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東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と人事労務系の記事が多め。

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【ネタバレ有】映画「忍びの国」感想・レビューとあらすじ徹底解説!/現代的な感覚でコミカルに描かれた痛快忍者映画!

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【2017年7月7日更新】

かるび(@karub_imalive)です。
7月1日に封切られた夏休みの邦画時代劇第1弾「忍びの国」を見てきました。「のぼうの城」「村上海賊の娘」など、今や時代劇小説でベストセラーを連発する売れっ子小説家、和田竜の原作を忠実に映像化した忍者映画です。

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.映画「忍びの国」の基本情報

<予告動画「忍びの国」>
※下記画像をクリックすると動画がスタートします

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】中村義洋
(「殿、利息でござる」「チームバチスタの栄光」他)
【配給】東宝
【時間】125分
【脚本】和田竜「忍びの国」
【原作】和田竜「忍びの国」 

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引用:http://www.toho.co.jp/movie/news/1706/03shinobinokuni_ib.html

幼少時代から、忍者小説が大好きだったという中村義洋監督。2008年5月に原作小説が出版された直後に読了し、すぐに映画化権取得に向けて動き、和田竜と意気投合したといいます。

前作「殿、利息でござる」で初の時代劇ものをリリースして撮影ノウハウも蓄積する中で、足掛け約9年をかけての満を持しての映画完成となりました。

2.主要登場人物・キャスト・人物相関図

人物相関図

大作時代劇映画ですが、オリジナル脚本に比べて登場人物は絞り込まれ、スッキリした印象。大野・知念のジャニーズ勢が主役・敵役の主人公で、脇をベテランが固める構図です。原作で登場した「織田信長」は空欄になっている通り、映画では出番がカットされています。

人物相関図f:id:hisatsugu79:20170705082600j:plain
(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

主要キャスト紹介

無門(大野智)
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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
戦国時代を扱った時代劇で、ほとんど素のまんま、ものすごく現代的な言葉遣いで演じるミスマッチ感は、見ていて逆に新鮮でした。「役作りはしなくていいから、そのままやってほしい」という監督の要望だったようですが、曰く、「自分とかけ離れた役のほうが入りやすいので、逆に難しかった」とのこと。案外そんなものですよね。

お国(石原さとみ)
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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
田園風景のあばら家の中、一人お姫様のような着物を着て、炊事洗濯など家事をするシーンもゼロ。あえて生活感が全く伝わらない描写で、無門に負けず劣らず変なキャラクターでした。家の中がお化け屋敷みたいな漆黒の闇だったのは、ホラーものを多く手がけてきた中村監督のバックグラウンドを感じさせる演出でした。

下山平兵衛(鈴木亮平)
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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
映画「俺物語」での剛田猛男、ドラマ「銭形警部」など、暑苦しいキャラを憑依したかのように演じきるのが本当に上手な鈴木亮平。今作でも伊賀の下忍の中で、一人だけ「義」に篤い激情家を好演していました。

織田信雄(知念侑李)
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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
2017~2018年で、「未成年だけどコドモじゃない」「坂道のアポロン」など青春恋愛映画での待機作が控えますが、時代劇も「超高速!参勤交代」シリーズや、「NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE」など、それなりにキャリアを重ねてきています。事前に原作を読む限り、織田信雄役は、かなり難易度が高く荷が重そうだと思っていたのですが、演技の意外な上手さにびっくりしました。好演でした。

長野左京亮(マキタスポーツ)f:id:hisatsugu79:20170703164621j:plain
引用:映画パンフレットより
織田家の家臣団の中で、一番打算的で「忍び」側に近い性格の家臣。原作では割りとハッキリ「悪役」的な描かれ方をしましたが、映画ではややキャラの重要度を下げられていました。お笑い・バラエティ・ドラマ・映画と幅広く活躍中。

日置大膳(伊勢谷友介)
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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
前作「実写映画版 3月のライオン」で演じたダメ男から180度変わり、正統派の「ザ・戦国武将」的な役柄として、無門とは正反対のキャラとして大きくクローズアップされました。伊勢谷友介は、ヤクザ系か戦国武将系が一番しっくり合うような気がします。

