歌川派のトップに立つことになりますが、後世の評価は圧倒的に歌川国芳に軍配が上がるようです。

特に、歌川国芳は「武者絵」で新分野を切り開くと、圧倒的な世界観や大胆な構図の妖怪画、合戦モノなど従来の浮世絵の概念を大きく超える自由な作風で江戸中を熱狂させました。そして、天保の改革で歌舞伎興行が中止になり、浮世絵や黄色本(当時のエロ本みたいなもの)の出版物規制がかかる中、マンガ風の滑稽画、戯画など新ジャンルを次々と開拓し、浮世絵の多様性をさらに切り開いていきます。まさに浮世絵界の革命児的な存在でした。

今回の絵はほぼ全部ボストン美術館からやってきた

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今回の展示会の副タイトルは、「ボストン美術館展」なんです。1860年代にパリから火がついた「ジャポニズム」はアメリカにも飛び火していました。廃仏毀釈運動等、旧来の日本文化の保全には全く関心がなかった明治政府の無策もあり、当時、世界中の美術収集家が欲しいままに日本の美術品を買い漁っていきました。

その最大級の流出先がボストン美術館で、なんと日本美術品だけで10万点以上、日本の版画コレクションがその半数を占める52,360点あります。うち、国貞が10,304点、国芳が3,794点、主に閉架式で同美術館内にて収蔵されています。つーか流出しすぎやろ・・・。今回展示された珠玉の作品群も、ほとんど全部ボストンから来ていると思うとなんとなく情けない。。。

よくもまぁこんなに流出させたものだと展示物を見ながらやや憤りましたが、展示されていた絵はどれも非常に保存状態がよく、発色も豊かでした。いい美術館に拾われたようですね。

特に良かった絵画を少しご紹介

今回展示されている作品は、大判作品を中心に、全170点。どれも見応え抜群で、しっかり見たら2時間、3時間はかかりますが、中でも印象的だったものを幾つか紹介しておきますね。

『相馬の古内裏』

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山東京伝の読本『善知安方忠義伝』のワンシーンなのですが、この骸骨の半身像が凄いインパクト。骸骨の骨格がリアルで、解剖図とか参考にして描いたんでしょうが、ほんとに浮世絵かこれ?と思うほど大胆で自由な構図だと思います。

『讃岐院眷属をして為朝をすくう図』(歌川国芳)f:id:hisatsugu79:20160326063023j:plain
(出典:讃岐院眷属をして為朝をすくう図(1組) 文化遺産オンライン

3枚の浮世絵を横につなげた大判画。みてくださいこの大きな魚。圧倒的にマンガ的であり、見ているだけでワクワクしてきます。国芳が現代のクリエイターに大きな影響を与えているとされるのも理解できるような気がします。

『東都両国橋 川開繁栄図』

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最後はこの1枚。深川地区に住む自分としては外せません。200年前も今も変わらず隅田川は人々の憩いの場だったんだなぁとしみじみ見入ってしまいました。今も隅田川大花火大会は健在ですし、屋形船は年中運行してますから。

まとめ

これまでも数年に一度、歌川国芳については何度も大きな展示会がありましたが、今回も全170点、すごく楽しめる展示会に仕上がっています。浮世絵って、なんか変な顔の美人画とか銭湯の富士山みたいな絵のことなんでしょ?っていう先入観がある人こそ、是非足を運んで欲しい展示会です。きっと、これを見たら「あれ、結構日本画すごくない?」ってハマるきっかけになるかもしれませんね。

そういえば4月は東京都美術館で「生誕300年記念伊藤若冲展」が開催されますね。今年は日本画がブレイクするような気がします。これも行かないとな~。

それではまた。
かるび