かるび(@karub_imalive)です。
トップアスリートを引退し、自らの才覚と根性で世界中のセレブが熱狂するポーカールームの経営者となった実在の女性の半生を描いた作品があるー。そして主演は「ゼロ・ダークサーティ」や「女神の見えざる手」など、強くて知的な女性を演じさせたら抜群のジェシカ・チャステイン・・・。
これは面白い作品になるだろうなと思っていたら、案の定、先に試写会に行ってきた肩から「面白いよ!」と大評判だったので、早速行ってきました。面白かったです!
早速ですが、映画の感想やレビューを書いてみました。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。
- 1.映画「モリーズ・ゲーム」の予告動画・基本情報
- 2.映画「モリーズ・ゲーム」主要登場人物・キャスト
- 3.途中までの簡単なあらすじ
- 4.映画内容の簡単なレビュー!(感想・評価含め)
- 5.映画「モリーズ・ゲーム」に関する9つの疑問点~伏線・設定を徹底考察!(※強くネタバレが入ります)~
- 6.まとめ
- 7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
1.映画「モリーズ・ゲーム」の予告動画・基本情報
【監督】アーロン・ソーキン
【脚本】アーロン・ソーキン(「ソーシャル・ネットワーク」他)
【配給】キノフィルムズ
【時間】140分
本作は、NYやLAで、セレブ達の集まる伝説的なポーカー・ルームを若干26歳で運営した実在の人物、モリー・ブルームの数奇な半生を描いた、実話ベースのヒューマン・ドラマです。
上映時間は、かなり長めの140分。ですが、高速で遷移するカメラワークや、情報量が詰まったマシンガンのような会話劇を中心として、3つの時系列が入り乱れて進行するなど、早く結末を見たい!と期待感を持続させる仕掛けがいくつも用意されており、尺の長さをあまり感じさせません。
アーロン・ソーキン監督
引用:Wikipediaより
本作は、アーロン・ソーキン監督の初監督デビュー作となります。今作では、監督と同時に脚本も担当。過去作「ソーシャル・ネットワーク」「スティーブ・ジョブズ」で見せた、スリリングな会話劇の切れ味は今作でも健在です。初監督作品ながら高い評価を得て、2018年度アカデミー賞脚色賞や、2018年度ゴールデングローブ賞2部門でノミネートされました。
ちなみに、衝撃の冒頭シーン約2分半が、公式動画として用意されていました。出だしの2分半程度をちらっと見るだけでも雰囲気をたっぷり味わえます!下記に動画を貼り付けましたので、是非チェックしてみてくださいね。
2.映画「モリーズ・ゲーム」主要登場人物・キャスト
モリー・ブルーム(ジェシカ・チャステイン)
引用:『モリーズ・ゲーム』日本版オリジナル予告 5.11 - YouTube
ここ数年、作品にも恵まれ、話題作やヒット作を連発しているジェシカ・チャステイン。年2作以上のペースで、娯楽超大作から賞レースに上がる作品まで、幅広く出演中。2018年は、とうとうマーベルヒーロー映画にも進出。「X-MEN ダーク・フェニックス」で最強のヴィランを務める予定で、こちらも楽しみです。
チャーリー・ジャフィー(イドリス・エルバ)
引用:『モリーズ・ゲーム』日本版オリジナル予告 5.11 - YouTube
アメコミファンには「アベンジャーズ」「マイティ・ソー」シリーズでの寡黙な門番役としておなじみですが、それ以外にも「ダークタワー」「スター・トレックビヨンド」といったSFものから、「ズートピア」「ジャングル・ブック」「ファインディング・ドリー」などディズニー・アニメ映画の常連でもあります。40代中盤の働き盛りの黒人俳優としてしばらくは引っ張りだこ状態が続きそう。
プレイヤーX(マイケル・セラ)
引用:『モリーズ・ゲーム』日本版オリジナル予告 5.11 - YouTube
性格の曲がったハリウッドスター・・・という役柄を、子役あがりで幼少時からべったりハリウッドで過ごしてきたマイケル・セラに託したのは配役の妙というか。どこか倫理観のネジの飛んだ悪役ぶりがはまっていました。ここ数作は「レゴバットマン・ザ・ムービー」や「ソーセージ・パーティ」といったアニメ系での声の出演が続いています。
モリーの父親(ケビン・コスナー)
引用:Molly's Game | Official Trailer |
