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【ネタバレ有】実写映画「亜人」 感想・レビューと11の疑問点を徹底解説!/アクションに特化!ある意味、潔さを感じた作品でした

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2017年10月3日最終更新

かるび(@karub_imalive)です。

9月30日に公開された、激しいアクションシーンが満載の映画「亜人」を見てきました。500万部以上を売り上げる大人気コミックスを原作として、劇場版アニメ映画、TVアニメシリーズ、小説ノベライズと、メディアミックスが進められてきた中で、満を持して制作された実写化映画です。

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.実写版映画「亜人」の予告動画・基本情報

▶映画「亜人」公式動画
※画像をクリックすると動画がスタートします


動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】本広克行(「踊る大捜査線シリーズ」他)
【配給】東宝
【時間】109分
【原作】桜井画門「亜人」

本作は、すでに先行して、マンガ原作、アニメ映画、アニメドラマと、複数の媒体で作品が発表されてきており、今回の実写映画化はメディアミックスの最終形とも言えそうです。

<亜人・各作品発表タイムライン>

2012年7月~:マンガ原作連載開始(現在11巻まで刊行済)
2015年11月27日:劇場版アニメ第1弾「衝動」
2016年1月~:TV版アニメ第1期放送開始
2016年5月6日:劇場版アニメ第2弾「衝撃」
2016年9月23日:劇場版アニメ第3弾「衝戟」
2016年10月~:TV版アニメ第2期放送開始
2017年9月:パチスロ「亜人」導入開始
2017年9月7日:小説版発表(実写映画ノベライズ)
2017年9月30日:実写映画版公開 

いや~、こうやって並べてみると、壮観です。もうやり尽くした感がありますね。

さらに、TVアニメ版は、第1期、第2期ともNetflixにて配信もされており、メディアミックスとしては一通り出尽くした感じの本作。(もっとも、円盤の売上はかなり厳しいらしいですが・・・)

こういう場合、最後発となる実写映画の立ち位置って非常に難しいんですよね。原作そのままの雰囲気で作り込むと、「もうそれはアニメ版でやってるから新鮮味がない」と言われるし、その際に脚本が拙いと「なんか総集編みたいだった」なんてケチがつきますから。

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アニメ映画の監督も手がける本広克行氏
引用:本広克行 - 映画.com

そこで、今作の監督を務めた本広克行監督はどうしたか?

実写版では、原作の世界観や基本設定を活かしつつ、思い切ってVFX/CGを活かしたアクション映画としてコンセプトを特化して打ち出してきました。邦画では珍しく、MX4Dや4DXでの体験型アトラクションとして、劇場で楽しむ時にカタルシスが最大化されるような作りになっています。

後述するように、「亜人」は、自らの分身である「黒い幽霊=IBM」の行動特性が、亜人本人の精神状態や心境に左右されます。マンガ原作では、主人公、永井圭の精神的な成長や心境変化がかなりの時間をかけてゆっくりと描かれてきました。

しかし、今回の実写映画では、人物的な深い描写は潔く切り捨てられ、そのかわりにアクションシーンにおける心理の読み合いや頭脳プレイに特化して描かれてきています。

このことが作品全体にどういう影響を及ぼし、お客さんにどう評価されたのか、「感想」コーナーで後述してみたいと思います。

2.映画「亜人」主要登場人物・キャスト 

映画の時間尺の都合上、マンガ原作での登場人物はかなり間引かれて描かれました。押さえるべき登場人物に絞って紹介しますね。

主要登場人物

永井圭(佐藤健)
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引用:映画『亜人』予告【2017年9月30日公開】 - YouTube
口数の少ない内向的な主人公は、「世界から猫が消えたなら」「何者」などで、佐藤健が得意とするキャラ設定でした。また、アクションシーンでは割りと受け身の演技が多く、何度も倒されるシーンはかなり痛そうでした(笑)2018年にかけて「8年越しの花嫁」「いぬやしき」など、アクションから恋愛まで主演作が本当にバラエティに富んだ俳優です。

佐藤(綾野剛)
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引用:映画『亜人』予告【2017年9月30日公開】 - YouTube
ハイライトは後半で唐突に(?)披露される絶妙の肉体美(撮影当時体脂肪率11%)です。MX4Dでは、この時バラの匂いが映画館に充満するのだとか。2017年春に公開された「武曲」で作り込んだ鋼の肉体をそのまま維持して、撮影に臨んだのだそうです。原作に比べてかなり若いかなという気もしましたが、絶妙な目の細さはイメージどおりでした(笑)

