あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「不能犯」感想・考察と7つの疑問点を徹底解説!/松坂桃李が熱演するホラータッチのサスペンス不条理劇!

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かるび(@karub_imalive)です。

2月1日に公開された、松坂桃李が新たなダークヒーローを演じるサスペンス・スリラー映画「不能犯」を見に行ってきました!早速ですが、感想・考察等を織り交ぜた映画レビューを書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.映画「不能犯」の予告動画・基本情報

▶公式予告動画「不能犯」
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【監督】白石晃士(「貞子vs伽椰子」他)
【配給】ショウゲート
【時間】106分
【原作】宮月新(「不能犯」※現在既刊7巻まで発売中

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引用:映画.com

本作でメガホンを取ったのは、白石晃士監督です。自分自身も劇中に積極的に出演するJホラー映画の新定番「コワすぎ!」シリーズや、激しいバイオレンス&流血描写が痛々しかった日韓共作での密室サバイバル「ある優しき殺人者の記録」など、これまで主にPOV視点での撮影手法やフェイクドキュメンタリー形式の低予算ホラー映画で、様々な実験的な新機軸を打ち出し、マニアックな人気を博してきました。

B級ホラー映画で独自の作家性を築いてきた白石監督でしたが、2016年、Jホラーの2代巨頭「リング」「呪怨」シリーズのコラボ企画として制作された「貞子VS伽椰子」で、満を持してメジャー配給映画へと進出を果たしました。

本作「不能犯」は、白石監督にとって第2作目となるメジャー配給映画での登板となります。そして、「ホラーではない」マンガ原作をベースとしたサスペンス・スリラー映画への挑戦は今回が初めてとなります。

ちなみに、今回の映画化企画では、同時に前日譚的な位置づけで、1話完結のオムニバス形式で全5話のドラマ作品も同時に制作されました。これは、現在dTVにて絶賛配信中。映画本編でも登場する主演・宇相吹正、多田友子がストーリーに絡んでくるため、合わせてチェックしておくと、より映画本編を楽しめると思います。(映画本編より原作に近い雰囲気が出ています)

第1話のお試し視聴版がYoutubeに上がっていますので、紹介しておきますね。

▶ドラマ版「不能犯」第1話お試し視聴版
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2.映画「不能犯」主要登場人物・キャスト

宇相吹正(松坂桃李)
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引用:映画『不能犯』(2月1日(木)公開)本予告 - YouTube
2017年は、「キセキ」「彼女がその名を知らない鳥たち」「ユリゴコロ」など、出演作はこれまでの「真面目一辺倒」な優等生キャラとはかけ離れた役を意識的に選ぶことにより、役者としての幅を広げてきました。本作でもまた、薄気味悪い笑顔が印象的な、人間離れしたダークヒーローを好演していました。原作キャラのシリアスな一面をしっかりと表現できていたと思います。

多田友子(沢尻エリカ)
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引用:映画『不能犯』(2月1日(木)公開)本予告 - YouTube
原作では真っ直ぐで熱血男性キャラだった多田は、映画化にあたりクールな女性キャラへと置き換えられました。黒髪ロングのキャラが、矢田亜希子と丸かぶりになったこともあり、この設定変更が上手く機能したかどうかは疑問ですが、映画作品では、「新宿スワン」(2015)以来、実に3年ぶりの登場となり、それなりに新鮮味が感じられました。

百々瀬麻雄(新田真剣佑)f:id:hisatsugu79:20180207011742j:plain
引用:映画『不能犯』(2月1日(木)公開)本予告 - YouTube
昨年は「チアダン」「ピーチガール」等、若年者女性向けの映画で人気をつかむと、夏には「ジョジョの奇妙な冒険第1章」など若者向け夏映画にも出演。2018年は、本作のあと、ハリウッド作品「パシフィックリム・アップライジング」他、「ちはやふるー結びー」「OVER DRIVEオーバードライブ」と上期だけであと3作品への出演が決まるなど、飛ぶ鳥を落とす勢い。北村匠海や村上虹郎らとともに、今一番要注目の若手俳優であることは間違いありません。