百地三太夫(立川談春)
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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
チケットが取れない超売れっ子落語家でもありますが、一方でその「面倒な」性格から、弟子が全員辞めてしまうなど、演技だけでなく本業でも実はヒール的な存在。だからこそ今回の配役は絶妙!悪役が最高に板についていました。もうこの人はずっと悪役専業で出てほしいです(笑)

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3.映画「忍びの国」結末までの簡単なあらすじ

忍びの国の日常へ迫りくる織田軍

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
時は戦国時代末期。織田信長による全国統一が目前と迫る中、伊賀では、未だに無数の小領主が小競り合いを繰り返す日常だった。その日、伊賀国の下山砦では、伊賀の小領主(上忍)の一人である百地三太夫が数十名の下忍を従え、同じく小領主である下山甲斐の砦へと攻め入っていた。

攻め方は苦戦していたが、百地三太夫に焦る気配はない。絶対的な力量を持つ伊賀一の忍び、無門(むもん)がいるからだ。無門は敵方の砦内へ侵入し、数名の敵方の下忍を倒して内側から開門すると、百地の本陣へと帰ってきた。彼は滅多なことでは面倒な殺生はしないのだ。

百地三太夫がこの日ターゲットにしていたのは下山甲斐の次男、下山次郎兵衛だった。面倒がる無文を永楽銭「百文」で釣って、次郎兵衛の首を狙わせた百地三太夫。

再び無門は砦の中へと入っていき、下山次郎兵衛を一騎打ち(伊賀の忍び用語では「川」という)で見事にしとめた。それを見ていた兄、下山平兵衛は、無門を追ったが、その時、平楽寺の鐘の音が鳴った。十二評定家参集の合図である。

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

鐘の音を聞いた双方の下忍たちは、戦闘を停止して、ケロッとして敵味方関係なく皆平楽寺へと向かうのだった。実父、甲斐を含め、亡くなった次郎兵衛を悼む者は誰もいない。「伊賀の者はみな人ではない。狂っている」と平兵衛は愕然とするのだった。

一方、隣国の伊勢国では、北畠家を滅ぼした信長が養子として送り込んだ織田信雄が、北畠家古参の家臣である、日置大膳、長野左京亮を従えて、北畠家の当主、北畠具教を殺害するクーデターを起こし、北畠家を乗っ取った。

伊賀の評定衆による壮大な計略

今回、伊賀で十二家評定が開催されたのは、隣国伊勢の状況について協議するためだ。北畠家を滅ぼし、伊勢を手中に収めた織田軍が今、伊賀に全力で攻められては困る。彼らは、織田家に臣従する道を選び、下山平兵衛を織田信雄への使者として送り出した。

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

無門には、お国という妻がいた。数年前、安芸の国で武家の家に忍びに入った時、一目惚れして、連れ帰っていたのだ。伊賀一の忍びであった無門だったが、お国には顔が上がらない恐妻家だった。稼ぎが少ないと、家にも入れてくれない。お国の前では、シュンとする無門だった。

一方、織田方へ使者として送り出された平兵衛は、伊賀の人間に心底嫌気がさしていた。平兵衛は、伊勢へ着くなり従者を始末し、織田方へと寝返った。伊賀の計略ではないかと疑った織田信雄は、平兵衛を尋問した。平兵衛は伊賀国攻略の第一歩として、伊賀国内へ築城するよう進言した。

平兵衛の寝返りはすぐに十二家評定衆の知る所になった。しかし、織田の使者との会見で、所領安堵を保証された上、金貨の入った箱を積まれ、彼らはあっさり伊賀国内の中心に「丸山城」の築城を許可するのだった。

築城が始まると、異例の高賃金(150文/1日)と下忍達の驚異的な体力・技術jにより工事はあっという間に進捗した。無門もまた、金のために喜んで参加していた。

築城がほぼ終わるある日、お国が現場まで珍しく無門を出迎えに来た。家への帰り道、小さな子供たちが残酷な忍びの訓練を受けるシーンを見て、お国はショックを受けた。お国の見ている前で、矢を避けきれず足を負傷した子供の忍びがいた。名を聞くと、「ねずみ」という。無門の説明によると、孤児として幼少時に他国から買われてきたのだという。お国は、不憫に思って懸命に手当した。

子供に対しても容赦なく毒矢を放ち、訓練中に死ぬ子供も珍しくない現実。無門もまた、そんな環境で育った孤児だった。お国は、無門に「侍におなりなさい」と諭したが、無門にはそんな野心は持ち合わせていなかった。

