【2018年3月25日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。
3月も中旬になり、いよいよ暖かくなってきましたね。今年も、ソメイヨシノの開花に向けて各地で桜にちなんだ様々なお花見イベントがあるようで、どれに行こうか今から本当に迷ってしまいます。(※ミーハーなのでお花見特集雑誌を買って、結局どれに行こうか目移りしまくっている)
東京でのアート関連でも、毎年東京国立博物館のイベント企画「博物館でお花見を」や、東京国立近代美術館「美術館の春まつり」、郷さくら美術館「第6回桜花賞展」など、「桜」に関する定番の企画展が毎年開催されています。
その中で、是非注目してみたいのが、山種美術館で6年ぶりの開催となった「桜」をテーマとしたオール日本画での企画展です。
2018年のタイトルは、「桜 さくら SAKURA 2018-美術館でお花見!-」です。タイトルにローマ字が入っているので、最近来館者が激増中の外国人観光客にも一発で何の展覧会なのかわかりますね。
さて、毎回ご厚意でブロガー向け内覧会にご招待頂いているのですが、今回の企画展は本当に素晴らしかった!タイトル通り、近代日本画の名手たちが描いた「桜」にちなんだ名作たちが華やかに展示室を飾っていました。
早速ですが、簡単に感想レポートを書いてみたいと思います。
※なお、本エントリで使用した写真は、予め主催者の許可を得て撮影・使用させていただいたものとなります。何卒ご了承下さい。
- 1.企画展「桜 さくら SAKURA 2018ー美術館でお花見!ー」展とは?
- 2.展覧会の3つのみどころと感想
- 3.特に気に入った作品をいくつか紹介!
- 4.展覧会の新作グッズや定番の和菓子も充実!
- 5.混雑状況と所要時間目安
- 6.まとめ
- 展覧会開催情報
1.企画展「桜 さくら SAKURA 2018ー美術館でお花見!ー」展とは?
もう、企画展のタイトルを見れば何の展覧会かすぐにわかりますね(笑)
本展は、山種美術館の保有する近代日本画を中心とした膨大なコレクションの中からセレクトされた、「桜」をテーマとした絵画が約60点展示されています。これを見て、美術館の中でお花見を楽しんじゃいましょう!という企画展ですね。
いや、これはすごかったです。
本展で展示されている作品は、歴史画・風俗画・物語絵巻・名所絵・風景画・花鳥画・花卉画まで、様々なジャンルの作品が並んでいます。一口に「桜がテーマです」と言っても、題材としての使われ方は、本当に様々なパターンがあるのですね。
▼桜の描かれ方は千差万別。作家の個性が楽しめる!
左上:守屋多々志「聴花(式子内親王)」(1980)/左下:菊池芳文「花鳥十二ヶ月」(1868-1918年頃)/右上:橋本明治「朝陽桜」(1970)/右下:小林古径「清姫のうち『入相桜』」(1930)全て部分
また、桜の描かれ方も多種多様で、それぞれの作品に画家の個性や美意識がしっかりと反映されており、日本画の奥深さも体感できる展覧会となりました。やっぱり、桜と日本画は相性抜群ですね。
2.展覧会の3つのみどころと感想
見どころ1:山種美術館が所蔵する代表的な「桜」作品が登場!
本展には、山種美術館が所蔵する、近代日本画を代表するような「桜」をテーマにした名品が多数出展されています。山種美術館が製作したオリジナルグッズに採用されたり、各種雑誌・書籍等で見たことのある作品も満載です。
もう何度も過去の企画展に登場している作品もあるとは思うのですが、僕のようにまだ日本画をしっかり見始めて日が浅い初心者には、非常にありがたい機会となりました。名作、しっかり堪能できます。
▼奥村土牛「醍醐」(1972)
まず、絶対チェックしておきたいのが、醍醐寺の桜を画面いっぱいに描いた、奥村土牛晩年の傑作「醍醐」です。醍醐寺は、豊臣秀吉も花見に出かけたという、京都屈指の桜の名所ですが、この絵を見て、「醍醐寺」に興味を持った、という人も多いのではないでしょうか。胡粉の白に何層も絵の具を塗り重ねたという労作です。このピンク色は本当に美しいので、是非実物を見て下さい!