川端タケル(間宮祥太朗)f:id:hisatsugu79:20180207011753j:plain
引用:映画『不能犯』(2月1日(木)公開)本予告 - YouTube
昨年秋、コアな映画ファンに衝撃を与えた映画「全員死刑」で初主演を果たした他、「トリガール」「帝一の国」でもそれぞれ個性的な役柄を務め、独特の存在感を放っていた間宮祥太朗。今作では、狂気を内側に秘めた元不良少年という、微妙に難しそうな役を好演。しかしいつ見ても、玉山鉄二と見分けがつかないのは自分だけでしょうか・・・。

その他、クライマックスまでオムニバス形式に近い形でストーリーが進行していくため、非常に多数のキャストが出演。安田顕、小林稔侍、矢田亜希子、真野恵里菜他、豪華な共演陣も見どころです。

3.途中までの簡単なあらすじ

ここ最近、東京で次々と起こる怪死事件。その事件現場では、全身黒スーツに身を包んだ謎の男が目撃されていた。その男の名は、宇相吹 正(うそぶきただし)という。

宇相吹こそが、現在インターネット上のSNSや掲示板で話題となっている男だった。殺して欲しい相手の理由と連絡先を書いた紙を、とある都会の電話ボックスの裏側に貼り付けておけば、無料で殺しを請け負ってくれるのだという。ただし、殺したい気持ちが純粋でない場合は、人を呪わば穴二つ。依頼人にもそれなりの覚悟が必要であるーーー。

警察は神出鬼没の宇相吹に手も足も出ないでいた。なぜなら、彼は、確かに犯罪を意図して行動を起こしているのだが、彼自身は全く物理的に手を下していないのだ。相手が、勝手に病死・自殺等の変死を遂げてしまう。宇相吹は、「不能犯」だったのだ。

杉並北警察署の若き正義感あふれる女刑事、多田友子と、その後輩である新田真剣佑は、必至に宇相吹の動きを掴み、犯行を阻止しようと奔走するが、次々に犠牲者は増える一方だった。

そして、ある日、かつて自分が更生させた川端タケルが職人として働いている馴染みの寿司屋でしこたま食べた夜、酔ってタクシーを降りた路上で、多田は宇相吹と1対1で対面することになる。宇相吹は、多田にマインドコントロールを仕掛けようと赤い目を光らせたが、多田は宇相吹の催眠にかからなかった。驚いた宇相吹は、それ以後もたびたび多田を犯行現場に巻き込み、多田に「自分を殺せ」と挑発するのだった。

同僚2名を殉職で失った他、直属の部下である百々瀬までも連続爆弾事件で意識不明の重体となったことで、次第に追い詰められていく多田。そんな中、連続爆弾事件の犯人と、宇相吹がつながり、多田は宇相吹との最終対決に臨むことになるのだったーーー。

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4.映画本編のレビュー(感想・評価)

映画化が早すぎた?人物描写やテーマ性が乏しい中途半端な作品に・・・

本作は、マンガ原作1~3巻から主なエピソードをピックアップして、独立した5つのストーリーを約2時間で完結するようにつないだオムニバス形式のドラマとなっています。

この中で、松坂桃李扮する宇相吹正は、とある都内の電話ボックス内のメモを介して、無料で殺人依頼を請け負う暗殺者です。マインドコントロールとプラシーボ効果で、狙ったターゲットを変死させる特殊スキルは面白いですし、ターゲットのみならず、依頼人の心の闇を暴き出し、「人を呪わば穴二つ」的に自滅させるアンチヒーローブリも非常にユニークです。このように、原作の持つキャラ設定・ストーリーの特徴はしっかり盛り込んできているんですよね。

ただし、「仏作って魂入れず」ではないですが、全てにおいて原作を表面的にサラーッと流して終わっちゃったかなと言う感じ。ちょっと映画化のタイミングが早すぎたんじゃないでしょうか。

早々に映画化権を取得し、作品製作にとりかかるのはよかったのですが、明らかにベースとなる原作のコンテンツ不足による、世界観の掘り下げ方が甘かったように感じます。

見終わった後、鑑賞者の心に深く響く何かが、まるでないのです。決定的に「これがだめだ!」という大きな欠点があるわけではないのですが、映像表現、役者の演技、脚本、美術など、全ての要素でまんべんなく物足りない点がある感じなのです。