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

築城が終わると、完成した丸山城は百地三太夫から織田方へと受け渡された。織田方はすぐに城門を閉め、警戒に当たったが、百地三太夫は、かねてから十二家評定衆と図った通り、「では、焼くか」と言い放ち、城を焼き討ちにして織田軍を城から追い出してしまった。そして、下忍たちに織田軍の侵攻に備えよ!とゲキを飛ばすのだった。

それを聞いた無門は、お国に京に逃げようと提案したが、お国は他国に逃げるのは嫌だ!と拒否した。

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

無門は、その夜、織田信雄の寝床へと忍び込み、信雄を脅すとともに、地下牢にとらわれている下山平兵衛と、亡き北畠具教の娘、勢姫と出会った。無門を仏の遣わした救世主と思い込んだ勢姫は、無門に名器「小茄子」(茶入れ)を託し、引き換えに信雄を討ってほしいと懇願し、地下牢で果てた。無門にはその行動すべてが理解できなかった。

無門は、その茶器を持ち帰り、お国に、茶器を京で売り払い、手に入れた1万貫文を元手に結婚しようと話した。お国と無門は、京へと脱出することにした。

一方、寝所を急襲された織田信雄の元には、家臣団一同が集まってきた。信雄は、伊賀攻めを再度強く主張したが、日置大膳以下、臣下たちは一様に消極的だった。信長より「勝手に伊賀に攻めてはならない」と厳命されていたこと、一連の流れ自体が、伊賀者による計略であると警戒したこともあったが、何よりも信雄を信用していなかった。

いよいよ始まった忍びVS織田軍の戦い

思うように命令を聞かない臣下達に対して、初めてプライドを捨てて臣下達に苦しい胸中をさらし、これまでの自らの行動に対する謝罪をした信雄。そんな信雄の姿勢に心打たれた家臣団は、日置大膳以下、一致団結して信雄を盛り立て伊賀攻めを決意した。

伊賀の十二家評定衆にとって、このシナリオ自体は想定通りだった。しかし、誤算が3つあった。1つは、離反したと思われた名将・日置大膳が戦に参加してきたこと。次に、領土を守るための戦いに下忍達を繋ぎ止める給金の原資がないこと。そして、下忍たちのゲリラ戦の戦い方を熟知した下山平兵衛も織田軍に帯同していたことだ。 

織田軍は、伊賀国境の3つの峠から攻めてきた。十二評定衆はそれぞれの峠の守りを固めたが、半分以上の下忍は戦場を離脱して逃げ出してしまっていた。戦う前から不利な状況で、序盤は織田軍優勢に戦いが進んだ。

しかし、無門の扇動によって、大きく戦局が変わった。京への道中、「やっぱり逃げるのは嫌です」と伊賀にとどまったお国のために戦うことを決めた無門が、勢姫からもらった「小茄子」を原資に、下忍達を戦場へと戻したからだ。「信雄の首を取った者に5000貫文だ!」と、下忍達を金で煽ると、一端は戦場を離脱した下忍達は信雄めがけて殺到した。

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

信雄は追い詰められ、単騎で戦場を離脱した。そこへ無門がやってきて討ち取ろうとしたが、間一髪で追いついてきた日置大膳に阻止された。日置大膳と一騎打ちになった時、信雄の放った矢が無門を貫いた。無門が草むらの茂みへと退却したすきに、日置大膳と信雄は戦場を脱出した。

こうして、織田信雄と伊賀の忍びの初戦の戦いは、伊賀方の大勝利となった。平楽寺に集まり、戦勝を祝っていた十二評定衆だったが、お国は無門の死を伝え聞いて、目をかけていた孤児の「ねずみ」と二人寂しく境内の外で沈んでいた。

しかし、無門は死んでいなかった。信雄の矢を寸前で交わしていたのだ。無門と仲間たちは、その夜、信雄が退却した伊勢の出城で、織田兵に化けて信雄を討とうと狙っていた。しかし無門が姿を表すと、信雄の側に控えていた下山平兵衛が無門を阻んだ。

