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あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

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江戸絵画を堪能したいなら、山種美術館へ行こう!~開館50周年で所蔵コレクションを豪華展示中~

アート
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かるび(@karub_imalive)です。

暑くなってきましたね。ここ最近、3日おき位にせっせと美術館通いに勤しんでいるんですが、こう暑いと美術館にたどり着くのが大変です。都心といっても、美術館は閑静な住宅街の中にあったりと、結構駅から歩かされることもあるからです。

昨日7月3日は、2016年では東京で初の猛暑日。35度を超えるうだるような暑さの中、駅から15分苦行をこなして、山種美術館の「青い日記帳✕山種美術館 ブロガー内覧会」に行ってきました。死にそうになってたどり着いたら、美術館の中は、キンキンに冷えた砂漠のオアシスみたいなところでした(笑)

今日は、そんなブロガー内覧会の様子を少しレポートしたいと思います。

1.山種美術館ではブロガー向け内覧会を強化中

美術館や博物館で「内覧会」というと、通常は展示会会期前や、夕方以降の閉館時間帯に行われる、マスコミや研究者などの、いわゆる「関係者」向けの特別イベントのことを言います。映画の試写会みたいな位置づけだと思ってもらえれば。

日本国内の展示会では、作品保護やビジネス上の配慮から、通常展示会では写真撮影等が厳しく制限されることが多いですが、こういった内覧会では、一定のルールの下、ある程度の写真撮影が許可されます。

今年に入って精力的に美術展回りとブログ記事での感想をアップしている中で、なんとかならないのかな~と思っていたのが、この「写真撮影禁止」というルール。だって海外などではほぼ最近はオール撮影OKなわけですよね。

もちろん、趣旨は理解できるのですが、ブログを書く際にどうしても自分のお気に入りの作品などの画像がないと、雰囲気が上手く伝わらないことがあるんですよね。

そういう時は、色々なWebサイトから写真をお借りするのですが、でもやっぱりブログ書いている限りは、自分で撮影した写真を掲載したい!「あぁ、この写真さえあればしっかし紹介できるのになぁ」と地団駄を踏んだケースが結構ありました。

その点、山種美術館では、情報拡散の目的のためにマスコミ向け以外で、ブロガー向け内覧会を定期的に開催しています。ここ最近は、美術系ブロガーの大御所、Takさんとコラボした企画を行っており、今回、Takさんのブログ経由で応募して行ってきた次第です。

2.山種美術館について

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(引用:http://www.yamatane-museum.jp/

山種美術館は、東京の広尾にある、日本画専門の私設美術館です。1966年に開設され、今年で開設50週年を迎えました。そして、その所蔵する作品群は名品揃い。創始者は、昭和の戦後、米事業等で大成功した、株式会社ヤマタネの創業者、山崎種二氏です。苗字の「山」と名前の「種」を取って「ヤマタネ」ですね。

この美術館は、一般には、明治~昭和期の近現代日本美術に強みがあるとされていますが、実は、江戸絵画も結構強いんです。このあたりのニュアンスは、昨日の内覧会で、山崎館長より説明いただいたエピソードが面白かったのでちょっと紹介します。

種ニ氏は、絵画を集め始めた最初期に、酒井抱一の絵画を購入したそうです。まだ米問屋の小僧をしていた10代の頃に抱一の絵に惹かれ、自分も財をなした後は抱一の絵を床の間で愛でるような主人になりたい!という強い思いを持ったことがきっかけでした。

結果、米相場で大成功し、念願の酒井抱一の絵を手に入れるのですが、それが後でニセモノを掴まされたと判明。それ以来、「今現在同時期に生きている人の作品なら間違いは無いだろう」ということで、一旦は江戸絵画収集をやめて、速水御舟や竹内栖鳳、小林古径らの近現代作品収集へとシフトしていきます。

しかし、美術品を買い集めていく中で、やはり彼の思いの原点である「江戸絵画」への思いは捨てきれなかったらしく、コツコツと収集する中で、結果として江戸絵画においても、今の非常に良質なコレクションが出来上がりました。

実際、昨日の内覧会で見た江戸絵画群は見事なラインナップでした。開館50周年ということもあり、所蔵する江戸絵画のベストメンバーが出てきた感じです。最近江戸絵画にハマっている初心者クラスの僕でも、その凄さがすぐわかるくらいでした。

3.開館50周年の記念特別展を実施中

現在そんな山種美術館では、開館50周年を記念して、来年4月まで以下のように、記念コレクション展を全4回にわたって開催予定となっています。全力で出し惜しみなく作品を出してくれると思いますので、期待しましょう。(詳細はこちらへ

え、僕ですか?もちろん皆勤する予定です!

