【2017年12月22日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。
12月9日に公開された山﨑貴監督の新作「DESTINY鎌倉ものがたり」を見てきました。毎年、お正月を賑わすCG/VFXの名手が放つ期待の新作は、「和」の香りがする、家族で楽しめるファンタジー映画に仕上がっていました。
早速ですが、感想・考察等を織り交ぜた映画レビューを書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。
- 1.映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」の予告動画・基本情報
- 2.映画「DESTINY鎌倉ものがたり」人物相関図・キャスト
- 3.途中までの簡単なあらすじ
- 4.映画「DESTINY鎌倉物語」のレビュー(感想・評価)
- 5.映画「DESTINY鎌倉ものがたり」に関する10の疑問点~伏線・設定を徹底考察!~
- 6.まとめ
- 7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
1.映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」の予告動画・基本情報
【監督】山崎貴(「海賊とよばれた男」「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズ)
【配給】東宝
【時間】129分
【原作】西岸良平「鎌倉ものがたり」
本作でメガホンを取ったのは、CG/VFXを活かした作品作りに定評のある山﨑貴監督。(その反面、CG以外の部分で酷評されることも多く、アンチも多いですが)「永遠の0」「STAND BY MYドラえもん」「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズなど、とにかく毎作品ごとのヒット率が非常に高い監督です。
本作はややつかみどころのない作風から、公開前はやや苦戦が予想されましたが、フタをあけてみれば前作「海賊とよばれた男」を上回るペースで動員数が推移。さすがヒットメーカーの面目躍如といったところでしょうか。
2.映画「DESTINY鎌倉ものがたり」人物相関図・キャスト
引用:「DESTINY鎌倉ものがたり公式ガイドブック」より
主要登場人物
一色正和(堺雅人)
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
本作は、山崎貴監督の肝いりで、企画段階から主役は堺雅人ありきで動いていたそうです。上映が始まってみれば、シリアス・コミカル両面で緩急のついた演技ができて、インテリジェントな雰囲気を醸し出しつつも、ある程度アクションがこなせる俳優として、ぴったりの適役でした。
一色亜紀子(高畑充希)
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
終始正和にベタベタで、一歩間違えれば単なるぶりっ子な嫌味キャラになってしまうリスクもあった亜紀子役ですが、持ち前の演技力でしっかりまとめ上げた実力はさすが。NHK連ドラ&大河俳優の組み合わせは、きっちり息が合っていました。
本田(堤真一)
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
「ALWAYS三丁目の夕日」「海賊とよばれた男」等で連続起用されるなど、山崎組の常連としてなくてはならない存在に。本作は途中から蛙男に変わってしまい、声だけの出演となりましたが、不思議と堤真一っぽさが感じられました。
死神(安藤サクラ)
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
江戸っ子な感じの茶目っ気たっぷりな死神を、見事に熱演。脇役陣の中では、ダントツで演技力・存在感が光りました。いつもながら振り幅の大きい自在な役作りは素晴らしいの一言。
貧乏神(田中泯)
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
2017年9月~12月にかけて、本業のダンサーとして現代アートの作品展に出展していたと思ったら、本作ではみすぼらしい貧乏神を演じるなど、活躍の幅が非常に大きい田中泯。中村玉緒同様、意外性あるキャスティングでした。
キン(中村玉緒)
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
78歳にして、本作がキャリア初の現代劇出演となった中村玉緒。本人は「これが遺産だ」と舞台挨拶で語っているようですが、これを機にもっと「おばあちゃん役」で出てほしいものです。
3.途中までの簡単なあらすじ
鎌倉に暮らすミステリー作家・一色正和は、妻・亜紀子と新婚生活をスタートさせていた。古書や人形、骨董品、甲滝五四朗の未発表原稿などが雑然と収められた納戸、推定130歳を超えるであろう一色家に仕える家政婦、家の回りをうろつく妖怪など、魔物の住む町・鎌倉での正和との生活は初めて尽くしの体験となった。また、鉄道模型マニアあること、執筆活動の傍ら、鎌倉署の顧問としても活躍していることなど、結婚して初めて正和の意外な面に接しては驚く亜紀子だった。
最初は魔物たちを怖がっていた亜紀子だったが、次第に持ち前の天真爛漫さで、「黄泉の国」へ向かう幻の駅を見たり、自宅へ押しかけた貧乏神と仲良くしたり、次第に鎌倉での生活に順応し始める。
しかし、亜紀子は、通称「夜市」で購入した「魔界まつたけ」で作った味噌汁をうっかり飲んでしまい、魂が抜けやすい状況になってしまうのだった。気をつけていた亜紀子だったが、正和のいきつけの小料理屋「静」に向かう途中、悪意ある魔物に体を奪われ、魂だけの存在となってしまった。
帰るべき体を失った亜紀子は、正和に迷惑をかけないため、死神とともに黄泉の国へと旅立っていった。失意の正和は、亜紀子を取り戻すため、甲滝五四朗の残した未完の原稿からヒントを得て、魔物に囚われた亜紀子を取り戻しに、黄泉の国へと旅立つことを決意するのだったー。