戸崎優(玉山鉄二)
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引用:映画『亜人』予告【2017年9月30日公開】 - YouTube
映画・ドラマとあちこちで見かけた2013-2014年頃までに比べるとだいぶ露出が落ちたなと思っていましたが、映画では実に「ルパン3世」以来、3年ぶりの起用となりました。現在配信中の佐々木望と共演するHuluオリジナルドラマ「雨が降ると君は優しい」も中々の出来です。

奥山(千葉雄大)
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引用:映画『亜人』予告【2017年9月30日公開】 - YouTube
映画パンフレットで「なんで僕が起用されるんだろう」と役者本人が起用理由を疑うほど、原作とキャラが違っていましたが、これはこれでアリかと思いました。映画・ドラマでの出演作は多いのですが、スイーツ映画の噛ませ犬役(?)ばっかりで、なかなか主演に抜擢されないのが悩みどころでしょうか?

下村泉(川栄李奈)
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引用:映画『亜人』予告【2017年9月30日公開】 - YouTube
AKB48卒業組の中で、今や前田敦子や大島優子を凌ぐほどに映画・ドラマでひっぱりだことなった一番の出世頭。端役で評価を重ね、確実に主演クラスへとステップアップを果たしています。2018年にかけて「プリンシパル」「嘘を愛する女」など待機作が多数ありますが、「恋のしずく」では念願の主演に抜擢されています。

田中功次(城田優)
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引用:映画『亜人』予告【2017年9月30日公開】 - YouTube
ハイライトは身長差30センチ以上の川栄李奈とのバトルシーン。アクション重視で粗っぽい脚本の中、ちょっとした仕草やセリフの中に工夫をこらした細やかな演技が光りました。本物のサイコパスである佐藤とは違い、人間らしい良心を残す原作の田中っぽさが見いだせます。久々の映画出演でしたが、好演でした。

3.途中までの簡単なあらすじ

不治の病を抱える妹の病気を治すため、現在研修医として実習に励む永井圭(佐藤健)。ある日、彼は交通事故に遭って死亡するが、死ぬことのない「亜人」であることが発覚。そこから圭の人生は大きく変わることになった。

政府は圭を拘束すると、非道な人体実験を繰り返す。そんな中、国内初の「亜人」として認定され、現在では政府転覆を目指す凶悪なテロリストとなった「佐藤」(綾野剛)と部下の田中功次(城山優)が、圭を収容する亜人研究所へ侵入する。激しい戦闘を経て、佐藤は圭を救出し、共に政府を打倒しようと誘いをかけた。しかし、佐藤の異常性、好戦性に違和感を感じた圭は佐藤の申し出を断り、田舎村の民家へと潜伏する。

佐藤は、難病で入院中の圭の妹、慧理子(浜辺美波)の病院を田中に襲撃させるが、政府の亜人管理委員会、戸崎優(玉山鉄二)の私的SPで、亜人でもある下山泉(川栄李奈)に救われる。民家のラジオで妹の誘拐未遂事件を知った圭は、病院から慧理子を脱出させ、民家へと共に潜伏するが、やがてどこからか圭が亜人であることがバレてしまい、民家を追われることになった。

妹を守り、平穏な生活を取り戻すため、圭は、佐藤と対立する政府の戸崎と取引し、佐藤と対決する道を選ぶ。そんな中、佐藤は厚労省前で凄惨なテロを起こし、猛毒の神経ガス攻撃を仕掛け、東京を壊滅させる次のテロを予告する。

戸崎と合流した圭は、毒ガスを保管するフォージ重工ビルの最上階で指揮を取り、佐藤との最終対決に備えるのだったー。

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4.映画「亜人」の感想・評価~アクション演出は凄い!他はやや残念!~

頭脳的なアクションシーンが最大の見どころだった

本作は、心理サスペンス、アクション、ダークファンタジーなど、様々な魅力を持つマンガ原作から、特にアクション部分のエッセンスを取り出して、コンパクトに100分超でまとめられています。

とにかく、最初から最後まで「アクションシーン」を如何にかっこよく、クールに魅せるか、リアルに体感させるか、を第一に考えて作られた映画でした。

主演の佐藤健が、映画「ミッション・インポッシブル」シリーズに似ているとインタビューで語るように、激しいアクションシーンの中にも頭脳戦・心理戦といった要素が上手く採り入れられています。特に、亜人の「死ねない」という特殊な条件を活かしきった各シーンの攻防は、無駄がなくインテリジェンスに練り込まれており、非常に見応えがありました。

また、スピーディなダンス系ミュージックとの相乗効果が素晴らしく、リズムよく進んでいくアクションはスタイリッシュで良かったと思います。MX4Dや4DXに最適化された空間の使い方、演出も光りました。

実際に、Filmarks、映画.comなどでの評価も概ね高評価となっていますが、感想コメントでも、高評価の根拠としては、「アクションシーンの練り込まれた演出」がほとんどでした。(あとは浜辺美波かわいい・・・とか/笑)

その反面、シナリオ、ストーリーは破綻気味?

