あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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Twitterはブロックされたけど、ちきりん「未来の働き方を考えよう」はすごくいい本だった

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かるび(@karub_imalive)です。

僕は、前職が人事労務系の仕事でした。今度復職する際もその系統がいいなぁと考えているので、離職中の現在でも、読書の際は一定量、人事労務系の本を読むようにしています。

最近は、近くに大型書店がないので図書館で片っ端から借りているのですが、人事・採用系の本って、内容の陳腐化が早いのですよね。

法制度の変更や人材市場の需給変化の速さから、僕の感覚としては、平均で約3年程度で内容が古くなってしまい使えなくなってしまいます。

そんな中、これは!という当たりがありました。それが、今日紹介させて頂く、ちきりん著「未来の働き方を考えよう」です。

出版年月は2013年6月と、約3年が経過していますが、その主張内容は全く陳腐化していません。むしろ3年前よりも本書の主張の重要性は益々高まっているように感じました。

あ、過去の経緯から、はてな界隈の人たちには評判が悪いことは知ってますよ。僕も、特に心当たりもないのに、なぜだか本人からTwitterでブロックされているから、わからなくはないです(笑)

しかし、この「未来の働き方を考えよう」は個人的なもやもや(あんま気にしてないけど)を吹き飛ばしてしまうくらい良い本でした。

1.未来の働き方=「人生は二回生きられる」

ちきりん氏が主張する、「未来の働き方」とは何なのか。実は、サブタイトルにこそ端的にこの本の結論が示されています。すなわち、

「人生は二回生きられる」

「人生は二回生きられる」とはどういうことなのか。それは、長い人生の中で、一度はキャリアをリセットすることを念頭に、人生を柔軟に考えてみようという提案です。

医療の発達による長寿化と、労働者人口減少による老齢年金の受給開始年齢の高年齢化により、これからは、より一層長期間働かざるを得なくなる。

例えば、大学を卒業して22才。そこから、年金受給がスタートする70才前後まで、約50年間も働かなきゃいけないわけです。60才で隠居していた昭和高度成長時代に比べると、10年近く労働期間が伸びるわけです。

年功賃金、終身雇用がガッチリ噛み合い、誰しもが右肩上がりの高度成長を実感できた昭和時代ならいざしらず、これだけ不確定要素が高まった時代に、「一生御社に骨を埋める所存です!」といった単線的なキャリア志向は成り立たない。

超長距離走となってしまった労働生活だから、自分の好きなところでどこかで休みを入れられるようにしよう、一旦休んで、また働けるような、そんな柔軟なキャリアを目指そうよ、、、という提案ですね。

2.やりたいことは「いつか」ではなく「今」やる!

では、意図的にキャリアをリセットして、何をやるのか?

それは、「人生で本当にやりたいことをやる」です。

60、70になってから、やりたいことが100%やれるか?というと、どうでしょうか?結構怪しいですよね?老化は誰にも平等に訪れ、そして誰も免れることはできません。

月1、2回美術館に通ったり、たまにバスで団体旅行に行くくらいなら、充分年老いてからも対応できます。でも、70才でトライアスロンができますか?スキューバダイビングができますか?登山ができますか?ということなんです。

やりたいことは、「今」やらないとダメなんです。

そして、本書でその基準、分水嶺とされるのは40才。
40才を境に、体力はピークアウトしていく一方で、様々な成人病のリスクは逆に上昇していくわけです。「老い」が本格的に始まるのですよね。だから、心身ともに若さをキープできる健康なうちに、いちどキャリアをリセットし、やりたいことをやる時間にあてなさい!というのが本書の趣旨です。

3.取りうる方向性のいくつかのパターン

では、「キャリアをリセット」し、やりたいことをやる時間を効果的につくりだすにはどうしたらいいのでしょうか?最終的には、一人ひとり状況や課題が違うので、細かい処方箋は自分で考えるしかないでしょう。その代わり、本書ではいくつかのおおまかな方向性や考え方のフレームワークが提示されています。

3-1.間欠泉的キャリア

市場ニーズの多い分野で就職することで、多少のブランクが空いても強烈な需給ギャップから、再就職の不安なくリフレッシュが可能となります。例えば、医療・介護系の仕事です。給与条件はともかくとして、今後高齢化が進む日本において、超売り手市場が継続することが目に見えています。こういった業界では、何年か働いたら、数ヶ月休みを取る、といった間欠泉的キャリアが可能になる、というわけです。

3-2.支出を抑え、ミニマムに暮らす

一生懸命働き、よりたくさん稼いで、より豊かな生活を目指す、という従来の常識と真逆の考え方を採るということです。必要生活費をできるだけ抑え、働く期間を最短化することにより、やりたいことをやる時間にあてる。「収入を増やす」から、「支出を減らす」へと発想転換を図れ、ということです。

