あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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コンビニおでんは、本当に危険なのか?安全性を検証してみた

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かるび(@karub_imalive)です。

今年は暖冬だと言われていますが、東京は、ようやくここ数日で本格的に寒くなってきました。寒くなると、コンビニのおでんって売れ行きがよくなりますよね。

ところで、コンビニのおでんって、ネットで検索するとファストフードの代名詞の如く、危険性について書かれた記事が拡散しているようです。かるびは、別にコンビニおでんは好きでもなく、嫌いでもないのですが、どうしてもそれに対して違和感を強く感じました。

今日は、そのコンビニおでんの危険性について、ネットで出回っている記事が本当に正しいのか、コンビニおでんの安全性について考えてみたいと思います。

ネットでコンビニおでんを検索すると・・・

試しに、Googleで「コンビニ おでん」と検索してみましょう。すると・・・ f:id:hisatsugu79:20151220032722j:plain

うーん、これはひどい・・・。

これじゃ、初めてコンビニおでんを食べる人はまず引いてしまいそうです。おでんの危険性ばかり上位表示されているのは、2015年11月にネットで出回った記事によるものと思われます。特にFacebook、Twitterで大量拡散したため、記事の重要度が上がって上位表示されているのでしょう。

たぶん、この2つかな、と思います。

これら2つの記事とも、フードジャーナリストによって書かれていますね。両エントリ共通で主に指摘されているのは、コンビニおでんの中に含まれている様々な添加物の危険性です。さて、それでは、コンビニのおでんで入れられている添加物ってどんなものがあるんでしょうか?

コンビニおでんで主に使われる添加物について

1,アミノ酸=たんぱく加水分解物(だし汁で使用)

コンビニおでんのダシは、昆布やかつおから本当に取るわけではありません。(一部使っているとは謳われてますが)コストの問題があるからです。低コストで、それらかつおや昆布と同じように旨味を出すため、旨味成分としてアミノ酸=たんぱく加水分解物が添加されます。いわゆる、イノシン酸やグルタミン酸といった旨味成分ですね。これらは、厳密には、JAS法では表示義務はありますが、食品添加物とはされていません。

ではなぜこれがしばしば危険だ!と言われてしまうのか?というと 食品工場でたんぱく加水分解物を製造する際に、副産物として「クロロプロパノール」という発がん性物質が生成、混入されてしまう恐れがあるからです。

f:id:hisatsugu79:20151220204901p:plain(クロロプロパノールの化学式(3-MCPD)/農水省HP)

もちろん、この「クロロプロパノール」の危険性はすでに周知の通りで、農林水産省も農林水産省/食品中のクロロプロパノール類に関する情報において、その情報周知と国レベルの対策を記しています。これによると、まず、現在の日本人での平均的な食生活においては、健康リスクは無視できるほど小さい、とされた上で、

平均的な食生活の下での3-MCPDの摂取量は2.0~4.7 μg/日であると見積もられました。これは国際的な専門機関が設定した耐容摂取量の2~5%と小さいことから、平均的な食生活においては3-MCPDによる健康リスクは無視できるほど小さいと考えられました。

「アルカリ処理」という有効な対策技術が確立し、日本ですでに普及しているとされています。

1970年代後半にアミノ酸液などの酸加水分解植物性たん白にクロロプロパノール類が含まれていることが発見されて以降、我が国のアミノ酸液業界ではクロロプロパノール類の濃度を低減するために、製造工程や製造方法を改良し、世界に先駆けて対策が行われてきました。その結果、クロロプロパノール類の濃度が低いアミノ酸液の製造を可能とする一連の技術が確立されました。その中でも、たん白質を酸加水分解した後に「アルカリ処理」と呼ばれる工程を行うことが特に有効であることが、農林水産省が行った実態調査で確認されました。なお、これらの日本の産業界で開発されたアミノ酸液に含まれるクロロプロパノール類の低減技術は、コーデックス委員会が策定した実施規範においても採用され、国際標準として世界中で用いられています。(中略)日本で使用されているアミノ酸液の多くは、すでにクロロプロパノール類の低減措置が導入されており、クロロプロパノール類の実態調査やトータルダイエットスタディの結果からは、食品に含まれるクロロプロパノール類による健康リスクは無視できるほど小さいことが確認されています。

 ということで、冷静に見てみると、概ね、問題なさそうです。

2,酵母エキス(だし汁で使用)

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http://www.exp.org/yeast/yeast.htmlより引用

酵母エキスも、上記のたんぱく加水分解物と同様、調味料として添加されます。こちらも天然酵母由来であるため、食品添加物ではありません。ビール工場などの搾りかすなどから生成されることが多いです。

したがって、通常の場合は全く問題なさそうです。

ただし、1点だけ言及しておくと、いわゆる「イースト菌」をアレルゲンとするアレルギー患者には要注意です。天然酵母もイースト菌の一種なのですね。アレルギー患者が酵母エキスを口にすると、腸内でカンジダ菌が異常繁殖し、「イーストコネクション」というアレルギー反応を引き起こす事例がいくつか報告されています。それが、アトピー性皮膚炎等のアレルギー症状を悪化させる可能性が指摘されています。

また、「イーストコネクション」アレルギー対象者は、酵母エキスだけでなくイースト菌を発酵食品全般がアレルゲンとなるため、豆腐や味噌、ワインなどのお酒にも気を使う必要があります。

【2015年12月26日追記】

酵母エキスの安全性や詳細な検証は、ブログ「レコメンタンク」の本エントリにて詳細に検討されています。この記事を書いた時にTwitterでコメントを頂き、実は元食品メーカーで研究職にいらっしゃったとのこと。非常に信頼性の高い記事です。