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アクションは本当にキレキレで凄いんだけど・・・
引用:映画『亜人』予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

アクションシーンに重きを置きすぎたのか、その反面、ストーリーはかなり大味で、各キャラクターたちの設定や心理描写もかなり割り切って描かれていました。この適当さは、確信犯的な割り切りなのでしょうか。

パンフレットを良く読み込むと、(うがった見方かもしれませんが)脇役の千葉雄大や城山優などは、当初手渡された脚本や、その場のノリで簡単に変わっていく演出に違和感を感じていたことが行間から読めます。キャラ造形の点で原作へのリスペクトが足りていない部分を、現場レベルで細かく修正を試みていたのだろうなと思わされる記述が印象的でした。

細かく指摘しだすとツッコミどころ満載なのは、なんとなく本広克行監督の代表作「踊る大捜査線」シリーズのご都合主義的なストーリー進行の「悪い部分」を踏襲しちゃっているような気がします。

原作をの登場人物を間引き、ストーリーをシンプルに整理・改変するのはかまわないんです。だけど、極限まで脚本・ストーリーを精査して厳選できていたか?というと、かなり疑問符が・・・。

というのも、妙な小ネタがやたら多いのですよね。原作を読んでないと笑えないし、細かい編集段階を経て小ネタを残した割には、それを効果的に伏線として使うことができていない点はいただけないです。一体この小ネタやエピソードはなんの役に立っているんだろう?と思う箇所が何箇所もあります。

例えば、ほんの一例として挙げるなら、以下のような箇所です。

・戸崎が、「トザキではない。トサキだ。」と訂正するセリフ
・おばあちゃんの家での「雨奇晴好」の意味を聞くシーン
・亜人のニュース報道に混じって、ヒカキンが2度も出て来る。
・フォージ重工ビルでの平沢を看取るシーン

これら小ネタが、少しでもいいのでクライマックスのアクションシーンや、主人公たちの心情描写の手がかりになるのであれば、まだいいのですが、全く生きてない・・・。

これだけの小ネタを残すのであれば、もっと1分1秒でも主要人物のキャラやエピソードをを掘り下げる演出をしてほしかったかなと思います。小ネタじゃなくて、原作から盛り込まれるべき大事なエピソードは、探せばいくらでもあったはず。単にアクションシーンが凄い!っていうだけだと、やっぱり何年も先まで繰り返しDVDで鑑賞される作品として残り得ないと思うので。

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5.映画「亜人」に関する11の疑問点~伏線・設定を徹底考察!~

感想でも書きましたが、本作はマンガ原作をかなり「アクション映画」寄りに翻案して制作されたため、主要人物たちの細かい設定やストーリーの伏線については、説明がカットされたり、大幅に省略されています。そこで、より本作を深く理解するため、マンガ原作・小説ノベライズ作品を参照しながら、主要な疑問点を補足説明したいと思います。※ここからは、ネタバレ要素が強く入ります。ご注意下さい。

疑問点1:「亜人」とはどういう存在なのか?

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引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

亜人とは、死ぬことのできない新しいタイプの人類です。肉体が損傷を受けても、一旦死ぬことで、元通りに体を再生できる能力を持ちます。26年前、アフリカで発見されてから、永井圭を含め、公式に認定された亜人は全部で47体。

日本政府は、「亜人管理委員会」という秘密組織を立ち上げ、そこで表向きは亜人を「保護」するとしながら、裏では人体実験を繰り返し、特定企業や政府のモルモットとしていました。

原作マンガの設定によると、人間は、ある日突然変異的に「亜人」へと変化するようです。圭のように、幼少時に「亜人」化していたにも関わらず、交通事故に遭うまで自覚がなかった亜人もいます。

また、本作では採用されていない設定ですが、「フラッド現象」といって、感情が急激に高まった際に、まれに亜人が一度に多数のIBMを出現させることがあります。その際、周りにいた人間もまれに亜人化することがあるようです。

疑問点2:亜人の肉体再生の条件とは?