3-3.ゆるやかな引退=プチ引退

40代までは普通に働き、それ以後の第二の人生で、ゆるやかな引退=自分スタイルの働き方に移行してみては?という提案です。例えば、今あなたが35才なら、あと5年~10年は仕事を頑張り、その後はやりたいことに合わせて、徐々に引退へとソフト・ランディングしていく、という考え方。ちきりん氏は、それを「プチ引退」と命名し、プチ引退には以下のパターンがあるといいます。

パターン1:半年だけ働く「シーズン引退」
パターン2:週に2、3日働く「ハーフ引退」
パターン3:好きな仕事だけ請ける「わがまま引退」
パターン4:夫婦でひとり1年ずつ引退する「交代引退」

このパターン別のプチリタイア案は構想としては良いんじゃないかと思います。すっぱりやめるのではなく、一部労働負荷を下げて、空いた余暇にやりたいことをやる。両取りでいいかもしれません。

そういえば、今の我が家のパターンは、まさにパターン4=「交代引退」状態であります。数年前に妻が育児出産中は、1年半ほど産休育休で会社を休職していました。今はフルタイムに戻り、代わって僕が離職中であります。

4.ちきりん氏の実体験に基づく体を張った提案

ちきりん氏のブログが批判される原因として、しばしば「アイデアはいいけど根拠が伴ってない」「思いつきでものを言っている」と言われますが、この本に限っては、それはあてはまりません。

なぜなら、今回の主張「人生をプチリセットして、やりたいことも都度やっていこうぜ!」という考え方は、まさに彼女自身の半生での試行錯誤から生まれた結論だからです。本書のP138には、こう綴られています。

実は私自身も、40代後半に働き方を大きく変えました。大学を出た後、日本の証券会社と米系企業に勤務し、20数年にわたって、資本主義の最先端のような場所で働いていました。[・・・]仕事自体は楽しく、やりがいも感じていましたが、40代になる頃には、「この働き方を今後20年も続けるのは、必ずしも自分の望んでいる働き方じゃない」と考えるようになりました。

その理由として、①加齢による体力の限界、②仕事への飽き、③両親との触れ合いの時間確保、④趣味のための時間と、大きく4点示した上で、このように締めくくります。

でも、今までの働き方を続けていたら、それらをすべて経験することは不可能だったのです。こうして次第に私は、40代の間にひとつめの働き方を終え、その後は別の仕事、別の働き方に移行するのも、ひとつの選択肢だと真剣に考え始めたのです。

なるほど。ちきりん氏が、独身で行動の自由が比較的取りやすい、という事を割り引いて考えたとしても、外資系優良企業でのゴージャスな給与やステータスを放りだして、「ちきりん」という一ブロガーになってしまうのは、やはり相当葛藤があったと推測します。

少なくとも、本書で「煽られている」と感じるようなことは一切ありませんでした。真摯に本音が綴られていると思います。

5.心配なら徹底的にモデルケースを調べよう!

・・・とは直接本には書いてないんですが、ただ、本書の結論部分でも「自分の生きる道を見つける力は、能力の高低や家庭環境の善し悪しには全く無関係」と書かれています。僕も全く賛成です。

そして、それをどう実現するかについては、必ず先人に類似するケースが見つかるはず。心配なら、徹底的にキャリア事例を調べることです。ネット上でも本でも、いくらでも先進的な生き方をしている人が見つかるし、その成功/失敗事例も手に入ります。

心のカンフル剤として一時的に高揚するためではなく、そこから学び、自分自身に活かすために徹底的に調べるのです。そこから先は、ちきりん氏の仕事ではなく、自分自身のタスクですよね。

6.まとめ

この本は、これからの生き方やキャリアに悩みを抱えている全ての人に幅広く役立つ可能性を秘めています。「未来の働き方を考えよう」と問われているので、決して手取り足取り教えてくれるわけではありません。考え方の方向性や、フレームワークをインプットしてくれるに過ぎないわけです。いわば、「こんなキャリアの考え方はどうですか?」という抽象化された提案レベルであります。

それでも、直線的な従来型キャリアしか見えていなかった人には、大きな問題提起となります。そして、本格的にダブルワークや早期引退を考えている人には、その戦略立案の大きな助けになる本です。

決して甘くはないのですが、何度も読み返すと自分自身に気づきが起こる良い本でした。わけもわからずツイッターをブロックされているからといって、ブコメが書けないからといってメゲること無く、虚心坦懐に読み込んでみました。本当に、良い本でした。ブロックされてなきゃなおよかった(笑)

そんじゃーねっ!!
かるび