【2019年12月3日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。
2月16日に公開されたミュージカル映画「グレイテスト・ショーマン」を見てきました。「X-MEN」シリーズを卒業したヒュー・ジャックマンが、ライフワークとして進めていた肝いりの映画企画です。構想から苦節8年、日本では全米公開に遅れること3ヶ月、ようやく上映開始となりました。
早速ですが、感想・考察等を織り交ぜた映画レビューを書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。
- 1.映画「グレイテストショーマン」の予告動画・基本情報
- 2.主要登場人物・キャスト
- 3.途中までの簡単なあらすじ
- 4.本編についてのレビュー(感想・評価)
- 5.映画「グレイテストショーマン」に関する8つの疑問点~伏線・設定を徹底考察!(※強くネタバレが入ります)~
- 6.まとめ
- 映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
1.映画「グレイテストショーマン」の予告動画・基本情報
【監督】マイケル・グレイシー
【脚本】ビル・コンドン
【配給】20世紀FOX
【時間】105分
引用:映画『グレイテスト・ショーマン』This is Meダンス・チュートリアル動画
本作で監督を務めたのは、これが初監督作品となるマイケル・グレイシー。元々CM製作やMV作品で実績を積んできた人です。脚本が完成後、本作を自身の肝いり作品として企画を進めてきたヒュー・ジャックマンが、かつてCM制作現場で一緒に仕事をしたことがあるマイケル・グレーシーに白羽の矢を立てたのでした。
最終的な編集段階と、マイナーな再撮影作業では製作総指揮に入っているジェームズ・マンゴールド(「LOGAN」「ウルヴァリン:SAMURAI」)の助力を仰いだようですが、初監督作品で数十億円クラスの予算規模で制作されたブロックバスター作品を、一つの確かな形に仕上げたその力量には確かなものがあります。
引用:RottenTomatoesより(2018年2月16日時点)
ところで、本作はアメリカの大手評価サイト「RottenTomatoes」での批評家ポイントが低く、ネットにはあからさまな酷評も出回っていました。主な原因は、ストーリー部分での浅めの描写や、史実とかなり食い違うP・T・バーナムの美化された経歴に対する不満であろうと推察されます。
全米公開初週で興収1000万ドルを下回るなど、大コケするかに見えましたが、その後口コミで動員が伸び、客足は回復。2月中旬時点で全世界興収は300億円を突破するなど、粘ってロングランヒット中です。映画のサウンドトラックが全米ビルボードNo.1になるなど、批評家の低評価を跳ね返し、オーディエンスの反応は非常に良好です。
日本でも、批評家の評価は確かに割れましたが、動員・興収は順調に伸びており、公開1ヶ月を経過した時点で2018年では興収30億円目前に。やっぱり日本ではミュージカル映画は強いですね。
2.主要登場人物・キャスト
P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)
引用:The Greatest Showman | Official Trailer | 20th Century FOX
2009年以来、約8年かけて進めてきた映画製作の中で、読み込んだP・T・バーナムの伝記本は全部で30冊以上に上るのだとか。本作では、「X-MEN」シリーズのウルヴァリン役では見たことのない晴れやかな、人の良さそうな表情全開で、なんだか楽しそうでした。ちなみに、元々ミュージカル出身で俳優となったため、歌唱力はしっかりしています。
チャリティ・バーナム(ミシェル・ウイリアムズ)
引用:The Greatest Showman | Official Trailer | 20th Century FOX
まず映画冒頭でのヒュー・ジャックマンとのデュエットに、「あら、この人歌えるのね・・・」と見くびっていました。過去4度、「ブロークバック・マウンテン」(2005)、「ブルーバレンタイン」(2010)、「マリリン、7日間の恋」(2011)、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016)とアカデミー賞にノミネートされるなど、演技には定評があります。本作は若干アカデミー賞レースへ色気を出していたのですが、今年はノミネートならず。残念!