初老を迎え、枯れてきてからは渋い堅実な演技が光るケビン・コスナー。2017年以降、「ドリーム」「クリミナル」など、作品にも比較的恵まれて出演頻度が上がってきています。不倫に悩む父親像は、若き日にやらかしたこともある、自らのプライベートそのまんまだったりして・・・。
ディーン・キース(ジェレミー・ストロング)
引用:Molly's Game | Official Trailer |
出演時間は短めでしたが、ハリウッドに生息してそうな、いかにも粗暴で浮ついた成り上がり経営者といった雰囲気の役柄を見事に熱演。ちなみに本作出演までポーカーなど一切やったことがなかったそうです。主演のジェシカ・チャステインとは、「ゼロ・ダーク・サーティ」以来の共演となりました。
3.途中までの簡単なあらすじ
かつて、世界有数の大物実業家やスポーツ選手、ミュージシャン、ハリウッドスター、スポーツ選手が集う秘密のポーカー・ルームがあった。そのポーカー・ルームは、掛け金の最低額が100万ドル。考えられないような高レートのセレブ専用のポーカーゲームでは、一晩で100億円が動くこともあった。
そのポーカー・ルームのオーナーは、コロラドの片田舎から出てきた、何の後ろ盾も持たない若き女性、モリー・ブルームだった。最終的に、ニューヨークのゲームの後、モリーはFBIの国策捜査で逮捕されてしまうが、その間の8年間は、まるでローラーコースターのような激しい人生だった・・・。
映画は、モリーがスキーのモーグル選手だった大学生時代に遡る。2002年、ソルトレイク冬季五輪の最終予選に臨んでいたモリーは、万全を期して最後の試合に臨んでいた。しかし不運なことに、ゲレンデに落ちていた1本の松の枝にスキー板が当たり、激しく転倒したのだった。
モリーのアスリートとしてのキャリアはこれで終わった。彼女は新しいキャリアを模索するため、ロースクールへ行く決心をした。しかし、その前に1年間の休暇を取るため、単身ロサンゼルスへと移住したのだった。これが、モリーのその後の激動の人生を決定づける決断となった。当初はハリウッドのクラブでウェイトレスとして働いていたが、店の常連客だった、ディーン・キースにスカウトされ、彼の会社の雑用係として働き始めた。
ディーンは、「コブラ」というポーカールームで、LAのセレブ達を集めた秘密のポーカーゲームを主催していた。モリーは最初ディーンの手伝いとして、ポーカールームへ出入りを始めたが、すぐに運営の一切を仕切るようになっていた。やがて、モリーはポーカーを通してセレブ達の考え方や知識・教養を身に付け、彼らから受け取るチップで生活のレベルも向上させていった。
これに嫉妬したディーンから、突如クビを言い渡されたモリーだったが、ここで負けず嫌いのモリーは起死回生の一手に打って出た。高級ホテルを借り切り、プレイヤーXと組んで、自分のポーカールームを立ち上げたのだ。
ポーカールームの運営は、しばらく順調だった。しかし数年後、プレイヤーXとの手数料のいざこざから決裂し、彼女は一夜にしてロサンゼルスでのポーカールームを失ってしまう。
これにめげないのがモリーだった。勝利を得るまではやめられない。モリーはニューヨークへと進出し、さらに掛け金の大きなゲームを始めた。しかし、ニューヨークの顧客は一筋縄ではいかなかった。マフィアや詐欺師、イカサマ師が跋扈するなど、筋の悪いプレイヤーも増えていった。高騰する掛け金のレートや、困難を極めたゲーム管理に、やがて心身ともに疲弊していった。判断力の甘くなったモリーは、やがてポーカールームへロシア系の犯罪組織メンバーを招いてしまうのだった。
犯罪組織メンバーは、やがて彼女を個人的に恐喝するようになった。身の危険を感じた彼女は、最後のビッグゲームに臨むが、そこへFBIの強制捜査が入るのだった・・・。
それから2年後、資産をすべてFBIに差し押さえられたモリーは、回顧録「モリーズゲーム」を出版し、講演会に追われていたが、ある朝、再びFBIはモリーを逮捕に踏み切ったのだ。
モリーは、無罪を勝ち取るため、元検察官の経験がある凄腕弁護士、チャーリー・ジャフィーを訪ね、弁護を依頼する。チャーリーは、モリーとの面会当初、弁護を引き受けることに消極的だったが、やがてモリーの特別な倫理観に心を打たれたチャーリーは、モリーとともに真相究明に乗り出すのだった。
果たして、モリーは無罪を勝ち取り、平穏な日々を取り戻すことができるのか?