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

彼ら二人は、信雄、日置大膳らが見守る中で、1対1の決闘を行った。力量はほぼ互角で、死闘が続いたが、少しずつ無門が優勢になり、最後は無門が平兵衛を討ち取った。必死に戦った平兵衛の最後を看取ると、無門の心には大きな変化が現れていた。織田方との一連の戦を通して、出会った勢姫、日置大膳、信雄、平兵衛。そして逃げるのを潔しとしなかったお国。金でドライに動く伊賀の忍びと違い、みな大義や信義といった別の何かを持っていた。そして、みな善人ばかりだった。

ラストシーン:お国の死と無門のその後

価値観が大きく揺らぎ、金で踊らされていた自らを恥じると、無門は信雄を殺さず、そのまま伊賀の平楽寺へと戻った。金に釣られた自分も馬鹿だったが、私欲のために無益な戦争を企んだ十二評定衆が許せなかった。

宴会が盛り上がる中、無門が十二評定衆の一人を殺すと、百地三太夫は、その場にいた下忍達に向かって、報奨金をはずんで無門を殺させようとした。しかし、無門をかばおうとしたお国が「無門殿に指一本でも触れたら、この『小茄子』を粉々にします」と下忍達を牽制した。

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

下忍達は「小茄子」を奪おうと、一斉にお国に向かって毒矢を放った。必死で庇った無門だったが、毒への耐性がないお国は、間もなく息を引き取った。無門は、小茄子をバラバラに砕くと、お国の遺体を抱え、どこかへと消えていった。

2年後。織田軍を撃退した伊賀の忍びの評判は、天下に鳴り響いていた。諸国から、下忍の派遣依頼が激増し、十二家評定衆はさらに懐が潤った。しかし、怒った信長は、信雄を総大将として、前回の4倍の兵力で伊賀を総攻撃した。伊賀の忍びは、ことごとく殺され、生き残った忍び達は全国へ散っていった。伊賀は徹底的に焼き払われ、忍びの国はここに滅亡した。

無門は、生前お国が目をかけていた孤児(通称「ねずみ」)を探し出すと、お国の忘れ形見として養子として育てるのだった。

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4.映画「忍びの国」の感想・評価

映画で提示された「新しい忍者像」に非常に衝撃を受けた

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妻に完全に尻に敷かれる無門
(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
まず、従来の忍者に対するイメージとは全く違った、新しい忍者像が端的に描かれたことに強い衝撃を受けました。計画性がなく、刹那的に「お金」で動く傭兵のような思考様式、人の死をなんとも思わない命の価値の軽さ、知性や教養とは無縁の流浪集団・・・

現代ではまず考えられないようなタイプの人種ですが、原作者の和田竜によると、調べれば調べるほど当時の伊賀の忍び達の行動・思考様式の特殊性が浮かび上がってきたそうです。原作小説・映画ともに、原作者の思い描いた新しい「忍者像」が反映されていて、非常に興味深く見れました。

感情移入しづらい展開の中、唯一の救いは無門の成長

ただ、エキセントリックな「忍者達」が好き勝手振る舞う様は、面白おかしく見ることはできたとしても、非常に「わかりづらかった」です。主役がどうにもならないゲスな集団だという・・・

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途中から主従一致団結した織田信雄の家臣たち
(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
その一方で、「敵方」の織田軍はには悪いヤツが一人もおらず、主君を中心に信頼で結ばれている。こっちは非常にわかりやすいんですよね。たとえば、劣等感とプレッシャーの中必死で生きてきた織田信雄が、プライドを捨てて家臣に心を開くと、それを意気に感じた日置大膳ら、信雄の家臣団達が一致団結するシーン。美しい主従愛や武士道精神は、非常に理解しやすいです。

なおかつ、プロットにひねりが利いているところは、金の力だけで動く「悪い」伊賀の忍び達が、善良な織田軍をなぜか駆逐し、ラストシーンでは無垢なヒロインまで毒殺してしまうという・・・。どう感情移入していいのかわからず、イライラします(笑)

ただし、そこで唯一の救いになったのが、無門の精神的な成長です。典型的な伊賀の忍びとして刹那的に金目当てで生きてきた無門が、最後に大きく変わります。

織田方との戦を通して、「金」以外の大切な何かのために死んでいく人々を何度も目の当たりにした無門は、ようやく最後に目が覚めるんですよね。「金」だけじゃなく、それ以外にもっと大切にしなきゃいけない何かがあると・・・。