フィリップ・カーライル(ザック・エフロン)
引用:The Greatest Showman | Official Trailer | 20th Century FOX
TVムービー「ハイスクール・ミュージカル」シリーズに出演するなど、歌唱力には元々定評があります。「ダーティ・グランパ」(2016)、「ベイウォッチ」(2017)など、近年はそこそこの話題作には継続して出演を重ねているものの、もう一つブレイクできずにいた感がありました。本作での経験をベースに、ブロードウェイへの進出計画もあるのだとか。
アン・ウィーラー(ゼンデイヤ)
引用:The Greatest Showman | Official Trailer | 20th Century FOX
「スパイダーマンホームカミング」(2017)で謎のクラスメイト、ミシェル役を務めたことで昨年映画ファンの間で話題となりました。本作での存在感はずば抜けており、歌・演技・踊りとなんでもこなせる器用さもあり、次世代トップ女優へと上り詰めそうな予感がします。本作が間違いなく出世作になりそう。
ジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン)
引用:映画『グレイテスト・ショーマン』 Imagination Trailer - YouTube
スウェーデンからハリウッドへと進出して大成功を収めている俳優の一人。「ガール・オン・ザ・トレイン」(2016)でセクシーな人妻役、「ライフ」(2017)では宇宙飛行士、「ミッションインポッシブル/ローグ・ネイション」(2015)では、二重スパイと、様々な役をこなせる古風な顔立ちの美人女優。
レディ・ルッツ(キアラ・セトル)
引用:The Greatest Showman | Official Trailer | 20th Century FOX
サーカス団の中で、ヒゲの生えた女性役で出演。本作のハイライトシーンである「This is Me」のメイン・ヴォーカルとして力強く歌い上げ、一躍注目を浴びました。映画は、「幸せをつかむ歌」(2015)に続いて2本めの出演。なお、今回の日本公開に合わせて、来日した際に、レッドカーペットや朝の情報番組でもその迫力ある歌声を披露してくれました。寒さに震える中、物凄い声量で歌い上げる姿はさすがです。
3.途中までの簡単なあらすじ
19世紀中頃のアメリカ・コネチカット州で貧しい仕立て屋の息子として育ったP・T・バーナムは、父をなくしてから鉄道会社に就職し、幼馴染のチャリティと結婚した。
その後、ニューヨークに移住した二人の間には、二人の娘が生まれた。精神的には満たされた生活だったが、バーナムの仕事は安定せず、暮らし向きは上がらなかった。そんな折、バーナムの勤務先の商社が、保有する船舶がアジアで沈没したことにより倒産してしまう。追い込まれたバーナムは、子供と家族を幸せにしたい一身で、起死回生の奇抜なビジネスプランを考えついた。
銀行から借りた資金で、蝋人形や珍しい剥製などを展示する「バーナム博物館」をオープンさせたバーナムだったが、家族総出での広告活動の甲斐もなく、閑古鳥の状態が続く。「動かない死体より、生きていて動く物が見たい」と何気ない子供の一言をきっかけに、バーナムは新しいビジネスプランを思いつく。
それは、変わった外見や特殊能力を持つ人達を集めて、派手なショーを行うプランだった。小人や大男、ヒゲの生えた女、曲芸が得意な兄妹など、各地から人材を集めたバーナムは、歌と踊りで徴収を楽しませるサーカス興行を始めたのだった。これが見事に大当たり。バーナムは、家族と新たな洋館へ引っ越し、長女を念願であるバレエ教室にも通わせる余裕ができた。
さらに、新たなビジネスパートナーとしてフィリップを加えた後、バーナムはフィリップの人脈を活用してイギリスヘ渡り、エリザベス女王への謁見も実現させた。イギリスでは、当時ヨーロッパでNo.1だと言われていた「スウェーデンのナイチンゲール」ジェニー・リンドと出会い、彼女のアメリカツアーのプロデュースにも成功した。全ては、彼と彼のサーカス興行が、上流階級に認められたいための行動だった。
こうして、さらにバーナムの名声は上がっていったが、一方で彼は原点であるサーカス興行や当初からの仲間たちに対して冷たい態度を取るようになっていった。バーナムは、サーカス興行をフィリップに任せ、自らは家庭すら顧みず、ジェニー・リンドと二人三脚で全米ツアーへ出かけてしまう。
しかし、ジェニー・リンドの自らに対する好意に応えることができず、ジェニーはツアー途中でアメリカ興行を打ち切ってしまう。そんな折、留守にしていたサーカスでは、団員と抗議グループの間のいざこざから、ビルが火事で全焼し、フィリップは意識を失う大怪我をしてしまう。悪いことは重なるもので、失意のまま自宅へ帰ったバーナムは、長年連れ添った妻、チャリティにも愛想を尽かされて家出されてしまった。ジェニー・リンドと公衆の面前でキスをした写真が新聞でスクープされてしまい、その記事を読んでしまったのだ。
失意に沈むバーナムは、一人行きつけのバーで酒浸りとなっていた。果たしてバーナムは、家族とサーカスを取り戻し、幸せな日々を再び迎えることができるのかーーー。
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4.本編についてのレビュー(感想・評価)
多少のアラは「楽曲の良さ」が全て吹き飛ばした!
