※文中の各写真は、主催者の許可を得て掲載しています
【2016年7月18日更新】休日、大混雑中!
かるび(@karub_imalive)です。
先週日曜日、江戸東京博物館にて開催されている「大妖怪展」に行ってきました。会期が始まってまだ最初の土日で、しかも雨だったので、まぁ余裕で入れるだろうとタカをくくっていたら、思ったより熱気が激しく、早くも大混雑していました。
ある程度人が入りそうだなと思っていましたが、出足も好調で、これはこの夏休み、盛り上がりそうな展示会になりそうです。大人から子供まで幅広く楽しめる総合展に仕上がっており、非常にお薦め。今回は、以下「大妖怪展」の感想レポートを書いてみたいと思います。
- 1.混雑状況と所要時間目安
- 2.音声ガイド活用がおすすめ
- 3.今回の「大妖怪展」の特徴・コンセプト
- 4.妖怪画を見る際に予習しておきたいキーワード
- 5.個人的に印象的だった作品たち
- 6.展示替えについて
- 7.まとめ
- おまけ:今回の展示会の予習/復習で役に立ったもの
1.混雑状況と所要時間目安
僕が行ってきたのは会期5日目となる7月9日(土)の13時頃。博物館内のレストラン「FINN'S CAFE」で軽くピザとワイン2杯を頂き、いい感じになってから出動です。最近読んだ本で、「美術館に行ったらメシを食え!」とあったので、そうだ、たまにはいいよなと思って、食欲に負けて腹ごしらえ。
・・・しかし、食べ終わってチケット売り場に行ったら、想定外の混雑っぷり!
しまった。メシとか優雅に食っている場合ではなかった!と酔いも醒めて一気に臨戦態勢です。この日は、チケット売り場での待ち時間が15分くらい。外国人や修学旅行中の学生もかなりいました。入場時は並ばずに入れましたが、会場内は人がパンパンでした。会期中盤以降は、確実に入場待ちが発生すると思われます。
できれば平日などを活用したり、土日でも15時以降に入るのが良いかもしれませんね。
【2016年7月18日追記】
大妖怪展、チケット売り場が混雑しやすくなっているため、Twitterで随時混雑状況を発表しています。チケット購入待ち行列のピークは7月18日(月)実績で、60分待ち。夏休みになると更に悪化すると思われます。公式Twitterをフォローしておいて、平日か夕方にでかけたほうがいいかもしれません。また、チケットは事前にコンビニやプレイガイドで購入してから出かけることを強くおすすめします。
7月18日11:00現在、特別展「大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで」は混雑のため、チケット購入に約60分お待ち頂いています。ご不便をおかけし大変申し訳ございません。
— ギボちゃん(江戸東京博物館) (@edohakugibochan) 2016年7月18日
2.音声ガイド活用がおすすめ
音声ガイドもあります。今回の音声ガイドはベテラン声優の井上和彦が担当。今回の大妖怪展は、縄文時代~現代まで、幅広く「妖怪」をテーマに色々な切り口で日本美術を扱っているので、歴史的な背景を押さえるため、かなり音声ガイドが役に立ちました。レンタルおすすめです。
3.今回の「大妖怪展」の特徴・コンセプト
今回の大妖怪展は、まずその出展規模が過去最大です。展示企画責任者である安村敏信氏が、全国東北~九州まで出展交渉し、重要文化財、国宝はもちろん、レアな一品までかき集めてきました。展示数は、全128点。これを、会期中、前期・後期で順番に紹介していきます。
また、今回の展示では、「日本美術」の観点から、本物、オリジナルにこだわって出品されました。安村氏曰く、
「今の妖怪ウォッチを楽しんでいる子どもたちが、妖怪のルーツにこんな国宝があるんだ、と気づいて欲しい」
という思いで、粘り強く1点1点出品交渉を進めたといいます。