・絵と絵画への視線ー岩佐又兵衛から江戸琳派へー
 2016年7月2日(土)~8月21日(日) ただいま開催中
・浮世絵 六代絵師の競演ー春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重ー
 2016年8月27日(土)~9月29日(木)
・日本画の教科書 京都編 ―栖鳳、松園から平八郎、竹喬へ―
 2016年12月10日(土)~2017年2月5日(日)
・日本画の教科書 東京編 ―大観、春草から土牛、魁夷へ―
 2016年2月16日(木)~4月16日(日) 

4.今回見てきた内覧会

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さて、今回参加した内覧会はコレクション展第1弾、「山種コレクション名品選Ⅰ 江戸絵画への視線 ー岩佐又兵衛から江戸琳派へー」ということで、浮世絵以外の江戸絵画をたっぷりと楽しめる内覧会でした。

内覧会は、17時30分スタート。主催者のTakさんの挨拶で始まり、1時間たっぷりかけて、学芸員の三戸さんによる、ディープでマニアックな解説を拝聴しました。

内覧会の様子f:id:hisatsugu79:20160704204521j:plain

そして、19時からは、1Fの喫茶スペースで、オリジナルの和菓子をいただきながら、あらためてTakさんのトークコーナーと質疑応答。最後は、館長さんからの告知とご挨拶で、19時30分にお開きとなりました。

Takさんプレゼン中。僕は座席で和菓子を頂き中
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あっという間の2時間で、学芸員さんの充実解説は聞けるし、お菓子はいただけるし、写真は撮り放題だし、すばらしいブロガー向け内覧会でした。他の美術館もこういう取り組みをもっとやってもらいたいものですね・・・

5.展示の見どころ~若冲展の次ならこれ~

先日の「伊藤若冲展」で初めて本格的に日本絵画を見た!という人も結構いるかと思います。では、その後どう取っ掛かりを作っていけばいいのか?

僕の考えは、ずばり「江戸絵画にはまれ!」です。

比較的若冲と類似した作風の画家が多く比較検討しやすい、江戸中期以降の「江戸絵画」を流派別、年代別に一気に俯瞰してチェックする中で、お気に入りの絵師を見つけるのが一番だと思うのですよね。

しかも、江戸絵画はまだ新しいので、絵も傷んでなくて見やすいのもストレスがなくて良いです。(室町以前の絵画は、もう茶色くなって劣化しているのが多くて見るのがしんどい物も多い)

ということで、次のセクションからは、今回の展示会で、特に気に入った作品を、幾つか紹介しますね(僕の撮った下手くそな写真で/笑)

6.特に印象的だった作品

点数はそれほど多くないですが、大物の屏風絵を始めとして、1点1点かなり突っ込んで見ていきたいものが多かったです。

6-1:伊藤若冲「伏見人形図」(無所属)

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若冲展を見た人は気づかれた方が多いと思いますが、若冲は意外と作風が幅広いのです。細密な動植物の絵図「動植綵絵」シリーズを始め、超絶技巧なイメージが強い若冲ですが、意外にも力が抜けたユーモアたっぷりの絵画もたくさん手がけているのですよね。

伏見人形は、土粘土をこねて作る「土人形」なのですが、これを表現するために、若冲は「筆使い」ではなく、顔料に混ぜ物をするなど、素材を工夫することにより人形の質感を出そうとしました。これは当時では画期的なことだったそうです。若冲が「奇想」の画家と呼ばれるゆえんですね。

6-2:酒井抱一「飛雪白鷺図」(江戸琳派)

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華やかできれいな図柄、虫や鳥が何気にかわいいのが特徴の「琳派」ですが、18世紀には後継者不在により、一旦下火になっていました。

しかし、そこで中興の祖が出ます。酒井抱一です。始祖である尾形光琳・乾山に私淑し、同時に彼らの研究者でもありました。自ら、江戸で「尾形光琳没後100周年記念展示会」などを企画しつつ、自らも絵の才能を遺憾なく発揮して秀作を連発、琳派を再び盛り上げていきます。「天は二物を与えず」とはいいますが、酒井抱一には、プロデューサー、研究者、画家と3つくらいの才能があったんですね。