まず、見終わってつくづく感じたのが、ミュージカル映画っていうのは「楽曲」の良さが何よりも大切なんだなという至極当たり前の事実です。
アメリカの評論家が辛口採点をした通り、冷静に作品を振り返ってみると、ストーリーについてはかなりのツッコミどころがあります。史実を美化して描いている、伏線が投げっぱなしで終わっている、各登場人物の描写が薄い・・・等々、一つ一つ挙げだしたらキリがありません。
にも関わらず、105分経過してエンドロールを迎える頃には、その劇的な楽曲と華やかなダンスの前に、完全に心を奪われていました。「なんかいろいろツッコミどころあったけど、まぁ、いいか・・・」みたいな。前向きなフレーズとファンタジックな楽曲群に心地よく酔わせていただきました。歌の持つ力って、本当に大きいです。
ハリウッド俳優のレベルの高さ・層の厚さにも改めて嘆息
そして、もう一つ驚かされたのは、本作で出演した主役級の出演者たちのハイレベルなパフォーマンスです。本作はミュージカル映画なので、通常の演技に加え、確かな歌唱力、ダンスや曲芸スタントまで全部こなさなければならないという点で、難易度の高い演技が求められました。
にもかかわらず、レベッカ・ファーガソンを除く主演陣のほぼ全員が、ほぼ完璧に歌も踊りも演技もこなしていたことには本当に驚きです。(そういえば、去年見た「ラ・ラ・ランド」でも、主演を務めたライアン・ゴズリングが見せた超絶技巧なピアノの速弾きには心底驚かされました)
特に印象的だったのは、曲芸師のヒロイン、アンを演じたゼンデイヤの生き生きとした存在感です。ヒュー・ジャックマンも20世紀FOXのインタビューでその華のある存在感を絶賛していましたが、まさに天性のスター性と才能に恵まれた俳優だと思います。
とにかく、ミュージカルパートで踊っている時、どうしても自然に目がゼンデイヤに向いてしまうんですよね。「スパイダーマン・ホームカミング」でのミシェル役は、本人のポテンシャルを殺すような抑制的なキャラでしたが、本作で大化けした感じです。若干21歳ながら、演技力・高い身体能力・歌唱力を兼ね備えたすごい俳優が出てきました。今後大注目ですね。
映画「グレイテスト・ショーマン」は史実と違うから駄作なのか?