無門が、お国の忘れ形見である孤児、”ねずみ”を引き取りに来たラストシーンは、お国が自らの死を賭けて伝えた「大切な人を思い行動する」無償の愛が無門にきちんと根付いていたのだな、と一安心しました。

役者の熱演も素晴らしかった

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期待通りの「ゲス」な悪役を熱演!(立川談春)
(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
プロットや設定が非常に難しい中、俳優たちの演技に対する熱量は総じて素晴らしかったです。主演の大野智は、まさに彼にしか出せない独特のけだるい雰囲気やコミカルな感じが最高でした。また、織田方の伊勢谷友介、鈴木亮平も熱くてよかったし、悩み深いお坊ちゃまを演じた知念侑李も予想外に上手くてびっくり。

そして、底抜けに「悪人」な立川談春。見る前から「こいつは悪いだろうな!」と思って期待していただけに、古狸のようなずる賢い悪さがゾクゾクしました!(こっちも素のままだったりして・・・)

わかりやすさを優先させた夏休み映画。その結果・・・

ただ、全般的に苦言を呈したいのは、わかりやすさ・親しみやすさを優先しすぎて、映画としての面白みや厚みを欠いたのではないかということ。

登場人物の名前は「よみがな」付きで大写しで全部テロップが出る親切設計でしたし、大切なことは語り部の山崎努が全部しゃべります。あるいは、登場人物が突然饒舌になり、全部セリフとして説明してくれちゃいます。そこは映像で上手く表現しろよ!という場面がいくつもありました。

まぁ、確かに夏休みだし、子供もいっぱい見に来るよね・・・と半分納得はしたのですが、やっぱり全体的に安っぽくなってしまい、映画的な重厚感や味わいは少し失われていたような気がします。

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独特のダンスをするような殺陣は見どころだが・・・
(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会
これにより、せっかく中村監督の持ち味が発揮されていた

・音楽やVFXを駆使したポップなアクション
・おバカな忍び達のコミカルなシーン
・無門や仲間たちの現代的な口調

これらの取り組みも、ストーリーが厚みを欠く中、むしろチープさを際立たせる悪い方に出てしまっていたかなと・・・。 

5.映画「忍びの国」に関する9つの疑問点~伏線・設定を徹底考察!~

疑問点1:「無門」、「お国」の名前の由来とは?

主人公「無門」には、幼少時に孤児として他国から買われてきたので、本名はありません。伊賀一の忍びとして成長した彼は、どんな堅牢な門や砦であっても、簡単に忍び込んでしまう技術を身につけました。彼の前には「門」はあってないようなものだ、という評判から、ついたあだ名が「無門」だったというわけです。

「お国」は、暴君として知られた江戸時代の福井藩主松平忠直が「一国にも代えがたい」と入れあげ、彼を狂わせた女性「一国」から着想して名付けられました。愛人だった一国が、他人の流す血を見て興奮する異常な性癖であったために、忠直はのべ1万人以上の領民を惨殺したという逸話が残っています。

そこから、彼女のわがままに振り回された無門が、お国のために伊賀の国を左右するような行動に走る、という意味で「お国」と名づけられたそうです。

ちなみに、お国は、西国の安芸の国(現在の広島県西部)で、2年前に無門が杉原将監という侍大将から盗み出したという設定になっています。

疑問点2:映画で描かれた「天正伊賀の乱」とは?

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第一次天正伊賀の乱(1579)
引用:http://www.ninja-museum.com/tensyoiganoran/tensyoiga01.html

映画で描かれた「忍びVS織田軍」の戦いは、史実上では「天正伊賀の乱」と呼ばれています。第一次と第二次の2回に分かれますが、映画では主に織田軍が忍者達に苦杯をなめた「第一次天正伊賀の乱」(1579)を描きました。

史実でも、伊賀国へ3つの峠から分かれて侵入しようとした織田軍8,000人に対して、映画で描かれた通り、数で劣る忍者たちは徹底したゲリラ戦や忍術で応戦し、見事に撃退した記録が残っています。

織田信長は、石山本願寺を鎮圧した後、満を持して2年後の1581年に、前回の6倍以上の50,000人で伊賀を総攻撃します。忍び達は平楽寺に立てこもって籠城しますが、圧倒的な兵力差の前に徹底的に攻撃され、壊滅的な敗北を喫しました。これが、「第二次天正伊賀の乱」と言われています。本編ではエピローグ部分で簡単に紹介されていました。

疑問点3:無門は実在する人物だったの?モデルは?