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4.映画内容の簡単なレビュー!(感想・評価含め)
アーロン・ソーキンの作家性がしっかり全面に出た作品
本作は、アーロン・ソーキン監督の監督デビュー作です。一方で、ソーキン監督は、脚本家としては実績十分。過去にも「ソーシャル・ネットワーク」や「スティーブ・ジョブズ」など、実在の人物の実話に基づくヒューマン・ドラマの脚本を手がけたことで有名です。
マーク・ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズなど、何らかの分野で突出した実績を残した有名人って、やっぱりちょっと通常の人間とは違う「感覚」を持っているんですよね。こうした「感覚」の違いこそが、彼らの成功の原動力であり、強烈な個性の源泉でもあるわけです。
アーロン・ソーキンの脚本は、なんといっても高速で繰り広げられる会話劇。この一連の会話劇を通して、彼らの仕事や日常から、彼ら特有の「感覚」を抽出し、成功者の外側に見えている輝かしい「栄光」の部分だけでなく、人物の実像に迫ろうとするアプローチが非常にユニークです。
今回のモリーズ・ゲームで監督を手がけることになっても、そのスタンスは不変でした。本作でメガホンを取ることが決まってから、ソーキン監督は、実に8ヶ月間の間、モリー・ブルームに丁寧に取材を重ねて、何度も内容について協議を重ねたそうです。
・コロラドの片田舎から出てきたモリーが、なぜ短期間で、セレブたちを虜にするポーカーゲームの主催者へとのし上がることができたのか?
・なぜ、アンダーグラウンドなギャンブルの場において、暴力的な手段や、女性ならではの性的な誘惑を一切使わず、ポーカーゲームを平和裏に運営することができたのか?
このあたりの答えは、3つにシャッフルし、時系列を目まぐるしく入れ替えてテンポよく交わされる会話劇を丹念に追って行くことで、しっかり透けて見えてくるのですよね。まさにアーロン・ソーキンの作家性が色濃く出た作品だと感じました。
「モリーズ・ゲーム」を通して見えてくる「人生」の様々な側面
本作を見て、強く感じたのは、人間の「人生」の持つ様々な性質です。例えば、人のキャリアや人生は、計画通り進むことよりも、偶然の要素に左右されることの方が多いということ。
引用:Molly's Game | Official Trailer |
映画序盤で描かれるのは、そんな「偶然」が人生を左右する一場面です。大怪我を克服し、自らの才能の限界まで必死に努力して、オリンピックを目指したモリーでしたが、コースに撒かれた松の枝を踏んだことにより、片方のスキー板が本番の滑走中に外れてしまいます。非常に確率的には起こりえなそうな出来事により、スキーヤーとしてのキャリアが終了し、結果的にはこれが後のモリーの大活躍につながるのです。
引用:Molly's Game | Official Trailer |
そこからのモリーの人生はまさに激動の時代を迎えます。「人のご縁」とモリー自身の圧倒的な「努力」によって、偶然掴んだチャンス活かし、桁外れの成功を収めていくのです。
・セレブたちがどうしたら喜んでお金を使ってくれるか?
・どうやったらプライドが高い彼らから、平和裏に負け金を回収できるのか?
・どうやったらセレブ達が集まる高額掛金のゲームを維持・拡大できるのか?