引用:The Greatest Showman | Official Trailer | 20th Century FOX
日本ではほとんど知名度のない無名なP・T・バーナムですが、アメリカでは産業革命期に大成功した実業家として、非常に有名な存在のようです。試しに、Amazonなどアメリカのネット書店を見てみました。日本では1冊も出版されていないP・T・バーナムの書籍が、洋書では100冊以上もヒットします。子供向けの偉人伝から、バーナム自ら手がけた自伝や自己啓発書など、関連書籍は本当に多数あります。
その自伝を幾つか読んでみると、映画内での明るくエネルギッシュなバーナムとは違う、ダークな一面が読み取れます。史実上のバーナムも、確かに個性的な生き方を貫いて、誰もが真似出来ない大成功を収めてはいます。しかし、幼児虐待・人権侵害スレスレのショーを行ったり、インチキまがいの人魚の死体?を展覧会に出したりと、2017年現在の価値尺度に照らして総括すると、モラルのネジが飛んでいるような、かなり許されざる行動も取ってきた人でもあるのです。「偉人」というより、なんでもありの「ダークヒーロー」「アンチヒーロー」的な立ち位置でしょうか。
にもかかわらず、本作では、バーナムが取った行動の「後ろ暗い」一面は極力カットされています。その代わり、アメリカンドリームを体現する「夢追い人」としての、バーナムの無邪気でひたむきな一面が強調され、各出来事の時系列を入れ替えた上でストーリーが再構成されていました。
恐らく、本作が、アメリカや英語圏の国々で映画評論家たちに不興を買った原因はここにあるのでしょう。ディズニー映画並みに徹底して脱臭・無害化されたバーナムの半生記を、流れるようにまとめた薄めのストーリー構成は、何百、何千と映画を見てきた目の肥えたプロの批評家には駄作に映ったのかもしれません。
ただ、本作は、確かに史実やストーリーの掘り下げに対して若干不誠実な割り切りは感じられるものの、バーナムが本来持っていた
・「既存の発想やしがらみにとらわれない自由なアイデア力」
・「ありのままで生きることへの絶対的な肯定」
・「自分の人生を自分で選び取る意志の力」
といった少年のような無邪気な一面を生き生きと描くことに100%注力した、という点では大いに評価されるべきだと思います。何事も徹底的にやりすぎるまでやっちゃう人だったんです。
若い時に犯したいくつかのミスにフォーカスするのではなく、彼がなぜアメリカン・ドリームを体現することができたのか、その行動や情熱のエッセンスをきれいに描き出そうと注力した作品が、本作「グレイテスト・ショーマン」だったのでしょう。
特に、若い人には何度も見て欲しい作品!
ストレートなメッセージや画面に横溢する正のエネルギーは、見ているだけで元気がもらえますから。僕はなんだかんだで、本作のあまりにストレートでキラキラしたメッセージ性はすでに眩しすぎると感じる年齢になってしまったのですが(笑)、もし20代の頃までにこの作品に出会っていたら、生涯大切にしたい作品になっただろうな・・・と思います。もう少し子供が大きくなって、字幕読めるようになったらDVD繰り返し見せよう・・・。
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5.映画「グレイテストショーマン」に関する8つの疑問点~伏線・設定を徹底考察!(※強くネタバレが入ります)~
ストーリーや設定について、本作をより深く理解するために要点となりそうなポイントについて、考察や情報をまとめています。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。
疑問点1:主人公「P・T・バーナム」とは誰なのか?
映画内のバーナムと実際の写真を比べてみる
引用:The Greatest Showman | Official Trailer | 20th Century FOX
P・T・バーナムは、映画オリジナルのキャラクターではなく、実在した人物です。19世紀のアメリカにおいて、ショービジネスの世界で大成功を収めた大実業家でした。映画では、彼の幼少児からサーカス興行師としての挫折と成功をきらびやかに描いていますが、サーカス興行で大成功してからも、政治家や禁酒運動家として活躍した時代の寵児でした。
疑問点2:タイトル「グレイテストショーマン」の意味とは?
引用:The Greatest Showman | The Greatest Soundtrack | 20th Century FOX
これは当然、本作での主人公であるP・T・バーナムを指している言葉です。1880年代に入って、60代になったバーナムが大規模なサーカス興行をはじめた時、その興行の宣伝文句が、「The Greatest Show on Earth」(地上最大のショウ)というタイトルだったことは、アメリカでは非常に知られているエピソードであるようです。ここから、本作のタイトルも名づけられたのですね。
疑問点3:バーナムはなぜ博物館を建てるお金を調達できたのか?
引用:The Greatest Showman | Official Trailer | 20th Century FOX
バーナムは、銀行に差し出す担保として、東南アジアの海中に沈んでしまった貿易船の証書を担保として差し出してお金を借りることに成功しました。よく考えたら、潰れた会社の自分の持ち物ですらない(なくなってしまった)船の証書を使っているわけですから、詐欺以外の何物でもないですね。
史実上でのバーナムは、こうした単純な詐欺行為ではなく、真正面から頭を使った粘り強い交渉を行い、博物館を手に入れたとされています。
疑問点4:なぜバーナムはしばしば抗議を受けたのか?