3,保存料、着色料(おでん具材で使用)

大手コンビニチェーン3社とも、「着色料」「保存料」は、だしには使用していないようです。ただし「保存料」は確実におでんの具材には使用されているでしょう。なぜなら、ちくわ、はんぺんなど「練り物」には、コンビニで出せる程度のローコストな製法を取るならば、型崩れを防ぐ結着材として、また保水性や食感をを整えるための添加物の使用は不可避だからです。

農畜産業振興機構のHPでは、かまぼこに対しては、例えば以下のとおり明記されています。

 (8)の添加物混合では、生すり身に糖類、リン酸塩類などを加えかく拌します。糖類の添加は、たんぱく質の冷凍変性を防止する目的で、通常5~8%の砂糖およびソルビトールが使用されます。一般的にリン酸塩類は、トリリン酸とピロリン酸のナトリウム塩の混合物が用いられます。リン酸塩には、塩溶性たんぱく質の凝集を抑え、すり身の品質を安定化させる効果があります。

大手チェーン3社のHPには、おでん具材のアレルギー情報は公表されているものの、これら練り物に添加物を使っていない、とは公表されていません。ですから、ある程度は入っているでしょう。

では、どんなものが入っているのでしょうか?概ね、スーパー等で売っている練り物に添加される食品添加物は、代表的なところでこんなところでしょうか。

  • ソーセージ等肉類・・・亜硝酸ナトリウム(保存料、発色剤)
  • 練り物類・・・リン酸塩、ソルビトール(保水剤、結着材、食感維持)

いずれも、しっかり調べればわかりますが、それほど怖い食品添加物ではありません。亜硝酸ナトリウムは劇物ではありますが、肉加工品の塩せきのため、法定で微量添加が義務付けられています。昔から、ハムやソーセージに使われています。

また、リン酸塩やソルビトールなども、自然食品にも含まれているため、添加物以外のルートでも普通に体内に入ってくるものです。

これらの添加物を一度に超大量に摂取すれば、健康リスクはもちろんあります。ただし、それは日常的に我々が安心して摂取している食塩、砂糖等も同じことです。食塩、砂糖の大量摂取は、我々がよく知っている成人病を誘発します。(水でさえ、一度に大量摂取すると中毒死しますから。)

したがって、これら添加物についても適切な一定量以下の摂取であれば、健康には問題ないといえそうです。

コンビニチェーンに問い合わせしてみた

念のため、コンビニ大手セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートそれぞれ3社にメールで問い合わせをしてみました。3営業日以内に、3社とも返信がありました。素早い対応です。

問い合わせ時に、返信メール等を2次情報として開示しない、という決まりなので、メールの文面そのものを転載するのは控えますが、3社とも

「法律で決められた範囲内で添加物を適切に加えている」旨の返答がありました。

また、セブン-イレブンは、おでんの練り物にはリン酸塩を使用していないそうです。なかなかやるな。

これを信用するかどうかは我々消費者にかかっていますが、かるびは恐らく問題ないと考えています。これだけ食の安全への消費者の関心が高まっている昨今、コンビニ各社は添加物を極力減らす方向で動いていますし、不正が漏洩した際の企業経営に与える影響の大きさは、十分過去の他社ケースから理解しているでしょう。

衛生面の心配について

また、衛生状態については、「おでんの鍋の中にホコリなどが入っている」など、ネットでは、「不衛生である」エピソードが掲載されています。例えばこんな感じ。

ネットで調べた中では、「キレイに保っている」「虫とか入っていて汚い」など両方の記事が存在します。衛生状態は、結局店舗によるところでしょう。

この記事などを見ると、最近はかなり厳格な消毒・洗浄・清掃等の業務マニュアルは各社あるのだろうと想像できます。あとは、各コンビニ店頭でどれだけ適切に業務が回っているかどうかによるのではないでしょうか?いつも使っているコンビニの食品製造現場をレジ前でチェックしてみて、衛生状態を自分で確認してみるのが一番かと思います。

ただし、これまでのところ、コンビニおでんで「食中毒を起こした」事例は全くと言っていいほど聞いたことがありませんよね。よって、基本的には衛生状態については問題ないと判断しています。

まとめ

結論として、コンビニのおでんは、手放しでは安心できないですが、日常的に楽しむレベルであれば、問題はないと見て良いと考えます。

自宅で作る自家製おでんに比べると、恐らく多少の添加物等は含まれているものの、法律通りのリスク管理はできていそうです。ネット上の記事を見ると、その危険性をうたう殆どの記事が、根拠がないか、感情的なレベルに終止しています。

本当に危ないのかどうかは、いくつものソースにあたってみて、自分自身で冷静に判断していくしかないと思います。

かるびのコンビニおでんに対するスタンスとしては、「家で作る時間のない時やどうしても食べたくなった時に、購入する」というものです。自宅で作ったほうが自然由来のダシなので優しい味がしますし。

これはおでんに限らない話になりますが、コンビニで購入する以上、便利さと引き換えに、添加物等を体内に摂取する一定のリスクは負っていることは忘れてはならないと思っています。要するに、バランスの問題だと思います。

PS.それでも心配な場合は、自宅で味を再現する方法が。

コンビニおでんの味は好きだけど、毎日食べ続けるのは気持ち悪いな、、、という場合は、妻が取っておきの方法を教えてくれました。それは、クックパッドで調べてみる方法です。試しにクックパッドで検索してみたら、自宅で再現できるコンビニおでんのレシピが大量にアップされていました。

時間があれば、こういうレシピを自分なりに研究して、コンビニの味を再現してみるのも面白そうですね。いい感じで再現できたら、またここにアップしたいと思います。

それではまた。

かるび