まず、映像表現面で言うと、今作が大規模公開作品として、PG12指定内での表現しか許されなかったことが大きく影響してそうです。原作マンガの持つ青年誌レベルの過激なバイオレンス・性的表現は、各場面において大きくトーンダウン。

これまで白石監督が低予算のホラー系、スプラッター系映画で編み出してきたノウハウはもちろん、監督が得意とするPOV視点でのリアルなカメラワークまで封印されています。ここは、できればR-15指定でもっとコアな表現を追求してほしかったです。

さらに、ストーリー全般においても、ただでさえまだ世界観が確立していない、コミック1巻~3巻あたりを抜粋するのみで、各キャラクターの内面や心情がほとんど掘り下げられていないんですよね。

たとえば、宇相吹について。なぜ、宇相吹はターゲットを殺すのか?多田だけが、なぜ宇相吹のマインドコントロールにかからないのか?という基本的な疑問には一切応えてくれません。その割りに、原作で時折垣間見える宇相吹のコミカルな一面は意図的に排除されているため、キャラが非常に平板になっています。

また、最後まで一方的に宇相吹正が事件を引っ掻き回すだけで、エンドロールまで何一つ問題が解決していないし、映画を通じて成長したキャラも見当たりません。こんな状態で、宇相吹に向かって「私は希望で、あんたを殺す!」と叫んだところで、言葉だけが上滑りしていくだけでしょう・・・。

また、ストーリーに引きずられるようにして、役者の演技レベルも類型的で凡庸な調子になってしまっています。

特に気になったのは、警察署内のメンバーの演技です。宇相吹の殺人計画に巻き込まれ、一人ずつ同僚が死んだり重症を負ったりしていなくなっていくのに、沢尻エリカ扮する多田にほとんど緊迫感や絶望感がなく、ずっと喫煙所でダルそうにタバコをふかしているだけなのはいかがなものでしょうか?一応、宇相吹のマインドコントロールも無効にさせてしまうほど真っ直ぐな正義感を持つキャラであるという設定のはずなんですが、ぶっちゃけ署内で一番心に闇を抱えてそうなキャラに見えたんですが・・・

また、上司役のテット・ワダ(エグザイル系かと思ったら違った!)、若手刑事役の菅谷哲也の棒演技ぶりには閉口させられました。どこから連れてきたんですかね、この人達・・・。(製作委員会の横槍?事務所との何かのバーター??

主演・松坂桃李の役作りはさすがだった

このように、いろいろ演出面では不満もありましたが、何人かの俳優の演技には見るべきものがありました。

まず、主演・松坂桃李の役作りは、原作の宇相吹正がもつシリアスな一面を最大限引き出すことに成功しており、要所要所で映画をしっかり引き締めてくれていました。2種類使い分けられた「ニタリ」と不敵な笑みを浮かべるシーンは、マンガ原作での宇相吹のイメージにぴったりでした。

脇役陣では、小林稔侍の怪しい演技が最高でした。もちろんミスリード的なセリフ・演出もあるのですが、サイコパスすれすれの気持ち悪さをしっかり表現してくれたベテランの名演技でした。

もう一人挙げるなら、真野恵里菜の安定した演技力です。今作では嫉妬に狂い、闇落ちする娼婦役でしたが、安心して見ていられる好演でした。2017年「君と100回目の恋」で主演陣が揃いも揃って棒演技となる中、一人気を吐いていた孤軍奮闘ぶりを思い出しました。

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5.映画「不能犯」に関する7つの疑問点~伏線・設定を徹底考察!(※強くネタバレが入ります)~

ここでは、ストーリーや設定について、本作をより楽しむために要点となりそうなポイントについて、考察や情報をまとめています。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。

疑問点1:映画「不能犯」の意味とは?