サーカスの建物の外に集まる抗議する人々
引用:The Greatest Showman | Official Trailer 2 [HD] | 20th Century FOX
バーナム博物館やバーナムのサーカスでは、しばしば建物の外に反対派が集まって抗議をしているシーンが描かれました。(最後は、乱闘騒ぎの末に火事も起きてしまう)これは、バーナムがこうした「奇形」(Freaks)の人々を見世物にすることで人権を侵害していることに対する抗議というよりは、「奇形」を集めて興行を行うことに対する差別的な不快感に根ざすものだったとみなしてよさそうです。
当時はまだ南北戦争前夜でもあり、奴隷制が公然と認められていた時代でしたので、現在、しばしばサーカス興行団体が受けるような、動物虐待や人権侵害と行った観点での抗議とはちょっと毛色が違う抗議だったわけです。
疑問点5:歌姫ジェニー・リンドとはどんな存在だったのか?恋愛関係になったのは事実なのか?
ジェニー・リンドを描いた実際の肖像画
引用:「P.T.Barnum for KIDS/Ian D Fraser」
バーナムがイギリスでスカウトしたジェニー・リンドは、実在した人物です。スウェーデン出身のソプラノオペラ歌手でした。当時、その美声は、ヨーロッパ一の人気を誇り、ジェニーはギャラのほぼ全てを恵まれない人々に寄付していたため、「スウェーデンのナイチンゲール」と言われていました。
バーナムの熱心な誘いに乗って、彼のプロデュースで回ったアメリカツアーは合計93回となり、バーナムは一晩のギャラに毎回超破格の1000ドルを支払っていました。(それでもボロ儲けだった)
劇中では、バーナムがジェニー・リンドの誘惑を断り、それに腹を立てたジェニーが、その日を境にツアーをキャンセルしていましたが、実際の史実ではそのような事実はありませんでした。彼女には、実際にはドイツ人の夫がおり、ジェニーがバーナムのツアーを降りた理由は、バーナムのツアー運営方針に疑問を持ったからだと言われています。バーナムのプロデュースを外れ、自ら興行を主催するようになったジェニー・リンドは、その後も1年程度アメリカツアーを続け、ほぼ全てのギャラを寄付したそうです。
疑問点6:トム将軍は実在したの?キャストを演じるのは?
バーナムとトム将軍
引用:「P.T.Barnum for KIDS/Ian D Fraser」
本名をチャールズ・ストラットン、ステージネーム「トム将軍」。映画内では、バーナムがショーを立ち上げる時、真っ先に自宅へとスカウトへ赴いていましたが、彼は、史実においても実在する人物です。
映画では普通に成人した男性をサーカスへと採用していましたが、史実では、わずか4歳の時、トムを見世物としてスカウトし、ショーを行っていました。
映画内では、今年23歳となるサム・ハンフリーが演じています。彼は生まれつき骨格形成異常という先天性の病気にかかっているため、成人しても外見は子供と同じくらいの背丈しかありません。
しかし、このインタビューを聞く限り、彼は非常にしっかりとした、落ち着いた青年だなと思わされます。英語でのインタビュー動画ですが、字幕をつければ非常にわかりやすい英語ですので、なんとか理解できます。
疑問点7:ラストシーン・結末の考察~なぜゾウに乗って娘の発表会に現れたの?
事業に失敗し、本拠地を火事で失い、借金だけが残ったバーナムでしたが、それでも彼に残ったのは、古くからの仲間や家族との信頼・絆でした。
テント小屋で再スタートした最初のショーで、バーナムはフィリップにショーの責任者をゆずります。そして、自らは巨大なゾウに乗ってショーを抜け出し、バレエの発表会を行っている家族の元に駆けつけました。
引用:映画『グレイテスト・ショーマン』 Imagination Trailer - YouTube
夢と栄光を追い求めたバーナムが、最後にたどり着いたのは、自分が一番大切にしている人と大事な時間を過ごす、という当たり前の価値でした。家族との絆や最愛の人との愛情は、バーナムが貧乏時代に自らが手作りで製作したおもちゃで写しだした影絵のように、繊細で壊れやすく、光の強すぎる華やかなショービジネスの最前線では、しばしば見えなくなってしまうものなのかもしれません。
ところで、バーナムはなぜゾウに乗って会場に現れたのでしょうか?あくまでフィクションなので、なぜ?どうやって?と突っ込むだけ野暮なのかもしれません。
バーナムが連れてきた巨象「ジャンボ」
引用:「P.T.Barnum for KIDS/Ian D Fraser」
一つ言えるのは、これは、恐らく史実に対するオマージュ的表現だったのだろうということです。1881年、バーナムが再びテントやサーカス列車を使った大規模なサーカス興行を行った時、その目玉となる出し物が、「ジャンボ」という名前のゾウだったエピソードがあります。ラストシーンでの象のシーンは、史実へのちょっとした目配せとしててのファンタジー的演出だった、ということだろうと思われます。
大好きなお父さんが、ゾウに乗って現れたら、娘は大喜びですよね。ファンタジー色の強い自伝映画のラストに相応しい演出だったと思います。
疑問点8:P・T・バーナムのその後の人生は?