無門は原作者、和田竜による創作キャラです。オリジナル脚本と原作小説ができた時点では、特に歴史上のモデルを想定して作られたわけではありません。

ただし、その原作小説を読んだ中村義洋監督の頭には、「大野智しかありえないと思った」ということでしたので、映画化された時点で、大野智主役を想定した映像・ストーリー作りがなされたということですね。

また、映画では登場しませんが、オリジナル脚本・小説では江戸初期に活躍した石川五右衛門(文吾)が、無門達の活躍を脇で見守る若手忍者として登場してきます。

疑問点4:十二家評定衆とはどういった人々だったの?

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

この時期の伊賀では、有力な戦国大名が不在だったため、66人の有力な地侍たちの間で「伊賀惣国一揆」なる軍事同盟が結ばれ、他国が伊賀に侵攻してきた際は一致協力して撃退する取り決めになっていました。

この66人の地侍から選出された12人が「十二家評定衆」で、彼らは有事の際に会議所である平楽寺へ参集して合議し、意思決定を行っていたのです。

疑問点5:「小茄子」とは

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引用:数寄者之手鑑 唐物茶入 : 恵美里と美衣奈

無門が織田側の地下牢に忍び込んだ時、勢姫から織田信雄殺害の報酬として受け取った伝説の茶器「小茄子」ですが、そのモデルとなったアイテムは現存しています。

それは、藤田美術館が所蔵する「国司茄子」という茶器です。鋳造時期は不明ですが、恐らく中国の宋or明代に作られ、日本に輸入された「唐物茶入」です。代々北畠家が家宝として守り継いできました。北畠家滅亡後は、色々な人の手に渡った後、明治時代に譜代大名酒井家から、藤田氏が20万円(現在の数億円)で購入して、藤田美術館へと収蔵されました。

疑問点6:平楽寺ってどこにあるの?

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平楽寺跡に建てられた「伊賀上野城」
引用:Wikipedia

平楽寺は、第二次天正伊賀の乱にて織田軍に徹底的に焼き尽くされました。したがって今はもうありません。城塞のような天然の要害の地でもあったので、その跡地には伊賀上野城が建設されて、現在に至っています。

平楽寺は、平安時代末期に平清盛が修造した真言宗派の寺院でした。境内は広大で、寺領700石、寮36坊を含む、伊賀屈指の巨大な寺院だったようです。残っていないのが惜しいですね。

戦国期、普段は下忍たちの武芸の稽古場でもあったそうです。忍び達は、朝4時頃に起床し、午前中は農業、午後は平楽寺で忍術の稽古に励みました。

疑問点7:敵将、日置大膳や長野左京亮、はその後どうなったの?

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(C)2017 映画『忍びの国』製作委員会

日置大膳は、その後も織田信雄の腹心・主戦力となって活躍します。特に、信長の死後、家康・信雄連合軍VS秀吉で戦われた「小牧・長久手の戦い」では敵将を翻弄する大活躍をしたようで、その後家康から請われ、大膳は家康の臣下になりました。しかしその後急逝したようです。

対照的に、長野左京亮は本能寺の変の後、アッサリ信雄を見限り、秀吉の配下となります。その後、秀吉の配下、織田信包に仕えるようになった時、その家中の家所清次郎という者と不仲になり、喧嘩がエスカレートした際に斬られて死亡したようです。北畠→信雄→秀吉と不義を重ね、主君を変えながら最後は非業の死を遂げる・・・どこかの政治家のようですね。

疑問点8:織田信長はなぜ出てこなかったの?

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映画「本能寺ホテル」織田信長(堤真一)
(C)2017 フジテレビジョン 東宝 ホリプロ

原作では敗走した信雄を叱りつける場面や、最後に安土城の天守で忍び込んだ無門と対決するシーンなど、ストーリーの要所で信長が登場します。しかし、映画版では出番がカットされました。その理由として、中村監督はWeb版AERAのインタビューで、このように語っています。

今回キャスティングされた人たちが怯えるような俳優が、もういなかったんです。信長は魔王みたいに上にいなきゃいけない人ですから。でも、むしろ登場させない方が、登場人物たちの状況に迫れるんじゃないかと。「信長が……」と噂だけ出てくるのが、伊賀のリアルな世界観だったんじゃないかと思います。

えっ!そうだったの?結構原作読んだ時楽しみにしていたんですが(笑)意外と切実な理由でカットされたのですね。。。

疑問点9:オリジナル脚本版とは?また、原作小説版と映画の違いは?