続いては、こちら。
▼東山魁夷「春静」(1968)
京都の洛北・鷹ヶ峰の杉林に映える満開の桜を描いた東山魁夷の名作。山種美術館では、これ以外にも春夏秋冬それぞれの季節における京都を描いた魁夷の名作シリーズを保有しています。日本画ファンとしては、別の展覧会で是非コンプリートしてみたいものです。
もう一つだけ定番の名作を紹介しておきますね。それが、こちらの屏風絵。
▼土田麦僊「大原女」(1915)
本展のチラシにも選ばれた、京都画壇で大正~昭和初期に活躍した土田麦僊の描いた大傑作。緑色が意識的に多めに使われた画面や、朗らかな表情で働く女性たちの体型が、なんとなくゴーギャンに似ていますね。麦僊が1927年に描いた同名のタイトル「大原女」もかつてテレビの特集番組で取り上げられるなど、有名ですよね。花の描写には盛り上げ胡粉という技法が使われています。「骨身をけずる思い」で描いたという、麦僊の自信作です。
見どころ2:意外な名作がゴロゴロ!脱初心者にも最適!
山種美術館のコレクションの凄いところは、横山大観・上村松園・速水御舟・小林古径・奥村土牛といった有名どころだけでなく、それ以外の(今となっては知名度が低くなってしまった)レアな作家の作品も多数保有している点です。
今回のブロガー内覧会で山﨑館長に少しお話を伺ったのですが、「当時、山﨑種二(山種美術館創設者)が作者の生前に作品を収集した際は評価も高く、実力・知名度もあったのだろうけれど、作者の没後、残念ながら忘れ去られてしまったのだろう」と見解をいただきました。
でも、そういった作品も同館顧問・山下裕二教授がしっかり光を当て続け、大御所の作品と同様に本当に良い作品をしっかり評価してくれるので、初心者だけでなく、もっと日本画の世界を知りたい!というファンにも、山種美術館の展示は非常に勉強になるのですよね。
今回も、そういった最近は「埋もれてしまった感があるけれど」再評価を待っている作家の珠玉の作品群が展示されています。
たとえば、この作品などはどうでしょうか。
▼松岡映丘「春光春衣」(1917)
内覧会で出るたびに、山下教授が「もっと評価されてもいい作家だ」と強調される通り、非常に技巧的で、華やかで見応え充分の作品。
▼松岡映丘「春光春衣」(1917)部分拡大図
拡大してみました。どうでしょうか?この華やかさ!!「松岡映丘」今回で完全に名前覚えました(笑)
▼渡辺省亭「桜に雀」(20世紀 明治-大正時代)
画壇から距離を置き、孤高の日本画家だった渡辺省亭も、一時期は完全に埋もれてしまった状況から、近年急速に再評価が進みつつあります。2017年春に、首都圏の数館で一斉に保有作品を展示する特集企画が組まれた時は、一時期ネットでアートファンの話題となりました。
見どころ3:意外に細かいところまで描かれている日本画
山種美術館で保有しているいわゆるオーソドックスな日本画は、どれもそうですが、非常に細かいところまできちんと描かれている作品が多いんですよね。1点1点、桜だけでなく、意外なところに意外な動物や人物が描かれているのを発見して楽しむのも、楽しみ方の一つだと思います。
たとえば、この山元春挙の描いた富士山麓にやってきた遅い春を描いた作品。
▼山元春挙「裾野の春」(1931)
ぱっと見ると、富士山と杉の木、茅葺きの民家が目に入ってくるのですが、これをよーく細かいところまで見てみると・・・
▼山元春挙「裾野の春」部分拡大図
物凄く細かいのですが、庭に「にわとり」がいたり、家の脇に生活の道具が転がっていたりするんですよね。ちゃんと細かいところまで手を抜かずしっかり描いていることがわかります。
ということで、一つ貼っておきますね。
絵画の中では完全に脇役的な存在としてそっと描かれているんですが、なぜかよーく見ていると気になってくるという謎の「犬」のような動物が描かれた作品があります。是非、どの絵の中にあるか探してみて下さい!(山種美術館の常連さんならご存知だと思います・・・^_^;)
????/「????」部分図
これ、あとでブロガー仲間とご飯を食べた時に、「犬」なのか「いたち」なのか一体何の動物なんだ!と話題になりました。是非、見に行ったら見つけてみて下さい!
第2展示室の夜桜も楽しい!
そして、今回の趣向として面白いな、と思ったのが、第二展示室が「夜桜」鑑賞の専用部屋となっていたことです。確かに、この部屋はいつも照明を落として展示されているので、これは素晴らしい趣向だと思いました。
▼夜桜の特集が組まれています!
左から、川﨑小虎「山桜に雀」(1948-1955年頃)、速水御舟「『あけぼの・春の宵』のうち『春の宵』」(1934)、速水御舟「夜桜)(1928)、今尾景年「松月桜花」(19-20世紀)
▼速水御舟「『あけぼの・春の宵』のうち『春の宵』」(1934)
たとえば、この速水御舟の作品などは、明るいところで見るよりも、照明を落とした部屋の方が絶対いいと思うんです。夜桜部屋、素晴らしいアイデアでした!