実際、展示物は、浮世絵・絵本・マンガ・絵巻物・屏風・彫刻・絵画と、日本美術で使われたほぼすべての形態で出展されています。
よって、サブタイトルに~土偶から妖怪ウォッチまで~と、子供連れにも対応した文言がありますが、妖怪ウォッチは完全に脇役です(笑)子供が展示に飽きたら、まず最後の部屋においてある妖怪ウォッチコーナーへワープしましょう(笑)
4.妖怪画を見る際に予習しておきたいキーワード
非常に混雑していますから、しっかり見るためにも、行く前に少し予習しておくと良いと思います。今回、実は僕も展示内容を1度では理解できなくて、2回観に行きました。ここでは、2回見終わった後で感じた、事前に予習しておくと良いキーワードを3つに絞ってお届けしたいと思います。
4-1:キーワード①:「百鬼夜行」
室町期から、繰り返し妖怪画の題名として使われた「百鬼夜行」。様々な妖怪たちがおどろおどろしく、また、時にはコミカルに絵巻物の中で騒いだり、練り歩いたりする絵には、たいていこの「百鬼夜行◯◯」というタイトルが付けられています。
4-2:キーワード②:「源頼光」
引用:Wikipediaより
妖怪退治と言えば、この人。源頼光(みなもとのよりみつ)。実際に歴史上実在した人物で、藤原道長が君臨した、平安時代中期の摂関政治全盛時代に活躍し、後の「清和源氏」隆盛の土台を固めました。「平家物語」「源平盛衰記」では、土蜘蛛退治や大江山での酒呑童子退治のエピソードが描かれ、特に室町~江戸期は、有名絵師に何度も取り上げられました。今回の展示でも、かなりの点数で源頼光の妖怪退治が取り上げられています。
4-3:キーワード③:「六道」(りくどう)
展示終盤では、仏教絵画「地獄絵」が、妖怪画のルーツを探るために集中展示されています。その地獄絵で描かれるのが、「六道絵」(りくどうえ/ろくどうえ)です。六道とは、菩薩や如来が住む、いわゆる”天国”を含む、「天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道」の6つの世界を指します。
今回の展示会では、「天国と地獄」を6つに描き分けた「六道絵」やそのバリエーションが非常に見ごたえがあり、最後に待っているジバニャンを見る前に、しっかりと見ておきたいところ。
5.個人的に印象的だった作品たち
5-1.伊藤若冲「付喪神図」
大流行中の若冲を外さず、しっかりと1点入れてきたところは、さすが。先日の山種美術館の記事でも紹介しましたが、伊藤若冲は緻密で超絶技巧な「動植綵絵」だけではなく、こうしたユーモアたっぷりの妖怪画なども手がけています。
この絵画で描かれている『付喪神』とは、作られて99年以上経過して古くなった食器や生活用品に魂が宿り、煤払い(大掃除)の際に捨てられた妖怪化したものです。大抵は可愛く描かれることが多いです。この若冲の作品でも、妖怪らしいコミカルな表情と、「黒・灰色」を基調とした色使いが見事でした。
5-2.歌川国芳「相馬の古内裏」
そして、若冲にならんで近年人気が高い歌川国芳。日本美術に全く造詣のない超初心者の妻(自分も似たようなものだけど/汗)でも、「あのガイコツはよかった」「国芳はいい!」とひと目見てそのインパクト、ダイナミックな構図に感嘆していました。国貞国芳展でも注目されていましたが、何度見ても見飽きません。浮世絵といえば「美人画」という先入観を見事に壊してくれます。
5-3:歌川国芳「龍宮玉取姫之図」
国芳をもう1枚。香川県の志度寺に伝わる話で、竜神に奪われてしまった、唐の皇帝から藤原鎌足へ贈られた贈り物を取り戻すために竜神と戦う海女を描きました。竜神のインパクトもすごいですが、周りの魚の妖怪たちもコミカルで見飽きないです。この自由奔放な大迫力の浮世絵、最高です。
5-4:門井掬水「牡丹燈籠」
古典落語の名作、三遊亭圓朝作の怪談噺「牡丹燈籠」作中前半で出てくる幽霊「お露」を描いたもの。落語だけでなく、歌舞伎・演劇・映画など幅広く上演される怪談噺の定番ですね。落語好きなので、何度も見入ってしまいました。