本作の脚本は、原作小説ができる前に、先に原作者の和田竜が「忍びの国 オリジナル脚本」として完成させていました。オリジナル脚本をベースに、小説へと媒体を変えて発表されたのが2008年。「のぼうの城」と同じように、脚本→小説→映画という順番で出来ていったのですね。

映画版と原作小説(またはオリジナル脚本)では、ストーリーはほぼ同じですが、時間の都合上、登場人物や描写が大幅にカットされています。主な点を挙げると・・・

原作では織田信長が登場。息子、信雄を叱りつけたり、安土城で無門と言葉を交わすシーンが印象的でした。願わくば、ストーリーにスケール感を与えるため、映画でもなんとかカットせず出演させて欲しかった・・・。
・映画で出てくる忍びは、無門以外全員モブキャラだが、原作では「木猿」というベテランの老忍者や、「文吾」という後に江戸で活躍する石川五右衛門など、個性的な忍び仲間が登場する。
・大膳VS無門の対決は、映画では草むらの広場で行われたが、小説では平楽寺の境内で行われている。
・小説版では(実際の史実でも存在した)かつて伊賀国の小領主から織田側へ寝返った柘植三郎左衛門が信雄に帯同して伊賀攻めに参加し、命を落とす。
・映画では流れ矢が刺さってあっさり死ぬ百地三太夫は、小説版では百地砦での籠城戦で、長野左京亮に斬り殺される。

6.まとめ

本作で描かれた斬新な「忍者像」の持つ軽薄さは、ラストシーンで一瞬だけ映像で表現されたように、心をなくしがちな現代人にも通じるものがあり、身につまされる気持ちにもなりました。沢山の大切な人たちを失って、初めて自らに欠けている「心」を自覚した無門が、その後どんな人生を送ったのか、興味がつきないところです。

決して手放しで「素晴らしい!」と賞賛できる映画ではなかったですが、少なくとも色々新しいことに挑戦しようとした意気込みは良かったです。中村監督の時代劇の次回作に期待したいです。

それではまた。
かるび

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

本当に素晴らしい原作小説「忍びの国」

映画とほぼ同じストーリーですが、映画ではカットされた人物達が有機的に絡み合い、スケール感の大きな時代劇小説として仕上がっています。和田竜の小説は、歴史を丹念に調べあげた上で、その土台の上に現代的な感覚でストーリーを構築しているのが本当に素晴らしいです。司馬遼太郎を現代にバージョンアップさせたような手触りがある作家だと思います。映画を見終わってからもう一度原作を読むと、味わいが違いますよ!

おすすめのムック本「和田竜読本」

映画「忍びの国」を記念して出版された力の入ったムック本。和田竜の代表作「のぼうの城」「忍びの国」「村上海賊の娘」を徹底的に特集し、その歴史背景や舞台、ストーリーのポイントをまとめ上げています。中でも、今作「忍びの国」に関する解説は本当に役に立ちました。これはおすすめ!

「忍びの国」を記念した大野智大特集が凄い!

大野智がドラマや映画に出る時は、異様に売れる映画系雑誌。今回も、映画「忍びの国」関連で、各雑誌やムック本で「大野智」大特集が組まれていて、書店の芸能・映画コーナーは壮観でした!各雑誌の特集号を読み比べて見るのも楽しいですね。20誌以上あったのですが、一応気合で全部読んでみました(笑)

「大野智特集」おすすめ雑誌・ムック一覧

★★★特におすすめの雑誌★★★
anan 2017/07/05号【映画と本】特集
TV LIFE Premium vol.22 2017年 8/10 号
日本映画navi vol.70 ★表紙:大野智

★★特集がしっかりしていたもの★★

シネマスクエア vol.93
Cinema★Cinema 2017年 7/15号
J Movie Magazine Vol.24
AERA STYLE MAGAZINE Vol.35
FLIX(フリックス)2017年8月号
BARFOUT! 262 大野智特集号
キネマ旬報 2017年7月上旬号 No.1750
キネマ旬報NEXT vol.13 「忍びの国」
TVガイドAlpha EPISODE F

 

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