あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【書評】箱根駅伝有力校の監督本を読んでみた感想を書くよ #箱根駅伝2016

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かるびです。

いよいよ年末年始が近づくと、陸上長距離が大好きなかるびは1月2日~1月3日の箱根駅伝が待ち遠しいです。これから12月にかけて、箱根駅伝2016の予習編ということでいくつかのエントリーを書いていきたいと思います。

今日はその第1弾として、箱根駅伝2016でおそらく最有力となる東洋大学、駒澤大学、青山学院大学の各監督の著書を読んだ感想をまとめます。

駅伝という長距離走のリレー競技は、野球やサッカー同様、本質的にはチームスポーツです。よって、その成功には監督の采配は非常に大きなウエイトを占めています。

箱根駅伝は、日本中の長距離陸上トップ選手が関東の有力校に集結し、各出場大学のプライドをかけた年間を通じたチームでの総力戦となります。年々優勝タイムが記録更新されるハイレベルな戦いとなっているため、選手のスカウト、トレーニング、選手の体調管理、育成方法など、多岐にわたる課題を年間単位でプランニングし、戦略を立て、管理していかなければいけません。

単に選手が一生懸命走るのをテレビで見ていても、増田明美が余計なエピソードをしゃべり、瀬古利彦がボケた解説をするのでそれはそれで楽しいのですが、こういった監督の著書から各校の戦略や考え方をチェックしてみるとより楽しめるのかなと思い、この秋に駅伝の予習をかねて3冊サクサクっとぽちってみました。

それでは行ってみましょう。

本の紹介

まず今回取り上げるのはこの3冊。

東洋大学陸上競技部長距離部門監督:酒井俊幸

青山学院大学陸上競技部監督:原晋

駒澤大学陸上競技部監督:大八木 弘明

3人の名将の指導法に見る共通点

まず、この3冊を読むとわかるのが、3人の監督とも、その指導の根底に流れる考え方やバックグラウンドにおいて、意外に共通点が多いことです。

現役時代は結果が出なかった

一番大きな共通点としては、3人とも現役時代それなりの選手でしたが、決して一流選手ではなかったことです。酒井監督は母校東洋大学でチームキャプテンも務めましたが、3回出走した箱根駅伝の担当区間では区間2ケタ順位に沈んでいます。

大八木監督は高校時代3年間を骨折の後遺症で棒に振り、卒業後、社会人実業団を経て駒澤大学へ入学する変則的なキャリアを送りました。けがが多くまともに走れた時期が少なく、フルマラソンでは2時間15分台の記録で終わります。

原監督も大学時代は全日本インカレ10000mで3位を取るなど一瞬実績を残すも、実業団へ行ってから監督と反りが合わずに5年で退部、以降は陸上から縁遠くなり、電力会社で空調機の営業マンとして10年近く過ごすことになりました。3人とも選手としては大成できなかったんですね。

それが指導者としては一流監督へと登り詰めます。指導者となってから、現役時代の悔しさを指導への情熱に転化して、見事に大成功しました。どの競技もそうですが、選手としての実績とその後の指導者としての資質は別物だってことでしょうかね。

育成の土台は人間性

次に、指導法でも共通点がいくつかあります。まず、3人とも育成の土台として、選手の人間性を重視した教育・育成をしていることが挙げられます。

酒井監督が就任早々やったのは荒れた部室の徹底した掃除でした。「礼を正し、場を清め、時を守る」ことを徹底させた、と著書にあります。

大八木監督は、門限などは厳しくないが、挨拶と礼儀は徹底しているそうです。

原監督も監督に就任して特に最初の3年間は徹底して規則正しい生活を選手に徹底しました。スカウトにおいてもどんなに素質があり、持ちタイムが早くても人間性の悪い人材は、入学して大成できないので決して採らないそうです。箱根駅伝と言う日本一の駅伝王者を目指すためには厳しいトレーニングが必要ですが、その土台となるのは厳しい修練に耐えうる強く正しい心だってことなのでしょうね。

優れた観察眼とビジョン、それを支える情熱

また、3名とも本当に良く一人一人の選手のことを見ています。選手の性格、距離適性、トレーニングメニューなど、毎年入れ替わる選手層やその年の強化課題に合わせて色々と柔軟にメニューを変更し進化させていっています。2015年度青山学院大学の箱根駅伝圧勝劇は、選手の体調管理とピーキングに加え、新たに取り入れた体幹トレーニングも一因だと言われていますね。決して画一的で前時代的な「走れ走れ」的な大味なメニューに終始せず、科学的なアプローチを臆さずどんどん取り入れます。