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4.映画「DESTINY鎌倉物語」のレビュー(感想・評価)
文句なく子供を連れていけるファミリー向け冬休み映画でした
俳優の演技・表情もオーバーでわかりやすい
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
本作は、12月9日と12月20日にそれぞれ都心のTOHO系シネコンで見てきました。驚いたのは平日・休日を問わず、老若男女幅広い層のお客さんが来ていたことです。老人の団体さんもいれば小学生のグループや親子連れ、若いカップルなどあらゆる層が見に来ていて、あぁ、これは正月を越えて1月末頃までのロングラン上映になるだろうなと直感。
しかしそれにしても印象的だったのは、冬休みの時期に、親と一緒に映画館に見に来るであろう「子供」への配慮です。徹底して抑制された映像表現は、良くも悪くも安心して見れる作りになっています。
たとえば、主人公の二人ですが、新婚夫婦なのに熱いラブシーンは一切ありません。子供が見ても気まずくないようにカスタマイズされているのです。二人の絆が試される危機や、それを乗り越えた後のクライマックスシーンですら、キス一つしないという健全さであります。高畑充希も、分厚いセーターなど着込んじゃって、肌の露出の一つもありません。あのほのぼのした原作ですら、新婚らしく一緒に風呂に入るシーンがあるというのに(笑)
悪役もあまり悪そうに見えない
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告2 - YouTube
また、各登場人物を見わたしても、ラスボスの天頭鬼を含め、本当に悪そうなキャラクターは一人もいません。基本的には、劇中の登場人物はいい人ばかり。登場人物一人一人は、一様にみな相手のことを思いやって行動します。その行動の連鎖の結果として、物語が清く美しく紡がれていくのです。また、彼らの言動にもわかりにくいところは一つもなく、極めて日本人の一般的な価値観・情緒に従って、わかりやすく話が進んでいくのでした。
そういう意味で、物凄く大きな意外性はないものの、冬休みに家族を安心して連れていける和製ファンタジー邦画大作としては、手堅く制作された作品でした。僕もこれなら子供を安心して連れていけます(笑)
サプライズ感はないけど、いい感じにまとまった和風ファンタジー
日本人ならではの感性で描かれた映像世界
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
内容も、山﨑監督が「日本人が最大公約数的に持っている感性」を意識して世界観を作り込んだ、と言っている通り、良い意味でも悪い意味でも神道・仏教・民間伝承などが色々ミックスされた「古き良き日本昔話」にありそうなファンタジー世界が描かれました。
実際、物語のコアを形づくっている重要な設定を一つずつ分解していくと・・・
・黄泉の国・・・日本神話
・輪廻転生・・・仏教
・三途の川・・・仏教
・死神・・・・・日本神話
・魔物・・・・・民間伝承
といったように、日本人が伝統的に持っている神仏習合的な宗教観に即したファンタジー世界がまんべんなくMIXされて表現されているんですよね。三途の川を路面電車で渡って、黄泉の国の鬼に囚われた姫を取り返す・・・というザ・日本的なストーリーは、やっぱり日本人にしか着想し得ないお話ですし、このあたりは手堅くまとめるよなぁという印象です。ヨーロッパ的な世界観のファンタジーに、オール日本人キャストで挑んで中途半端に爆死した「鋼の錬金術師」と比べると、ミスなくそつなくこなしている感じがありました。
ALWAYS三丁目の夕日シリーズより自然なストーリー運び
ところで、本作は、多くの点で山崎貴監督の過去作「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズと共通点がありました。例えば、ざっと挙げてみても以下の点です。
・「古き良き昭和」を感じさせる美術やセット
・原作が西岸良平作品である
・タイトルの付け方(英語+原作名)
・キャスト陣(堤真一他)
・CG/VFXの多用
・コメディ・ファンタジー色の強い作風
これは見返すたびに思うのですが、「ALWAYS三丁目の夕日シリーズ」って少々過剰演出じゃないですか?泣かせようとするあまり、不自然にクサい演出になってしまっている部分が悪目立ちしすぎているような気がします。(特に3作目)
クサすぎるクライマックスシーン
引用:『ALWAYS三丁目の夕日'64』予告 - YouTube
特に、3作目の吉岡秀隆扮する茶川竜之介の子供に対する一連の振る舞いは、承服し難く、全く共感できません。また、(僕は気になりませんでしたが)あまりに過去を美化しすぎである、として、歴史考証の甘さもかなり突っ込まれていました。
これに対して、本作では、「泣かせ」一辺倒ではなく、主人公たちの言動はより自然にこなれていますし、思い切ってファンタジー路線へと舵を切ったことにより、歴史考証がどうこう突っ込まれる余地もなくなりました。
そういう意味で、山崎貴監督には、厳密な歴史考証が必要な史実物よりは、映像表現とストーリーだけに集中できるファンタジー路線の方が向いているんじゃないかなと思った次第です。ALWAYSシリーズよりは格段に良くなったと思いました。
もうちょっと頑張ってほしかったところ
このように、作品全体としては、そつない感じで良かったとは思います。ただ、優等生的な作りに終止してしまい、作品内にこめられた情報量も多くはなかったので、2回目の鑑賞ではちょっと飽きちゃって集中力が切れてしまいました。うーん、もうひと押し頑張って練り込んでくれたら、物凄く良い作品になったんじゃないかと思うんですよね。例えば、以下の点が気になりました。
・黄泉の国に行ってから、アッサリしすぎてない?