こういった課題に真剣に向き合い、顧客を満足させることに必死で取り組んだからこそ手に入った成功。人生は、確かに運に左右される面もあるけれど、努力も大切。掴んだチャンスを活かす殺すは自分次第。努力次第でかなりのところまで達成できるものなのだと、彼女が証明してくれました。
しかし、そんな超人的な努力と根性にも限界がありました。モリーの身の丈を遥かに超えた巨大すぎるマネーは、いつしか個人の力ではコントロール不可能なレベルに達してしまいます。連邦法で禁じられた手数料(レーキ)徴収に踏み込んだり、心身へのプレッシャーからドラッグを常習するようになり、無理に無理を重ねる毎日・・・。
最後はマフィアにも恐喝されるストレスフルな日々だった
引用:Molly's Game | Official Trailer |
こうなると、人生は必然的に一気に暗転していきますよね。約10年にわたって積み上げてきたゲームは、マフィアからの物理的な恐喝と、FBIから受けた資産凍結で、一瞬で終わりを告げることになります。転落する時は一瞬、栄枯盛衰・諸行無常であります。人生に上り坂があれば、必ずその逆の下り坂も待っているんだ、という人生の厳しい側面を見せてくれました。
偶然をチャンスに変えて、努力と才覚で10年間大成功を収めた彼女でしたが、まさに転落するのは一瞬だった・・・という。本作は、まさに人生を学ぶための生きた教材でもあったのです。
ヘタな自己啓発書を読むくらいなら、本作を何回も見返したほうが、よっぽど学びがありそうですよね。僕も20代始めにこういう良作と出会えていればなぁ(笑)
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5.映画「モリーズ・ゲーム」に関する9つの疑問点~伏線・設定を徹底考察!(※強くネタバレが入ります)~
ストーリーや設定について、本作をより深く理解するために要点となりそうなポイントについて、考察や情報をまとめています。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。
疑問点1:主人公、モリーはなぜプロスキーヤーだったのか?その成績は?
映画でも描かれたように、モリーは兄弟二人と一緒にオリンピック出場を目指して一流のスキーヤーとして活躍していました。幼少時、物心ついた頃から徹底的に父親の指導の下、スキーの腕を磨いてきたのでした。
幼少時代から父・ラリーのスパルタ教育を受けて育った
引用:Molly Bloom leads quiet life compared to poker party days
モリーは、下の男兄弟2人に比べると、自らの運動神経やスキーの腕前が劣っていることは自覚していましたが、それでも北米の国際大会で上位の成績を収められるだけの実力を持っていました。
モリーの引退直前の公式戦成績
引用:https://data.fis-ski.com/dynamic/athlete-biography.html?sector=FS&competitorid=5590&type=result
ちょうど、現役時代のラスト2年の成績が今でも公式記録としてネット上で見れるようになっていますので、貼っておきますね。これによると、モリーの最終戦は、転倒してのDNFではなく、4位となっています。ソルトレイク冬季オリンピック出場まであと一歩だったということがわかります。
疑問点2:「プレイヤーX」の正体とは?
引用:Molly's Game | Official Trailer |
プレイヤーXは、原作小説からのいくつかの合成キャラですが、ベースとなっている人物は、ハリウッド俳優、トビー・マグワイアだと言われています。彼の主な出演作は、「スパイダーマン」シリーズですね。映画内でも「スーパーヒーローを演じている・・・」と暗にトビー・マグワイアであることを示唆していました。
引用:Wikidpediaより
映画では、ロサンゼルスのゲームにおいて、モリーのチップが高すぎるとケチをつけ、モリーからゲームの場を奪ってしまう「悪役」として描かれていました。モリーの自伝でも、ロサンゼルス時代にモリーからゲームを奪ったのはトビー・マグワイアでした。
最初の出会いから、彼の気性の荒さや非紳士的な振る舞いには手を焼き、苦労する様子が描かれています。(なるほど、このゲスい性格なら、確かに最近仕事を干され気味なのも仕方ないわな・・・と納得しながら読んでました^_^;)
疑問点3:モリーのポーカーゲームに参加していた有名人は誰がいたの?
引用:Molly's Game | Official Trailer |
ロサンゼルス時代には、かなりのハリウッド系有名人が出入りしていたようです。原作内でハッキリ書かれているのは、前述したトビー・マグワイアに加え、ベン・アフレック、レオナルド・ディカプリオなど。各種報道では、これに加え、マット・デイモン、マコーレー・カルキンなども上がっています。
引用:上記全てWikipediaより
また、プロのスポーツ選手も出入りしていたようで、ニューヨーク・ヤンキースのアレックス・ロドリゲスや、プロテニスプレーヤーのピート・サンプラスなども参加していたのだとか。
引用:Wikipediaより
こうした有名人たちの前では、大富豪たちも単なる少年に戻ってしまい、みんなこうしたセレブたちとポーカーを遊びたがったのだとか。原作でも、モリーも、こうした有名人たちを特に客寄せに効果的に使っていたようですね。
疑問点4:モリーはなぜ逮捕されたのか?彼女の犯した罪とは?