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引用:映画『不能犯』(2月1日(木)公開)本予告 - YouTube

明確に犯罪を意図した行為であっても、実現が不可能ならば、罪に問われないことを、「不能犯」と言います。

具体的な例で説明すると、Aさんが深夜の神社で殺したい相手、Bさんを思って五寸釘を打ち付けて呪った結果、Bさんが無事(?)心不全で死亡したとします。この時、Aさんは明確にBさんを殺したいと思って行動を起こしましたが、常識的に考えて、因果関係が成り立たず、Aさんの呪詛が、Bさんの心不全につながったという証明ができないため、Aさんは無罪となるのです。

映画内では、宇相吹は相手をマインドコントロールで操り、具体的な凶器を一切使わず、思い込みの力だけで相手を殺害していましたね。これでは、罪に問うことができない、というわけです。

疑問点2:宇相吹正の正体とは?彼は一体何者なのか?

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引用:映画『不能犯』(2月1日(木)公開)本予告 - YouTube

実は、宇相吹正の正体は、マンガ原作でもほとんど明かされていません。なぜマインドコントロールで人を殺す依頼を受け続けているのか?今の宇相吹正ができあがるまで、どんなバックストーリーが存在するのか?そのあたりは、原作でも一切謎のまま読者は焦らされているのです(笑)

ただし、一つだけわかっている大きなポイントとしては、「宇相吹は人間ではない」ことです。これは、つい最近、原作者が明言しました。(グランドジャンプ・2018年第5号の鼎談より)

マンガ原作では、普通に人間同様、安い家賃でたくさんの猫と一緒にアパートに住んでいますが、映画では廃虚で一人暮らしている設定になっていましたね。

では、宇相吹はなぜ無料で殺人依頼を引き受けるのでしょうか?

それは、人間が、愚かな生き物なのか、強い生き物なのか、という哲学的な問いを確かめるためなのです。殺しを通じて、人間の「愚かさ」を観察する一方で、自身のマインドコントロールが利かない強い人間に殺されることで、人間の「強さ」を観てみたいと願っているのです。そのため、執拗に多田を付け回し、多田に自らに対して刃を向けるよう挑発しているのですね。

疑問点3:宇相吹への殺しの依頼をキャンセルする方法は?

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引用:映画『不能犯』(2月1日(木)公開)本予告 - YouTube

一旦、宇相吹への殺しの依頼をかけたら、ターゲットの致死率はほぼ100%です。ただし、厳密には2つの方法で、殺しの依頼をキャンセルすることができるのです。

1つ目は、宇相吹を殺害するか、致命傷を与えることです。宇相吹の「赤い目」で魅入られたターゲットは、マインドコントロールをかけられて、幻影に苦しみながら死亡するわけですから、これを解除するには、第三者が宇相吹に対して肉体的なダメージを与えるしかないのですね。

もう1つは、原作でしか明かされていないのですが、「依頼人を殺すこと」です。宇相吹のポリシーとして、依頼人がいない殺しはやらないのです。

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引用:マンガ原作「不能犯」2巻 P191より

宇相吹は、ターゲットの殺害以上に、殺害実行後の依頼人の反応を見ることで、依頼人の中に宿る「闇」が生み出す人間の脆さを観察しているのでしょう。だから、依頼人が先に死亡してしまったら、宇相吹の中で殺害に対する興味が薄れていくのかもしれません。

疑問点4:劇中で宇相吹に殺された5人のターゲットを整理してみる

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引用:映画『不能犯』(2月1日(木)公開)本予告 - YouTube

本作では、オムニバス形式で多数の被害者が宇相吹のターゲットになって死亡します。ここで、映画内で宇相吹に殺害された全ケースを、簡単にまとめて振り返っておきたいと思います。

1人目のターゲット:木島功
闇金経営者。期日までに金を返せない客には、強制的に生命保険に加入させた上、命と引き換えに返済させる極悪人。木島から金を借り、返せなくなった川端タケルが殺害を依頼。スズメバチの大群に刺される幻影を見て、アナフィラキシーショックで死亡。

2人目のターゲット:鳥森広志
鳥森の近隣に住む羽根田健が、鳥森の一見、異常に見えるストーカー行動に耐えかねて、宇相吹に殺害を依頼。タバコの吸殻入りペットボトルの水を飲み干したと思い込み、急性のニコチン中毒のような症状で死亡。死亡後、鳥森は、実は羽根田の妻のドラッグ中毒を諌めようとしていたことが判明。事実を知り、カッとなった羽根田は、妻と刺し違えて死亡する。