本作は、正和が黄泉の国に行くのが遅すぎないですか?豪華キャスト陣をフルに動かし、伏線を細かく消化するあまり、ストーリーが進むのがもたついて、肝心の黄泉の国での冒険・アクションシーンが短くて物足りない感じがあります。せっかくここまで高い完成度のCGで作れるなら、もっとCG全開の黄泉のシーンで意外性あふれる映像が見たかったです。
・サイドストーリーが投げっぱなしになってない?
正和が亜紀子を黄泉の国から取り返すメインのストーリーは、伏線も全て回収され、よく練り込まれていました。その反面、サイドストーリーが全部ほったらかしで終わってしまったのは気になりました。
この後、本田と家族たちの関係はどうなったの?
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」TVCM(夫婦篇) - YouTube
本田と残された妻子の関係性や、亜紀子の体に入り込んだ女性とその家族の顛末、正和が解決した殺人事件の顛末など、必ずしも劇中でハッピーエンドに終わらなかった者たちが最後どうなったのか(あるいはどうなるべきなのか)、ちゃんと劇中で明確に描くべきだったと思います。
本作では日常風景でも普通に魔物や死者と交流出来てしまうという点で、人間の「死」が非常に軽いタッチで描かれたのが印象的でしたが、サブストーリーで焦点として掘り下げられるかに見えた「死者」と「残された家族」の関係性が全て投げっぱなしで終わってしまっています。残念ながら山﨑監督の考える人間の死生観や、深いテーマ性を感じることができませんでした。
・コメディリリーフにしかなっていない魔物たち
映画冒頭で、家の庭先を横切っていく「河童」や、屋根の上・道端に出てくる一つ目の「独眼坊」など、ちょくちょく出てきては画面に華を添えるコメディ・リリーフ的な使われ方をしていた「かわいい魔物」ですが、ただ「かわいい」だけで終わってしまっています。これももうひとひねりできなかったのかなと。
見ると確かにほっこりするのだけど・・・
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告2 - YouTube
直前にスター・ウォーズを見たから余計そう思うのかもしれませんが、スター・ウォーズで「コメディ・リリーフ役」を務めるBB-8やチューバッカたちは、画面を和ませると同時に、ストーリーにも深く関わってきますから。結局これら「かわいい魔物」たちは、隠れキャラのように画面を一瞬彩るだけで終わってしまい、結局最後までストーリー展開上、特別な役割を持たなかったのはやや残念でした。
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5.映画「DESTINY鎌倉ものがたり」に関する10の疑問点~伏線・設定を徹底考察!~
本作をより深く理解するため、ストーリーや設定について、その要点となりそうなポイントを考察してみました。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。
疑問点1:死神局と幽霊申請とはどんな仕組みなのか?