引用:Molly's Game | Official Trailer |
モリーの犯した直接の罪状は、約10年に及んだポーカーゲームの最後の半年間で、ゲームの手数料(レーキ)を取ったことです。アメリカ連邦法だと、賭けポーカーの場を開催するのは合法ですし、サービス料としてチップを受け取るのは合法ですが、ゲームごとに手数料を徴収するのは連邦法1955条に反する「違法」となるようです。
ただ、FBIが彼女の資産を凍結し、著作出版後の逮捕に踏み切ったのは別の理由があったからでした。映画でもあったように、モリーのニューヨーク時代の顧客は、だんだんと筋の悪い裏稼業のメンバーも増えてきていました。巨額なお金がからんだ金融犯罪を操作していたFBIから見ると、犯罪者たちが顔を合わせる場所を提供していたモリーは、彼らの人間関係や情報を引き出す上で、キーマンであると映ったのでしょう。国策捜査の一環として、一時期は重罪犯のような扱いを受けてしまったのでした。
疑問点5:モリーに対する判決はどうなったのか?
引用:Molly's Game | Official Trailer |
映画でも描かれましたが、最終的にモリーが受けた判決は、1年間の保護観察と200時間の社会奉仕、1000ドルの罰金刑と、ほぼ無罪に近い形となりました。当初、10年程度の実刑判決が予想されていただけに、嬉しいサプライズとなったようですね。
疑問点6:モリーは、父親とはなぜ仲が悪かったのか?
引用:Molly's Game | Official Trailer |
映画最終盤で明かされるのですが、モリーの父は、別の女性と不倫関係にあったようです。モリーが5歳の時、その不倫現場をたまたま目撃されてしまった(とモリーの父が感じていた)ため、父は、モリーに対してだけ、自らの愛情をストレートに伝えることに気後れするようになってしまったのです。
ただ、実際のモリーと父親の関係は、そこまでは悪化していなかったようです。確かに、モリーの幼少時代は、モリーや兄弟たちをアスリートに育てるためスパルタ教育を施したようですし、モリーがロサンゼルスに出て行くことには反対しています。ただ、原作の中で、終始モリーは父に対して深い愛情を示しています。
つまり、モリーと父親のこじれた関係性と、最終盤の劇的な和解シーンは、ドラマとしてかなり脚色されていると考えて良さそうです。
疑問点7:原作との主な違いとは?
引用:Molly's Game | Official Trailer |
本作は、原作となったモリー・ブルームの自伝とは結構違いがあります。ここでは、主な相違点について解説してみます。
・モリーは、実際にはモーグルの試合で転倒していない。あくまで予選会で敗退し、脊髄の痛みにこれ以上耐えながら競技を続けることは出来ないという、自らの判断をもって、スキーヤーとしてのキャリアを終わらせている。
・原作では、相当数の人物が実名で描かれている。特に、映画ではプレイヤーXとぼかされたトビー・マグワイアをはじめ、ベン・アフレック、レオナルド・ディカプリオ、アレックス・ロドリゲスなど、誰でも知っている有名人が登場。
・LA時代の雇用主ディーン・キースは、原作ではリアドンという名前で出てきており、どちらかというと師弟関係に近い。LAでモリーがリアドンを出し抜いて自らのポーカールームを立ち上げた時、リアドンは逆にモリーを祝福し、以来モリーとリアドンは対等の関係で良好な人間関係を維持している。
・原作では、モリーがFBIに資産を差し押さえられるまでを描いている。それに対して、映画では原作の「その後」まで、すなわち、モリーがFBIとの訴訟で勝訴するまでも含めてを描いている。また、父親との関係性についてより深く踏み込んで描いている。
・モリーがゲームを失うのは、映画で描かれたLA時代だけでない。NYでも一度仲間にハメられて、自らのゲームを失っている。
疑問点8:ラストシーン・結末の考察
夜中のスケートリンクで、偶然父親と出くわしたモリーは、父との劇的な和解を果たし、長年心の奥底に鬱積していた「父に愛されたい」という執着を開放することができました。これにより、自らの有罪を認め、ニュートラルな気持ちで臨んだ裁判では、ほぼ「無罪」に寛大な判決を引き出すことに成功したモリー。結局、ポーカーゲームで稼いだお金は全て失い、一文無しになったモリーですが、最後に自由の身を勝ち取ったのでした。
引用:Molly's Game | Official Trailer |