3人目のターゲット:夜目美冬
杉並北署の非キャリア組、鑑識の河津村宏が、過去に夜目の過酷な取り調べにより、冤罪を苦にして拘置所の独房内で自殺した息子の敵を取るため、宇相吹に夜目の殺害を依頼。別件の重要参考人として杉並北署へ連行された宇相吹だったが、夜目から取り調べを受けた際に、逆に夜目に対してマインドコントロールをかける。夜目は、自宅での入浴時、錯乱状態になり自ら手首を切ってショック死。

4人目のターゲット:夢原理沙
父母が離婚した際、父側に引き取られた理沙の妹・木村優が殺害を依頼。働かない父に代わり、不本意ながら風俗で生計を立てる優に対して、何一つ不自由ない優雅な生活を送っていた理沙。医者の息子との婚約も控えていた。結婚式を前に、久々に理沙に会いに行った際、無視されたことに腹を立てて、積年の妬みを宇相吹への殺害依頼としてぶつける。依頼事項は、理沙の夫を理沙の手で殺させること。しかし、殺害実行後、理沙からの謝罪の手紙を読んだ優は、首をつって自殺する。

5人目のターゲット:川端タケル
タケルが働く寿司屋の先輩職人、櫻井俊雄が殺害を依頼。後から入ったタケルが自らより大将に重く取り立てられる現状に焦り、タケルに嫉妬したため。表の顔は寿司職人だったが、裏の顔は爆弾魔として連続爆破事件の犯人だったタケルは、自らを少年院から更生させてくれた多田を病院内で誘拐したが、そこへ宇相吹が現れる。タケルは、宇相吹に生きたまま火をつけられたと思い込み、全身火傷のような症状で死亡。

疑問点5:ラストシーン・結末の考察~続編はあるのか?

本作のラストシーンは、連続爆破事件が一段落し、宇相吹が関わったと思われる別件の処理中に宇相吹と多田が、長い階段の上で1対1で対決するシーンで終わります。上述しましたが、主人公や杉並北署のメンバーは、本作を通じて2名の殉職者と1名の重傷者を出しますが、捜査には最後まで特に進展は見られませんでした。

ドラマ版と合わせて、今回の映画公開で、原作の第1巻~第3巻までは消化しましたが、物語が本格的に動き出す4巻以降は、全く映像化が手付かずの状態となりました。

今回の興収次第かとは思いますが、コンテンツ的には十分第2作目を作れるだけの資料はすでに収まっています。展開次第では、「不能犯2」の製作もありかもしれませんね。

疑問点6:マンガ版原作との主な違いとは?

・マンガ原作では、多田は男性キャラ、百々瀬は女性キャラと、男女が逆になっている。性格も少しずつ違っている。

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引用:マンガ原作「不能犯」5巻 P11より

・宇相吹は、マンガ原作では全て「無料」ではなく、「有料」で殺害依頼を受けることも多い。※少なくとも、大人からはちゃんとお金をもらっているような描写が見られる

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引用:マンガ原作「不能犯」7巻 P59より

・マンガ原作では、宇相吹のコミカルな一面も描かれる。私生活では、飼い猫のエサ代が生活を圧迫し、常に金欠で家賃を滞納したり、依頼がない日はやることがなくて大抵グータラしているか、ベンチや自宅は野良猫に囲まれている。また、無類の牛乳好きである。

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引用:マンガ原作「不能犯」3巻 P66より

・原作では、保坂篤史という興信所の探偵が宇相吹に興味を持ち、警察・保坂・宇相吹の3つどもえでストーリーが進行する時期がある。(※最終的に保坂は破滅へと向かう)

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引用:マンガ原作「不能犯」3巻 P175より

・マンガ原作では、殺された夜目美冬(矢田亜希子)の2つ上の姉、「結夏」が準レギュラーとして登場し、心理カウンセラーとして、杉並北署の捜査に協力するようになる。

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引用:マンガ原作「不能犯」5巻 P26より

疑問点7:dTVで配信されているドラマ版とは?