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
妖気が強い鎌倉では、人間は死んでも幽霊となって実体化しやすい環境にあります。だから、鎌倉で亡くなった人間は、管轄の「死神局」に幽霊となって活動するための「幽霊申請」をすれば、「死神局」から生命エネルギーを供給してもらうことで、幽霊になれるのです。
たとえば、劇中では、吉行和子扮する瀬戸優子が、寝たきりの旦那を残してあの世に行くのが心残りだったため、この「幽霊申請」を通して、旦那が死ぬまで幽霊として寄り添い、人間さながらの生活を続けていました。
しかし、本田が亡くなったあたりから、「死神局」は財政破綻に陥り、幽霊になりたい死者は、身近な人間から生命エネルギーを自前で調達して(=寿命を分けてもらって)活動しなければならなくなりました。そのため、本田は幽霊ではなく魔物として転生し(魔界転生)、亜紀子は夫・正和のエネルギーを奪い続けないと幽霊として活動できなくなってしまったため、あきらめて黄泉の国へと旅立ったのでした。
疑問点2:黄泉の国へと行く列車「タンコロ」とはどんな車両なのか?
引用:108|車両図鑑|江ノ電博物館|電車 | 江ノ島電鉄株式会社
映画の中で、現世と黄泉の国を結ぶ電車として使われた江ノ電の単行運転の旧型モデル100型車両には、愛称として「タンコロ」と呼ばれています。1980年に惜しまれつつ現役引退しましたが、最後に残った2両のうち1両(108号車/昭和6年~昭和55年)は、今でも江ノ電の車庫に自走可能な状態で保存されています。毎年、冬に行われる「タンコロまつり」では、撮り鉄、模型ファンが全国から集まるそうです。
疑問点3:一色家の家政婦、キンとは何者なのか?その正体は?
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
劇中で中村玉緒扮する一色家に3代仕えるキン。日露戦争で夫をなくすなど、その年令は推定130歳以上。なぎなたが得意で、劇中では黄泉の国へ旅立つ正和の留守を預かる頼もしい存在でした。しかし、幽体離脱した幽霊状態の正和が普通に見えたり、三途の川から彼岸へと戻ってきた正和・亜紀子の姿を普通に認識しているなど、どうやら半分魔物化している様子です(笑)
原作では、142歳という設定で、市役所からは「魔物」として認定されていますし、黄泉の国から戻ってきた先祖達と普通に会話したり、魔物たちから慕われています(笑)
疑問点4:甲滝五四朗とは何者なのか?その正体は?
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告 - YouTube
甲滝五四朗とは、正和の父、一色宏太郎が作家として活動するときのペンネームでした。偉大な民俗学者だった正和の祖父、一色信夫は、息子、宏太郎にも有無を言わさず民俗学者の道を歩ませました。しかし、宏太郎はどうしても小説家になりたかったため、厳しい信夫の目を盗んでは変装し、別の家を借りてそこを書斎として、ファンタジー作家・甲滝五四朗として活動していたのです。
しかし、甲滝五四朗は、遺稿となった、黄泉の国へと冒険を進める小説「反魂奇譚」を執筆中に、数年前に若くして病死した妻・文代を取り戻しに黄泉の国へ行き、そのまま黄泉の国から帰れなくなってしまったのでした。原作では、横須賀線に轢かれて死亡したことになっています。(魂の入れ物がなくなっては、確かに現世には戻れませんよね!?)
疑問点5:なぜ正和や亜紀子には、死んでいないのに死神が見えたのか?
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告2 - YouTube
通常、死神は死者にしか認識できない存在ですが、正和、亜紀子には安藤サクラ扮する死神の姿や、丑の刻、黄泉へ向かう電車に乗り込む死者達の姿が見えました。彼らにだけ特別死神や死者が見えた理由は、ともに、夜市で購入した「魔界まつたけ」を食べたことで、幽体離脱をしたことがきっかけでした。どうやら死んでいなくても、「幽体離脱」を一度でもすると、「死んだこと」になるようですね。
疑問点6:天頭鬼のモデルは?
引用:特別展「運慶」公式サイト
「天頭鬼」は、綴りが違いますが、先日の「運慶展」でも出展されていた鎌倉時代の国宝「天燈鬼・龍燈鬼」像(康弁作)からインスピレーションを得て創造された架空の鬼だと思われます。運慶の弟子・康弁が作ったこの「天燈鬼像」(上記写真右側)は、康弁の想像した完全なオリジナルキャラと言われています。他に歴史資料等で類似する同様の種類の「鬼」が見当たらないからです。
本作中の「天頭鬼」もまた、原作にはない映画オリジナルのキャラクターです。黄泉の国におけるネガティブな想念が「鬼」の形を取るようになった魔物として描かれ、黄泉の国内で巨大な城を築城し、多数の手下を従えていました。また、他人の輪廻転生にも影響を及ぼせるなど、強い妖力を誇っていました。
しかし、自分の手下である「赤い手の魔物」を人間界に派遣できても、自らは三途の川を渡って人間界には降りていけないなど、あくまで黄泉の国を出ることはできなかったようですね。
疑問点7:天頭鬼以外の魔物たちの名前は?