3.特に気に入った作品をいくつか紹介!
最後に、今回僕が見て、特に気に入った作品をいくつか感想つきで紹介しておきますね。紹介しきれないほどあるんですが、キリがないので4つに絞りました。
3-1.橋本明治「朝陽桜」(1970)
展覧会に合わせて発行された名品画集「桜 さくら SAKURA」の表紙にも起用されていましたが、とにかくわかりやすく華やか!桜を描いても明快な作風、力強い色使いは健在!こういうわかりやすさ、大好きです!
3-2.奥村土牛「吉野」(1977)
山いっぱいに咲き誇る吉野の桜を幻想的に描いた作品。「醍醐」同様、独特の柔らかいピンク色に癒やされます。この絵を完成させるため、土牛は合計3回も季節を変えて足を運んだのだとか。見た目以上に完成まで手がかかっている労作です。
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3-3.守屋多々志「聴花(式子内親王)」(1980)
人生の盛りを過ぎた頃、政変に巻き込まれて不遇な人生となった式子内親王の詠んだ歌「はかなくて 過ぎしにかたを かぞふれば 花にもの思ふ 春ぞ経にける」にインスパイアされて、守屋が院展へ出品した傑作。
お付きの人もおらず、牛車から降りて、ひとり寂しげに佇む式子内親王の姿が印象的な作品。桜も、よく見るとちょっと地味な「薄墨桜」が大きくフィーチャーされているのも暗示的で面白いです。
3-4.今尾景年「松月桜花」(19-20世紀)
夜桜コーナーにあるように、月夜に控えめに映える桜がみどころ。今尾景年は、知名度は低いものの、京都・円山四条派の流れをくむ非常に実力のある画家で、見るたびに「凄腕だなー」と感心してしまいます。弟子の木島櫻谷(このしまおうこく)は去年から相次いで展覧会が開催され、急速に再評価が進んでいる感があるので、是非この今尾景年もセットで再評価して欲しいなーと思います^_^
4.展覧会の新作グッズや定番の和菓子も充実!
そして、山種美術館と言えば、展覧会と連動して毎回期間限定で提供される5種類の和菓子です。今回はこんな感じでした。
▼春らしい華やかな色使いの和菓子
いつもは1種類だけ「青」系統のお菓子があることが多いですが、今回は徹底して新緑の「緑」、桜の「ピンク」が目立つ色合いでした。個人的には緑色の寒天で固めた「花春水」が一押しです!
また、展示会場で、お菓子のモデルになった作品については、作品情報が書かれたキャプション・パネルの右上に「Cafe 椿 和菓子になりました」と明記されていますよ。探してみてくださいね。
▼キャプションに明示されています
そして、今回の展覧会に合わせて新しく発行されたハンディサイズの作品集「桜 さくらSAKURA 名品画集」がおすすめ!
いわゆる、通常の展覧会の図録のように重くなくて、カバンにさくっと入る手軽さが嬉しいところ。画家の言葉や、絵画に合った短歌と共に、全80点を収録しています。山種美術館の画集は、すぐに売り切れてしまいますので、思い立ったらその場で抑えてしまいましょう!
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5.混雑状況と所要時間目安
展示作品は約60点とそれほど多くはありませんが、1点1点本当にお花見をしているような気分で回れますので、60分~90分程度は時間を空けておきたいところです。
見ごたえのある大きめサイズの作品が多いので、多少混雑しても問題なく見れますが、13時頃~15時頃は若干人が多めとなるので、じっくり見たい人は閉館直前1時間か、午前中がおすすめです!
6.まとめ
いつも行くたびに日本画の良さをしみじみ味わえるのが山種美術館の企画展ですが、今回はいつにも増して、山種美術館のコレクションのクオリティの高さを感じられる素晴らしい展覧会になりました。美術館で何度もお花見を楽しんでくださいね!
それではまた。
かるび
展覧会開催情報
◯美術館・所在地
山種美術館
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
◯最寄り駅
JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分
JR渋谷駅15番/16番出口から徒歩約15分
恵比寿駅前より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分(降車停留所③、乗車停留所④)
渋谷駅東口ターミナルより日赤医療センター前行都バス(学03番)に乗車、「東4丁目」下車徒歩2分(降車停留所①、乗車停留所②)
◯会期・開館時間
2018年3月10日(土)~5月6日(日)
*会期中、一部展示替えあり
10時00分~17時00分(入場は30分前まで)
◯休館日
毎週月曜日
※但し、4月30日(月)、5月1日(火)は開館
◯公式HP
http://www.yamatane-museum.jp/index.html
◯Twitter
https://twitter.com/yamatanemuseum