あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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名作ずらり!『円山応挙「写生」を超えて』展は日本画ファン必見の良い展覧会でした!

かるび(@karub_imalive)です。

この秋は、「速水御舟展」「禅-心をかたちに」「鈴木其一展」など日本画の大型展覧会が続いていますが、11月3日から根津美術館で始まった円山応挙展も非常に見応えのある展覧会でした。

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以下、感想を書いてみたいと思います。

1.混雑状況と所要時間目安

僕が行ってきたのは11月5日(土)の午後14時すぎ。さすがに大規模展というわけではないので、入場制限がかかるほどではないですが、いつもの根津美術館に比べるとやはり混雑しています。余裕を持って出掛けたほうがよさそうですね。

展示点数はそれほど多くないですが、常設展、そして新コースのできた庭園の紅葉と合わせて堪能するなら、2時間は欲しいところです。

2.円山応挙と、今展覧会のコンセプトについて

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(引用:Wikipediaより)

円山応挙(1733ー1795)は、18世紀後期に京都で活躍した日本画の巨匠です。この秋も京都の展覧会でブレイク中の伊藤若冲、文人画の巨匠池大雅、与謝蕪村らと同時に、江戸時代の京都画壇黄金期に活躍したスーパー絵師でした。30代後半で屏風絵の大作等のオーダーが殺到した京都人気No.1の絵師になり、亡くなるまで最前線で活躍し続けました。(ちなみに、若冲は当時、応挙に次いでずっと2位)

美術ファン以外にとっての円山応挙のイメージは、今年の「大妖怪展」でも出展されていた「幽霊画」だと思います。足のない幽霊画を初めて描いたのが応挙なのだとか。

返魂香之図(※今回未出展)
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(引用:http://edo-g.com/blog/2016/06/ghost.html

ですが、幽霊画は彼の広大なレパートリーのうちの一つにすぎないのです。応挙の絵画の一番の特徴は、多彩な技法と精密な写生に支えられた超技巧的な花鳥画や山水画です。

また、写実に基づきつつも個性あふれる独自の作風を作り、弟子も多数育成して、現代の日本画壇まで延々と続く日本画の流派「円山派」を立ち上げました。

今回の展覧会は、根津美術館所蔵の重要文化財「藤花図屏風」をはじめ、国宝「雪雪松図屏風」や、「雲龍図屏風」など応挙の代表作と言える大作が出展される他、応挙の修行時代の試行錯誤やネタ帳、さらに出世作となった大作絵巻「七難七福図巻」まで、若手時代に遡って多彩な作品を収集展示しています。

3.必見の代表作と名作

特に、今回の展覧会では応挙の代表作がガッツリ展示されています。必見の作品をいくつかピックアップしてみました。

3-1.牡丹孔雀図(~11/27迄) 

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(引用:http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/002/299/66/1/11579068721554281.jpg

応挙中期に描かれた傑作。圧倒的な写生に基づいて描きこまれています。まず、この絵の前で最低3分は立ち止まって細かく味わってみて下さい!

同世代に活躍した伊藤若冲と比較すると、細密的な描写では甲乙つけがたい同レベルですが、個性が全く違っていることが一目瞭然です。

参考:伊藤若冲「孔雀鳳凰図」と比較f:id:hisatsugu79:20161106144540j:plain

3-2.雲龍図屏風(11/29~)

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(引用:http://rootakashi.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/2-0cb7.html

迫力ある龍の姿を描いた屏風。元々は東寺観智院の所蔵で、仏教儀式に使用されました。京都の寺社の天井画等で描かれた古画を参考に、たらしこみやにじみ、ぼかしなどの水墨画の技術をふんだんに注ぎ込んでリアルに表現された「雲」や「空気」の表現が凄いです。

3-3.藤花図屏風

f:id:hisatsugu79:20161106131149j:plain(左隻のみ。引用:cinra.net)

根津美術館所蔵の重要文化財。金地の屏風に、「つけたて」という一筆書き手法で一気に即興的に幹を描き、その上で1枚1枚の花に青と紫、白の絵の具で彩色しています。複雑に絡み合う立体的な幹の造形と、光って見えるようなあざやかな藤の花がみどころです。