左から「豚頭鬼」、「象頭鬼」、「赤い手の魔物」
引用:「DESTINY鎌倉ものがたり公式ガイドブック」より
天燈鬼の側近の部下は全部で3体いました。それぞれ頭部が獣、体は人間の形を取る獣人タイプの魔物でしたが、それぞれ1体ずつ名前がついています。上記写真では、一番左が「豚頭鬼」(とんとうき)、真ん中が「象頭鬼」(ぞうとうき)、一番右が「赤い手の魔物」です。
よく見ると、それぞれ、豚頭鬼が刺股、象頭鬼が大鎚、赤い手の魔物が槍を使うなど、細かく個性も表現されており、フルCGで描かれていましたね。
疑問点8:一色家の自宅に現れた一つ目のかわいい魔物の名前は?
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」×ZIP!スペシャルコラボ映像その1
一色家の玄関先や屋根の上、近所に現れたピンク色の肌をした一つ目小僧は、「独眼坊」といいます。劇中では、コミックリリーフ的なマスコットとして描かれるのみで、ストーリーには直接絡んできませんでしたが、原作によると、「親に捨てられ、死んだ幼児の霊が魔物化したもの」と説明されています。可愛い顔して結構悲惨なキャラクターだったのですね・・・
疑問点9:貧乏神はなぜ茶碗を大事そうに持っていたのか?
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」TVCM(夫婦篇) - YouTube
亜紀子は、仲良くなった貧乏神から、餞別として100均で購入した自分の茶碗と、貧乏神が風呂敷に持っていた茶碗を交換します。なぜ貧乏神は茶碗を大切に風呂敷に入れて持っていたのでしょうか?
それは、恐らく古くからの言い伝えとして、「茶碗をたたくと貧乏神が来る」と言われたように、茶碗は、貧乏神を象徴する、自らを結晶化した「分身」みたいなものだったのでしょう。公式動画にも、こんな面白い映像を用意してくれていました。もしお時間があればチェックしてみてくださいね。
疑問点10:ラストシーン~結末に関する考察
引用:「DESTINY 鎌倉ものがたり」TVCM(スペクタクル篇) - YouTube
黄泉の国で天頭鬼と対決し、亜紀子を取り戻して三途の川を彼岸の向こう側へと戻る最中、正和は絶体絶命のピンチに陥ります。しかし、土壇場になって亜紀子が貧乏神からもらった茶碗が、孫悟空の筋斗雲のように巨大化し、二人は無事に逃げ出すことに成功します。貧乏神が、自らの分身でもある茶碗を介して、亜紀子に味方してくれたのですね。
しかし、これで問題は解決したわけではありません。結局正和は、天頭鬼を倒したわけではなく、単に亜紀子を取り返して現世へ帰っただけなので、問題は繰り返されることになるでしょう。恐らく100年、2000年単位で正和と亜紀子が輪廻転生を繰り返す中で、天頭鬼は新たな策謀を弄してくるはずです。ただ、それはまた今作ではなく別の話ということになりそうですね。(ひょっとして続編もあり?)
6.まとめ
本作は、山崎貴監督が制作してきた一連の過去作の中では、非常にバランスが取れて、CGの使い方も洗練された作品だったと思います。家族を連れて、安心して冬休み既刊中にシネコンで見れる作品であることは間違いありません。
ただ、やっぱりもうちょっと深みやひねりが欲しかったのも事実。エンターテイメント作品としては及第点だと思うのですが、まだまだやれるはず。来年こそは、もっと深い感動をもたらしてくれる作品を期待したいと思います。
それではまた。
かるび
7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
DESTINY鎌倉ものがたり オフィシャルガイド
映画パンフレットをさらに詳細化して、ムック形式にまとめた公式ガイドブックです。キャスト陣・制作陣へのロングインタビュー、各キャラクター設定イラスト、撮影風景解説・原作「鎌倉ものがたり」紹介など、本作をあらゆる角度から詳細解説しています。僕も購入したのですが、毎日小学生の子供が食い入るように眺めてます(笑)パンフレットの内容をほぼ全て含むため、このオフィシャルガイドを1冊購入すればパンフレットは不要だったかも。
DESTINY鎌倉ものがたり公式ノベライズ
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原作を徹底的に掘り下げる!「鎌倉ものがたり読本 増補改訂版」
原作1巻~34巻までのあらすじダイジェストや、全キャラクター紹介、映画と原作の関連ポイントの解説など、「鎌倉ものがたり」原作を一気に俯瞰してチェックできる最強のガイドブック。原作と映画を比較して楽しむなら、買って損はないと思います!
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