【2018年3月28日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。
加山又造って知ってますか?キュビスムから琳派まで古今東西の様々な先人たちに学びつつ、最終的に到達した独自の絵画表現や、その斬新な制作手法が高く評価されている、現代日本画家の巨匠です。
僕も、展覧会でひと目見て気に入った作家さんで、展覧会会場で出展作品を見るたびに「いいなぁー」といつも思っていました。ただ、まだこの方は最近亡くなられたばかりとあって、ほとんどの会場で作品が「撮影禁止」となっており、SNSやブログで気軽に紹介するのが難しいのが残念といえば残念ではありました。
しかし!今度の「Re 又造」展では、出展される原画はもちろん、すべての作品がスマートフォン・携帯端末にて「撮影OK」なのです。(※フラッシュの使用不可)それに加えて、収蔵先から借用するのが難しい作品に関しても、最新技術で複製された陶板画をベースにして、体験型メディアアートとして、会場で再現されるという、非常に個性的な展覧会になりそうなのです。
3月14日、その全体像を発表する記者発表会が、展覧会場と同じビル内1Fの「SUBARU STAR SQUARE」で開催されました。取材させて頂けましたので、早速ですが、その内容を簡単に紹介したいと思います。
※なお、本エントリで使用した写真・画像は、予め主催者の許可を得て撮影・使用させていただいたものとなります。何卒ご了承下さい。
「Re 又造」展とは?その特色は?
加山又造(1998年/71歳)撮影:執行季信
「Re 又造」展は、その展覧会のタイトルからわかる通り、日本画家・加山又造の遺した作品や、作風の変遷を通じて、その画業と人生を振り返る展覧会です。
加山又造(1927-2004)は、生前から非常に人気の高かかった日本画家でした。小品から大型の屏風絵まで、様々なタイプの作品を手がけ、その代表作は主に各地の公立美術館に収蔵され、大切に扱われています。
記者発表会では、
日本の美術界100年に一人の天才と言われ、「伝統と革新」を作品制作の軸として日本の様式美に現代の革新的な手法を取り入れながら独自の表現を生み出した。
と紹介されていました。
このように、加山又造が偉大な画家であることは間違いないですが、ただそれだけに、展覧会をやろうとすると思わぬところで問題も発生するわけです。
現在、国内の公立美術館が主催する以外で、加山又造作品の代表作を一箇所に集め、大規模な回顧展を開催するのはほぼ不可能になっているのです。日本画は痛みやすく厳重な取り扱いが必要ですし、展覧会のために借用するのも法律的・手続き的にも非常に面倒なのですよね。
そこで、今回の展覧会では、原画至上主義にこだわらず、
「加山又造の世界観を現在の技で再現する」
という思い切ったコンセプトで、最新のデジタル複製技術、演出技術を援用して、様々なアーティスト・職人たちにより加山又造の作品を「再創造しよう」という展覧会になりました。
そのキーワードは、上記の3つ。
すなわち、「デジタル・アーカイブ」で記録されたデータを使って、劣化に強い「陶板」(やきもの)に複製画を焼き付け、映像や照明、音楽など、最新のデジタル演出技術を使ったインスタレーションで、加山又造の世界を再現しよう、ということですね。
▼登壇された加山由起氏
驚きなのが、この記者発表会で企画コンセプトを発表したプレゼンターが、現在、加山又造作品の著作権を保有する、加山由起氏(又造の孫にあたる方)から発表されたということ。いわば、加山又造公認の下、肝いりで進められた企画であるということです。
偉大な画家の遺族といえば、著作権の管理保護の観点から、どうしても保守的になりがちで、こういった斬新な企画に対しては、一般的に慎重な姿勢を取ることが多いもの。
にもかかわらず、遺族の方が自ら先頭に立って、このような大胆な企画を発案し、記者発表会の壇上でプレゼンされること自体、非常に斬新で素晴らしいと感じました。本展で加山又造や日本画の新しい魅力が、普段日本画を見たことがない層の人達に届けばいいなと思います。
ちなみに、「Re 又造」の「Re」は、
Remember:又造作品に近づく
Recreation:又造作品を再創造する
Remind:又造作品を通じて語り合い、考える
など、様々な意味が込められているそうです。
加山氏は「Re」というタイトルを、加山又造の「落款」(署名)から連想して思いついたそうです。面白いですよね。
▼「又造」が「Re」になった?