そして、3人の監督はそれぞれビジョンや情熱もずば抜けています。とにかく朝から晩までオフの日以外はグラウンドに立ち続け、箱根駅伝をはじめ大学駅伝で勝つことを大目標としてぶらさず、教え子を叱咤し続けます。そして、3人の監督ともに日本の長距離陸上界に対するビジョンとして、「箱根をステップに羽ばたいていける選手を育てよう」という熱い気概も共通して持っています。

それぞれの監督で特に印象深いこと

ビジネスセンスを指導に生かす(原監督)

まず、際立つのが原監督の考え方。選手に対して根柢のところでは厳しさを崩しませんが、行き過ぎた根性論を否定し、選手と一緒に楽しむところはしっかり楽しみ、締めるところは締める。また、中国電力時代のサラリーマン時代に培ったビジネス的な感覚をチームマネジメントに存分に応用しています。徹底した目標管理を実施し、個別面談やチームメイト同士で話し合わせ、自発的にやる気が出るように仕向ける。個人的にはこの監督の下であれば楽しみながらタイムをどんどん伸ばしていけるような気がしました。

箱根駅伝名物、大八木監督のゲキ(大八木監督)

大八木監督といえば、やっぱりあのえげつないだみ声の掛け声です。監督自身も十二分に自覚しているようで、著書のほぼ最初の部分で触れています。

しかし、終盤に差しかかるにしたがって、1分間が1分間じゃないような感覚に陥る。まして、後ろからライバル校が迫っているのを知れば、声をかけることが許されるポイントを迎えるまで車の中でそわそわしてしまうのは当然の心理だろう。余計なことを言う必要はないと思っていても、1分間なんてあっという間だし、恥ずかしながら、監督でありながらも冷静でいられないときもあるのだ。私の中のスイッチがオンに切り替わる。「ここからだ!」「そこで踏ん張らなくてどうする!」「頼むぞ!」「腕を振れ!」「男だろ!」様々な言葉で選手に檄をとばす。だが、それらはあらかじめ用意していた言葉ではない。選手が広範になって苦しくなってくるころ、必死な様子が私にも感じられ、思わず口をついて出る言葉なのだ。

このくだりを読めただけでも駅伝マニアとしては顔がほころんでしまいました。いや、そうだよな。選手と一緒になって戦ってるんだなと。傍から見ていたらこわもて風のヤ●ザですが、駒澤大学の選手だったらこれ、心強いだろうな、と思いました。

その1秒をけずりだせ(酒井監督)

酒井監督は、まだ39歳でかるびと全く同世代ながら、オーソドックスで芯のしっかりとした指導法で、選手の気持ちを引き出すのが本当に上手です。特に著書のタイトルである「その1秒をけずりだせ」。この言葉が生まれたきっかけは2011年度箱根駅伝での敗戦です。エース柏原を擁しながら早稲田大学にわずか21秒差で敗れたその悔しさをばねに生まれた最高のスローガン。普段の練習から1秒を大事にし、チームのために1秒でもタイムを縮めようと全員で「和」を大事にして取り組んでいく。このスローガンの下、選手は結束し、見事翌年、翌々年と箱根駅伝を連破しました。走る選手の腕に、大きくこのスローガンがマジックで書かれていたのをTVで見たことがある人もいるかもしれません。かるびは本当のこのスローガンが大好きです。

まとめ

気が付いたら、面白くてあっという間に3冊読破していました。さすがにこの名監督たちがあって、今の充実の3強チームが形作られているんだな、と思い知らされました。どの監督の言葉や考え方にも非常に重みがあり、過去の敗戦や挫折といった悔しさをバネに考え尽された戦略が網羅され、惜しげもなく公開されています。

最初は、正月の箱根駅伝を10倍楽しむにはやっぱり監督本でも読んでおくか!と気楽に構えて読み始めたのですが、意外に読み進めると、これ自分自身のキャリアや仕事、目標達成などにも役立つ立派な自己啓発本でした。実際に自己啓発目的で読む人も多いのでしょうね。どれか1冊でもいいので、箱根駅伝好きな人は読んでみてほしいです。どれもおすすめ。

ということで、今日ははこのあたりで。

かるび