5-5:大江山図屏風(写真は左隻)
源頼光が大江山で酒呑童子を退治するシーンを、場面を区切りながら描いた屏風絵。17世紀に制作され、池上本門寺蔵となっていた作品ですが、とにかく緑色の発色が良く、保存状態が良好なので、ストレス無く物語をじっくりと追えました。日本美術だと、血しぶきが飛び散るグロいシーンでも、どこかファンタジックで非現実感が漂うため、楽しく鑑賞できちゃいます。
5-6:伝源信 「地獄極楽図屏風」
わかりやすく、上方には極楽浄土が、そして真ん中右辺には人間界が、そして下方には地獄が描かれた屏風。鎌倉時代の作で、非常に古く資料的価値がありながら、かつ保存状態も非常に良い屏風絵です。構図もわかりやすいですし、食い入るように見てしまいました。きっと仏教伝導の際に、教育用途で繰り返し民衆に説法する際に使われたのかな。
5-7:妖怪ウォッチ「キャラクターボツ案」など
子供お待ちかねの妖怪ウォッチコーナーは、展示最終スペースに配置されています。その直前のコーナーで超古代の「土偶」を見たすぐ後、現代の「妖怪ウォッチ」へとタイムスリップする、その落差を楽しんで欲しいとは、企画責任者の安村氏の弁。
目玉となったのは、アニメ中主要キャラとなった「ジバニャン」「ウィスパー」「USAピョン」のキャラクターボツ案です。特に、途中から追加されたUSAピョンは実に20点程度ボツ案があり、慎重に新キャラとして投入されたのだな、とわかりますね。
正直、これは客寄せのためにちょっと取ってつけただけのようなネタに思えたのですが、うちの子供は食い入るように見ていました。「みて!USAピョンってこんなんだったんだよ?!」「ぱぱ、これぜんぶしってる?」とか興奮しておりました。子供には刺さるコンテンツのようです(笑)
6.展示替えについて
今回の展示会は、重要文化財や国宝が多数含まれていることも影響し、出展される128点のうち、実に75%以上が会期途中で展示替えされる予定です。また、巻物も会期中を4分割、6分割して「巻き替え」されます。沢山見ておきたい!という人は、少なくとも前期(7月5日~31日)、後期(8月2日~28日)の両方足を運べば大半の作品は何とか押さえられそう。9月以降の大阪展も同様となりそうですので、熱心な方は、2回以上足を運んでみるといいと思います!
東京会場の出品リストが公式HPにて公開されているので、リンクを貼っておきますね。
http://yo-kai2016.com/image/list.pdf
7.まとめ
今回は、妖怪展の総決算的な大展示会となりました。僕も、すでに早々に2回足を運びましたが、日本の妖怪画の多様さ・奥深さに非常に感銘を受けました。日本美術史上のビッグネーム達が競って描き、単に怖いだけでなく、コミカルさやユーモアもたっぷりと描かれた作品たちは、見応え充分です。
是非、会場に足を運んで、自分だけの一枚を見つけられるといいですね。お薦めの展示会です。この夏は是非!
おまけ:今回の展示会の予習/復習で役に立ったもの
今回の展示会前に、いくつかムック本が出ていますが、まずは「大妖怪展Walker」がおすすめです。展示責任者の安村敏信氏の熱いメッセージにはじまり、バッチリ展示内容のおさらいができます。また、江戸・上方それぞれの妖怪と深いゆかりがある場所への取材なども興味深かったです。
もう一つだけ紹介。すでに見てきた通り、妖怪画は決して怖いだけではなく、どこかしらファンタジックなおかしさやユーモアが漂っている作品が多いです。このムック本「かわいい妖怪画」では、大妖怪展に出展されている作品を含め、どこか可愛さを感じられる妖怪画が集められ、紹介されています。絵はかわいいですが、著者湯本氏の論評は対照的に理知的で丁寧な文章で、コンパクトながら非常に良質な本です。