僕も、酒井抱一は大好きで、江戸絵画の中ではダントツに一番好きです。飽きが来ないんですよね。絵の前で何時間でもお茶とか飲んで佇んでいたい感じ。

この冬の図柄、「葦と鳥」の図を抱一はいくつか残していますが、恐らく得意なパターンだったんだろうなって思いました。ちょうど同時開催中の出光美術館「美の祝典」展でも同様の構図の絵画が出展されています。

6-3:酒井抱一「秋草鶉図」(江戸琳派)

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同じく酒井抱一の屏風絵。秋草にうずらが戯れていますが、このラグビーボールのような謎の物体は一応は「月」であるとされます。でも月であるならば、弦の向きが反対なのはなぜなのか、そこはまだ研究中とのことです。個人的には、もうちょっと高い所に持ってきたほうがいいんじゃない?って思うんですが、、、。UFOみたいですよね。

6-4:岸連山「花鳥図」(円山四条派)

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孔雀と鶴がゴージャスな、二艘の屏風絵の大作。円山応挙を始祖とする写実的な作風である、円山四条派の流れをくむ画家です。純粋に絵のリアルな迫力と、上品で幻想的な構図にしばらく見惚れてしまいました。

6-5:池大雅「指頭山水図」(文人画)

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文人画とは、元々は、職業御用絵師達の描いた「院体画」に対して、教養人たちが自らの教養を示すための「余技」としてたしなむものとして中国で発達しました。その中国に習い、日本でも江戸中期頃より、京都・江戸や有力諸藩のいる各地方にて、教養人を中心として流行します。教養人同士で詩歌や手紙と一緒に絵を送り合ったりしたわけです。ヒマですよね、江戸の知識人って・・・

池大雅は、その中でも、職業専業画家として文人画(南画)を大きく世に広めた第一人者です。同じく文人画家だった与謝蕪村、写実的な絵画で一世を風靡した円山応挙、そして現在ブレイク中の伊藤若冲らと同時代に京都で活躍していました。この「指頭山水図」は、「指墨」「指画」とも言われ、手の指先や爪、手のひらなどを駆使して描かれた超絶技巧的作品です。・・・しかし画像だと伝わらないな~。

6-6:山本梅逸「白衣観音図」(文人画)

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山本梅逸は、19世紀に三河・尾張で活躍した文人画家です。彼らは、京都・江戸だけでなく、各地の有力藩のお膝元でも活躍しました。恥ずかしながら山本梅逸については、今回の展示会で初めて知ったのですが、個人的にかなり気に入りました。

ネットで調べたのですが、今ひとつ有力な資料や過去の大規模回顧展の記録なども見つからず、どうしたものかと思っていたのですが、購入した図録で、日本美術の大家、山下裕二教授が

「さらに、山本梅逸、椿椿山、日根対山、冷泉為恭などの作品は、これまで研究者にすら公開される機会がきわめて乏しかったから、今後、本展を景気に研究が進展することを期待したい」 

と書いているくらいですから、まだまだ埋もれてる(?)画家なんじゃないかと。若冲のように、我々が積極的に見つけてあげないと?って思いました。この観音様を描いた筆使いとか、ふくよかで中性的な感じとか、すごく良いと思うのですが、どうでしょうかね?

6-7:山本梅逸「桃花源図」(文人画)

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山本梅逸をもう一丁。こちらは、遠く引いてみた時に、桜のピンクの発色がすごく綺麗で、ホントに150年前の作品なの?とマジマジと見てしまいました。美術館の保管もよかったのでしょう。春先でまだ寒さも残る中、割と控えめに咲いている桜と遠景の山、そして川の流れが構図的にも美しいなと感心しきりでした。

7.まとめ

江戸絵画は、比較的状態のよい作品が多く残っていますし、中期以降は特に諸派入り乱れ、本当に見応えのある作品が物凄く多いです。19世紀後半に入ると、流出した日本画がパリで「ジャポネスム」として大流行。近代西洋絵画に大きな影響を与えました。

今回の山種美術館の50周年記念展では、第一弾は江戸絵画、第二弾は浮世絵の所蔵コレクションが一挙大放出して展示される予定です。共に、中身が濃く凝縮された展示会です。江戸時代の各流派の大家たちの代表作品に一気に会える良い機会なので、この夏は是非山種美術館に出かけてみてくださいね。僕も、さんざんこれからリピートしたいと思っています。

それではまた。
かるび