3-4.雪松図屏風(~11/27迄)

f:id:hisatsugu79:20161106131121j:plainf:id:hisatsugu79:20161106131127j:plain(引用:Naverまとめより)

 そして、この展覧会のハイライトというべき作品が、この国宝にも指定されている「雪松図屏風」。「円山派」として後続の絵師達に受け継がれた応挙独自の手法で、見事に3D的に松の立体感を表現しています。

っていうか、難しいことは抜きにして、目の前に立てばわかります。雪に煙る幻想的な巨大な松の独特の存在感に圧倒されますから・・・。これは国宝になるわけだ、、、と納得させられました。

3-5.龍門図(~11/27迄)

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(引用:http://rootakashi.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/2-0cb7.html

竜門を登ることのできた鯉は竜になるという古代中国の故事「鯉の滝登り」から、立身出世を暗喩するおめでたいモチーフの絵画です。応挙は、複数枚このような「鯉図」を描いていますが、特にサイドの2匹の鯉の細密な写実描写と水流の様子が非常に印象的でした。

4.マニアックな音声ガイドが最高!

オッサンがたんたんと地味に喋るだけで、一切エンタメ性はないのですが、根津美術館の音声ガイドは最高にマニアックなのです。作品の解説だけでなく、付帯的な情報までえんえんと長く喋り続け、「ん?まだ喋るの?」っていうくらい、1つ1つの解説が充実した「やりすぎ」解説が聴き応え抜群。

常設展の解説も合わせて聴けるので、応挙展の音声ガイドは絶対借りたほうがいいと思います!

5.その他注目したい作品

5-1.七難七福図巻

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(引用:http://webun.jp/item/7119565

応挙が京都画壇で大きく注目されるきっかけとなった出世作。円満寺の住職のオーダーを受けて、「仁王経」の内容を長大な絵巻物にして3年をかけて制作しました。この絵巻の制作過程で、さまざまな表現方法を確立していったようです。

展覧会では、3Fの別室1室全部を使って展示されており、非常に見応えがありました。天獄だけでなく、地獄的な風景も描かれていて、わりと血がドバドバ出ていたりグロい表現もありました・・・。

5-2.四条河原夕涼み図

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(引用:http://webun.jp/item/7119565

応挙が10代半ばから勤めた玩具商時代の作品で、今回の展覧会前に新たに発見されたそうです。「覗き眼鏡」という一種の写真装置を通して見えた立体的な画像を西洋から入ってきた遠近法の手法などを用いて描いた、「眼鏡絵」というジャンルです。京都の夏の夜、夕涼みに鴨川に集まってきた民衆を描いた作品で、一見して「これ本当に応挙?」と見入ってしまいました。

ちなみに、使われた写真装置はこんな感じだったみたいです。

覗き眼鏡(※今回未出展)
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(引用:http://www.geocities.jp/sakushiart/nihon/822_2.JPG

 

6.まとめ

出品点数は全部で47点と少ないですが、大物の作品や貴重な研究資料が一通り揃った良い回顧展だと思います。応挙の代表作品をまとめて一気に見ることができる素晴らしい展覧会でした。僕も、後期に「雲龍図」を堪能しに、もう一度行ってきたいと思います。 

それではまた。
かるび

展覧会開催情報

国宝や重要文化財がバリバリ出てくる円山応挙展は展示期間が短く、展示替えもあります。是非会期を逃さず、足を運んでみて下さい。

展覧会名:『円山応挙-「写生」を超えて』展
会期:2016年11月3日~12月18日
【前期】11月3日~11月27日
【後期】11月29日~12月18日
会場:根津美術館
公式HP:http://www.nezu-muse.or.jp/
Twitter:https://twitter.com/nezumuseum

参考図書など

最近展覧会があるたびに記事を書くために利用させてもらっていますが、豊富な図版なのにこの薄さと軽さは手放せませんね。応挙の画業全般をコンパクトに振り返ることができる良い本です。

今回出展されている有力作品のほぼ全部が掲載されています。解説の量もぶっちゃけ公式図録よりも充実しています(笑)図録よりこっちのほうがお勧めかも。