そして、ラストシーンは、モリーのその後のエピローグを描くのではなく、敢えて過去へと飛びます。それは、映画冒頭で、モリーが派手に負傷・転倒してしまい、ゲレンデの脇に倒れ込んだシーンの続きでした。ギャラリーが心配そうに見守る仲、モリーは再び意識を取り戻して立ち上がります。係員に肩を担がれながらゲレンデから引き上げる時、彼女が電光掲示板で見た最後のレース結果は、「DNF」(リタイア)でした。
引用:『モリーズ・ゲーム』 オリンピック目前!超早口な冒頭スキー映像
それでも、周囲のギャラリーはモリーが無事だったことに対して温かく拍手で迎え、実況中継のアナウンサーも、「彼女は根性があるから、再び活躍できるだろう」とコメントを残します。
その一連の描写は、ポーカーゲームで失敗し、かろうじて体一つだけ残ったモリーが、これから新たな人生をまた模索しようとする今現在の状況と見事にオーバーラップする演出となっていました。過去に幼少時の側弯症を乗り越え、競技スキーでの挫折を乗り越えてきたモリーは、今回もきっと心の傷を癒やし、失敗を乗り越えて、また新しい人生を切り開いていくのだろうな、という爽やかな予感で、エンドロールへと突入していきました。
ラストシーンの心憎い演出、是非味わい尽くしてみてくださいね。
疑問点9:モリー・ブルームのその後は?最近は何をしているの?
引用:Poker Princess Molly Bloom - YouTube
モリー・ブルームは、自らの裁判が大方片付いた2014年以降、彼女は生まれ故郷のコロラド州・ラブランドへと戻りました。現在は家族とのんびりした日々を送りつつ、地元の女性起業を手伝うネットワーク作りに従事しているとのことです。
家族での集合写真。幸せそうなブルーム家
引用:Molly Bloom leads quiet life compared to poker party days
2017年、映画化に際して、プロモーションや各種賞レースの対応で、テレビやネットのインタビューに積極的に答えていますし、請われれば講演活動などもしているようですね。
ただし、本人はもう2度とポーカーゲームの世界に戻ることはない、とは断言しているようです。ちょっと惜しい気もしますが、これだけの才覚と根性がある女性なので、今後も何かやってくれるのではないでしょうか?
6.まとめ
本作は、ポーカーゲームでモリーが成り上がっていき、そして全てを失うまでの過程を中心に、その前後のエピソードも含め、3つの時間軸を同時進行で描き出しました。時間が進むに連れてモリーの人物像が次第に立体的に浮かび上がってくるよう、周到に計算された脚本や、時間の長さを感じさせないテンポの良さは、とても初監督作品とは思えないすばらしい出来でした。高速でのセリフの応酬、ポーカーシーンのスリリングな展開など、見どころ満載の映画です。モリー・ブルームのたどった数奇な人生を、是非劇場で味わってみてくださいね。
それではまた。
かるび
7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
原作の自伝ノンフィクション「モリーズ・ゲーム」
モリー・ブルームが、自らのゲーム運営を始めてから、ロサンゼルス~ニューヨークと成り上がり、FBIに逮捕されるまでの激動の約10年間を語り下ろした自伝的ノンフィクション。アレックス・ロドリゲスやベン・アフレックなど、セレブたちの名前が「実名」でいくつも出ているのが衝撃的です。そしてトビー・マグワイアは悪く書かれすぎ(笑)
映画では、モリーの成功譚は割りとスマートに描かれていましたが、この自伝を読むと、モリーが自らのゲームを成立させるために、細心の準備と配慮で「仕事」に臨んでいたかがよくわかります。映画同様、スリリングでリアルな描写は読み応え抜群でした!
ジェシカ・チャステイン出演作品は、まとめてU-NEXTで!
本作で主演を務めるジェシカ・チャステイン。タフで知的な女性像を抜群の演技力でまとめる才能は、過去作でもがっつり堪能できます。ジェシカ・チャステインの過去作を見るなら、U-NEXTが一番おすすめ。過去作は全部で12作品、その大半を「見放題」でチェックすることが出来ます。一気にチェックするなら、この機会に動画配信サービスを試してみるのもありですね。
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