引用:The Greatest Showman | Official Trailer 2 [HD] | 20th Century FOX
映画「グレイテストショーマン」では、時系列を入れ替えたり・統合したりしてバーナムの半生が描かれました。しかし、実はまだこれでやっと半分くらいなのです。映画では省略されましたが、バーナムの人生には、以下のようなイベントがありました。
→映画内で何度もお酒を飲んでましたが、史実を完全に無視してます(笑)
・コネチカット州の州議員に立候補し、当選後4期にわたって任期を全うした。
・ブリッジポート市の市長を務めた。(1期2年)
・チャリティとの間には、4人の子供が生まれた。(映画では2人でしたが・・・)
・1874年に妻に先立たれ、2人目の妻、ナンシーと再婚した。
・彼が議員時代に推進した法案が、「避妊禁止法」であり、つい最近まで長期間の間、米国民のライフスタイルに大きく影響した法律だった。
・自伝や自己啓発本も多数出版されており、そのうち、「富を築く技術」は日本でも訳書が出版されている。(Kindleで安かったので購入してみたけど、現在でも通用する王道のビジネスノウハウ集でした/笑)
6.まとめ
正直なところ、ストーリーに関してはかなり雑なところや未回収のまま放置された伏線なども多い上、史実よりかなり行儀よく作りこまれたバーナムのキャラクターに、あれれっ?という感じでした。
しかし、楽曲の耳あたりの心地良さ、劇場の大画面で動き回るキレキレのダンス、そしてバーナムの二人の子供の可愛さの前に、「まぁいいか・・・細かいことは」と、途中からは目くじらを立てず、画面に没入してしまいました。歌の力って反則ですよね(笑)
アカデミー賞こそちょっと届かなそうですが、子供から大人まで幅広く安心してファンタジーの世界に身を委ねることのできる前向きな作品でした。僕も、あれこれツッコミつつも、何度も映画館に見に行くと思います!ぜひ、IMAXやドルビーアトモス等、音響の良い映画館の大画面で見ることをオススメします!
それではまた。
かるび
映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
絶対にお勧めしたい映画のサウンドトラック!
劇中で使われた全11曲が、ストーリー順に全て収められたサウンドトラック。発売後数週間を経て、口コミで人気が広がり、ビルボードでは映画のサントラとしては異例のアルバム部門第1位を獲得しています。
粒ぞろいの楽曲をぜひ自宅でも楽しんでみてください!僕は去年の12月に購入して、少なくともすえに50回くらいは聞いたと思います!
名シーンの写真が満載!思い出に映画パンフレットをぜひ!
僕は、毎回劇場に行くたびにどんな作品でもパンフレットを買うことにしています。
そして、本作のパンフレットはいいです!なぜなら、見返したくなる写真が沢山収められていたからです。映画内での名シーンを切り取った写真と、映画内で使われた楽曲の詳細な全曲解説が盛り込まれていました。あとで映画を振り返った時、思い出が蘇るような秀逸な構成です。
お勧めは、サントラとセットでの購入です!音楽を聞きながらパンフレットを見返すことで、映画館で味わった感動を追体験できます!
▼映画内での楽曲全11曲詳細解説ページ
▼ミュージカルシーンを中心に、名シーンの写真が満載!
調べてみたら、Amazon等で買えるようになっているみたいなので、リンクを置いておきますね。