そして、写真撮影はすべてOKに!
まだ、亡くなって日が浅いこともあり、他の美術展などで作品が展示されていたとしても、写真撮影はNGであることが多い加山又造の作品。
しかし、今回の展覧会では、なんとスマホ・携帯での撮影がOKとなりました!驚きなのは、展示作品中、メディアアートや複製画が作品点数の約半数を占めるのですが、普通に原画も14点出展される中での「写真撮影OK」となったこと。
これは、他の美術展ではない大きな特色であり、加山又造ファンは全国各地から駆せ参じても抑えておきたいところです!!もちろん僕も行きますよ?!ガッツリ撮影してSNSで紹介しちゃいます!
3.展覧会の6つのみどころ~出展される主な作品と一緒に紹介~
今回の「Re 又造」展で出展される作品は、全30点。原画主体で構成される通常の回顧展とは違い、選びぬかれた代表作品が最新のデジタル技術とコラボすることで、非常に見どころが多くなっています。一つずつ、紹介していきますね。
見どころ1:最新の技術でデジタル複製された又造作品が「陶板画」で楽しめる!
まず、今回いくつかの大型作品は、生前に加山又造が自ら進めていた原画のデジタルアーカイブを使用して、やきもので作る「陶板画」という形で再現・展示されます。
そのラインナップがまた凄いんです。例えば、このあたり。
実際の再現度がどれくらい凄いかは、是非展覧会現地にてチェックしてみてくださいね!
▼華扇屏風 1966年 山種美術館蔵
▼千羽鶴 1988年 東京証券取引所蔵
▼風 1982年 個人蔵
見どころ2:又造作品が没入感のある体験型メディアアートに!
そして、今回会場へと搬入できない代表作の中から、複製画とメディアアートを組み合わせた大型インスタレーションも製作されます。原画製作時に加山又造が表現しようとした世界観が、部屋いっぱいを使って体感・没入できる作品に仕上がっているといいですね。
▼加山又造「おぼろ」(1986年 個人蔵)
これが、こんな感じになります。
▼加山又造「おぼろ」
(美術陶板+デジタル・映像作品/1986年 個人蔵)
▼加山又造「春秋波濤」(1966年 東京国立近代美術館蔵)
こちらは、原画が何層かのレイヤーに分かれ、3次元空間に投影される予定です。お客さんは、その中を行き来することで、原画の中に入り込んだような気分になれる、という仕掛けですね。こちらも楽しみ。
▼加山又造「春秋波濤」
(デジタル・映像作品/1966年 国立近代美術館蔵)
見どころ3:有名な2つの天井画を展覧会場に再現!
加山又造は、各地の寺社からの依頼で、大型の天井画も残しました。これら作品は、現地に行かないと基本的に見ることはできませんし、簡単に観覧できるわけでもありません。
そこで、今回加山又造が残した大型の天井画の中から、2点をピックアップして、実際に展示会場の天井にほぼ原寸大で再現しよう、という意欲的な企画も進められています。選ばれた作品はこちら。
▼加山又造「天龍寺 雲龍図」(1997年 天龍寺蔵)
▼加山又造「久遠寺 墨龍」(1984年 久遠寺蔵)
両方とも、寺社の天井に描かれるモチーフとしては定番の「龍」ですが、ちょうど「金」と「銀」の2つに分かれていますね。それぞれ、展覧会場ではどんな演出が待っているのかこちらも楽しみ。
見どころ4:もちろん、原画も14点出展されます!
大型のインスタレーション作品や天井画、陶板画といった複製作品だけでなく、「Re 又造」展では、ちゃんと原画も14点出展されます。
特に、記者発表会でプッシュされたのが、こちらの「猫」です。
加山又造は、シャム猫やヒマラヤ猫を数多く作品内で描きましたが、どれも横向きが多いんですよね。本作は、多数残された「猫」をテーマとした加山又造作品の中で、唯一「前を向いている」作品なので、貴重なのです!
是非、こういった作品もバシバシ撮影していってみてくださいね。
▼加山又造「猫」
その他、人気の高い代表作品・大作も原画で出展されてきます!