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時系列的には、映画の前日譚にあたるドラマ版「不能犯」。映画同様、原作マンガの第1巻~第3巻までのエピソードから抽出されたストーリーで、オムニバス形式で全5話が配信されています。変わってドラマ版では、監修に回った白石晃士監督に代わり、若手の内藤瑛亮監督がメガホンを取りました。

劇伴音楽や美術・セットなどは共通ですが、若干雰囲気が違っています。一番目立った違いとしては、映画版よりも、直接的な性的表現やバイオレンス描写が強調されていることです。特に第1話でのゲストである元風俗嬢のインスタグラマーを演じた元AKB48の永尾まりやなどは、迫真の体当たり演技でした。

恐らく、映画版よりも全体的に見応えがあるのではないでしょうか。ちなみに、ドラマ版では、映画版の冒頭5分で宇相吹に「スズメバチ」で殺害される木島金融が、複数のストーリーに渡って、話の展開のカギを握っています。

▶ドラマ版「不能犯」徹底解説動画
※画像をクリックすると動画がスタートします


動画がスタートしない方はこちらをクリック

 

ドラマ版全5話は、現在dTVにて独占限定配信中。ちなみに、僕はHulu、U-NEXT、Netflix、Amazonプライム、TSUTAYAディスカスと現在すでに5社加入しているため、dTVに関しては、どうしても見たいコンテンツが出てきた場合のみ、単月だけ加入するようにしています。(今回、不能犯ドラマ版だけのために2月度単月で加入中)

1ヶ月たった540円と格安で加入できますし、初めて申し込む人は、最初の31日間は無料加入できます。「不能犯」の他にも120,000タイトルの品揃えがありますので、月額課金分は十分に元が取れます。無料でお試し加入して、映画以上に見応えのある「不能犯」ドラマシリーズをチェックしてみてはいかがでしょうか?

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6.まとめ

本作は、登場人物たちの心情描写が雑だったり、演技力に疑問符がつく役者がいたりと、やや粗も目立ちましたが、意外性あふれるストーリーや、PG12の限界まで頑張ったバイオレンス描写・ホラー描写、主演・松坂桃李の役作りはなかなかの見どころがありました。松坂桃李や新田真剣佑、間宮祥太朗といった若い主演陣のファンなら、観ておいて損はないかなと思います。

それではまた。
かるび

映画をより楽しむためのおすすめ関連グッズ・書籍など

映画パンフレットはファン向けに写真満載!

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本作は、恐らく松坂桃李、新田真剣佑、間宮祥太朗といった、若手俳優を楽しみに見に来る人も多いかと思います。パンフレットも、映画のワンシーンを収めた写真ページが大増量、非常に充実していました。特に、松坂桃李ファンにはおすすめできそうな内容になっています。

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調べてみたら、ネット上でも買えるようになっているようなので、購入リンクを置いておきますね。

面白さが加速中!原作マンガ「不能犯」

集英社のグランドジャンプで不定期連載されており、現在、単行本第7巻まで発売されているマンガ原作。起伏に富んだ、意外性あふれるストーリーはそのままに、映画・ドラマ版に比べると、より過激で「大人」な描写も多い原作。僕は断然「原作派」です(笑)特に、5巻あたりから、1話完結でのオムニバス的なストーリーを脱し、次第に宇相吹VS多田の対決を軸に、ストーリーがいよいよクライマックスに向けて動き出している感じなので、今後の展開に目が離せません。宇相吹が何のために殺人を続けているのか、その動機の完全解明や過去のストーリーもそろそろ明らかになるんじゃないかと期待したいです!

映画ノベライズ小説「不能犯」

映画本編のシナリオに忠実に書き起こされた映画ノベライズ作品。映像では説明しきれない、各登場人物の微細な心情描写も入っており、映画とはまた違った視点で作品を楽しめると思います。

オリジナルスピンオフ小説「不能犯」

発売は2月下旬とのことですが、マンガ・映画・ドラマとは違う、完全オリジナルストーリーとしての発売となります。原作者、宮月新氏が全面的に製作に関わっているので、これは期待できそうです。果たして、宇相吹の正体は明らかになるのか?宇相吹と多田の対決に新たな進展があるのか?要注目の一冊です。