▼加山又造「倣北宋寒林雪山」(1992年 個人蔵)
中国・北宋時代の絵画にインスピレーションを受けて制作された作品。山中の急峻な造形や、林立する左右の木々のかたちに、初期の作風を残しているキビキビした冬の風景画。暗闇に映える雪山が荘厳そのものです。
▼加山又造「雪月花」(1979年 新喜楽蔵)
2018年、ついに国宝へと格上指定されることが決まった、室町時代の傑作「日月四季山水図屏風」に又造がインスパイアされて製作した大作。緑とピンクが鮮やかな春らしい作品です。
▼加山又造「月光波濤」(1979年 イセ文化財団蔵)
加山又造作品の中で、僕が一番好きな作品です。個人的には、厳しさと美しさが同居した加山又造の最高傑作かなと思っています。昨年、三越本店で開催された回顧展で見た原画は本当に素晴らしかった。
見どころ5:「黒い薔薇の裸婦」を女優・宮城夏鈴が実写化して再現!
▼加山又造「黒い薔薇の裸婦」(1976年 東京国立近代美術館蔵)
そして、面白かったのは、加山又造の中期の傑作「黒い薔薇の裸婦」の3D実写化作品の制作です。実際の作品は、展示を見てのお楽しみですが、記者発表会ではその制作風景と、モデルとなった歌手・女優の宮城夏鈴さんとメイクアップ・アーティストJIROさんのインタビューを聞くことができました。
みどころ6:スバルのラッピングカーも綺麗です!
今回の「Re 又造」展の斬新で画期的なコンセプトに賛同し、展覧会を特別協賛する株式会社SUBARUから、加山又造の絵画世界を表現した「OUTBACK」のラッピングカーが発表されました。
不思議と加山又造の「和」の絵画世界と、スバルの車、非常に相性が良い感じなのですよね。
前後左右からも撮ってみました。
会期中、エビススバルビルで展示されていますので、是非立ち寄ってチェックしてみてくださいね。
展覧会の予習にはこれ!テレビ番組・オススメ関連書籍を紹介!
TV東京が製作したイベント映像でまずは予習!
「Re 又造」展の主催社であるテレビ東京が、早速記者発表会の後に展覧会のプロモーション映像を作ってくれています。まずは、こちらで雰囲気を掴んでおくと良いですね。
展覧会前にチェックしたいTV番組
プロモーション映像だけでなく、テレビ東京系列にて、展覧会前にさらに2つの特集番組の放映が決定しました。こちらです。
「Re又造 MATAZO KAYAMA」特別番組「加山又造を巡る旅」
◯3月31日(土)夜10時~
美の巨人たち「加山又造 久遠寺『墨龍』」
両方共、「Re 又造」展の予習にぴったりなコンテンツになりそうです。しっかりビデオに録って何度も見返しておきたいですね。
加山又造の作品が映像や画集もあります!
今もきちんと絶版にならず、Amazonでも豊富な在庫が用意されている画集。代表作が網羅されています。
加山又造没後5年を記念して開催された展覧会と連動して制作されたDVD。加山又造の生涯を年代順に、関係者のインタビューや約70作品を紹介しています。加山又造の作品全容をしっかりチェックできる、クオリティの高いドキュメンタリーDVDでした。
まとめ
本展を、「宵山の持つ祝祭感」のように、カジュアルに、気軽に見て感じてもらえるような展覧会にしたいという、加山由起氏。最新のデジタル映像技術や、ラッピングカー、女優による実写化再現など、既成概念にとらわれない斬新なアイデア満載で加山又造作品を味わえる、見応えのある展示となりそうです。
展示期間もそれほど長くはないので、是非この機会を見逃さず、会場へ足を運んでみてくださいね。僕も初日に行く予定です!
それではまた。
かるび
展覧会開催情報
◯展覧会名
Re 又造 MATAZO KAYAMA
◯展覧会場・所在地
EBiS303 イベントホール
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-20-8 エビススバルビル3F
◯アクセス
・JR恵比寿駅東口から徒歩3分(約250m)
・地下鉄日比谷線恵比寿駅1番出口から徒歩4分
◯会期・開館時間
2018年4月11日(水)~5月5日(土・祝)
11時00分~20時00分(入館は閉館30分前まで)
※4月11日(水)は13時開館
※4月16日(月)は16時閉館
◯休館日
なし(※開催期間中無休)
◯観覧料
一般2000円(前売1800円)/学生1300円(前売1100円)
※小学生以下無料
※学生に関しては学生証の提示が必要
※障が者手帳等を提示の方とその付添者(1名)は無料
◯公式HP
・https://rematazo.tokyo
◯Twitter
https://twitter.com/Re19272004