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頻繁に「リセット」をかける佐藤
引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

戦闘などで傷ついた亜人の肉体は、傷ついたそばから再生が始まるわけではありません。傷つけば、普通に血も出ますし痛みで苦しみます。肉体の再生が始まるのは、あくまで完全に一旦心臓がストップし、「死亡」した時なのです。この時、亜人に備わった超然的な力で肉体は完全復活し、体内に残された銃弾などの異物は完全に分解されます。

だから、亜人たちは戦闘で重症を負うと、そのままの状態で苦しんで戦うのではなく、敢えて一旦死亡して「リセット」することで、完全体として復活して戦闘を継続することを選んでいたのですね。

疑問点3:圭の他に政府に拘束されていた2人の亜人とは?

冒頭で圭が政府に拘束されていた時、全身に巻き付いていた包帯の頭部に「003」と書かれていました。つまり、圭は日本人として公式に保護(拘束)された3例目の亜人だったのですね。

ちなみに、映画での設定では、1例目は佐藤、2例目が佐藤と行動をともにした田中功次でした。1例目の佐藤は20年間、2例目の田中は、佐藤に救出されるまでの間、2年間、それぞれ政府に拘束されて、残忍な人体実験をされました。

疑問点4:IBM(または黒い幽霊)とは何なのか?

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引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

映画中では、単に「黒い幽霊」とか「クロちゃん」と呼ばれていた、人間離れした恐ろしい見た目の謎の生命体。これは、IBM(Invisible Black Matter)と呼ばれており、亜人の持つ一種の「分身」みたいなものです。IBMは、黒色のIBM粒子から構成されます。

IBMの戦闘力は並外れて強く、その亜人が「火事場の馬鹿力」を発揮した時の強さを体現しているとマンガ原作では説明されています。

IBM粒子やIBMは一般人には見えず、亜人だけに見えます。その特徴をまとめると、以下の通りとなります。

・亜人が強い感情を抱いた時に出現する
・1日1回~2回、1回10分程度しか出現させることができない
・弱い自我を持ち、亜人の感情に応じた振る舞いをする
・犬のように訓練して飼いならすことができる
・亜人によってはIBMを出せない者もいる

長期間、自らのIBMに好き放題させていた圭は、最初の佐藤との対決の際に偶発的にIBMを出現させます。しかし、圭のIBMは言うことを聞かず、全くコントロールできませんでした。田舎の民家に隠れていた時、圭が自らの亜人を手なづけようと訓練するシーンがありましたが、この訓練を経て、最終対決ではIBMとの完璧な連携ができるようになっていたのですね。(手なづけるのが早すぎるきらいはありましたが)

また、全ての亜人がIBMを出せるわけではなく、奥山などはIBMが使えません。その一方で、圭は1日に何度も亜人を呼び出すことができる生まれ持っての特異体質でした。

疑問点5:佐藤の正体とは?

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引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

本映画では、佐藤は初めて日本政府に公式に認定された1例目の「亜人」でした。彼は、亜人管理委員会に保護と言う名の下、20年間もの間監禁されて、毎日のように切り刻まれ、人体実験のモルモットになってきました。

その後、どうやって逃げ出したかは映画中では明らかにされていません。佐藤は無類のゲーム好きで、アジトでは度々携帯型ゲーム機に夢中になっていました。元々のサイコパス的な気質なのか、監禁時に性格が歪んだか、その性格形成がどのようになされたかは明らかにされていませんが、一連のテロや永井圭との戦いも、「ゲーム」として楽しんでいる狂人でもあります。(※原作の設定は異なるため、後述)

疑問点6:圭の家族構成は?両親との関係はどうなっているの?

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実写映画で登場する圭の肉親は妹の慧理子だけ
引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

映画中では描写が省略されていましたが、現在の永井圭の家族は、母、妹(慧理子)との3人暮らしです。父は優秀な外科医でしたが、腎不全の患者を救うために、禁断の臓器売買に手を出して罪を犯しました。その時、同じく救命専門医だった母は、子どもたちを守るために即座に夫と離婚しています。

ちなみに、慧理子は生まれつき原因不明の難病に犯されており、圭は妹を救うために、父と同じく医者を目指したのでした。

疑問点7:戸崎優とはどんな人物なのか?その謎は?

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設定は用意されていたっぽいが、映画では省略された
引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

戸崎は、政府の亜人管理委員会の委員長として、亜人保護や人体実験の推進に関わってきました。プライベートで弱みを握られた戸崎は、政府高官や財界のトップの意向の通り、亜人を利用した人体実験や商品開発の斡旋・管理をやらされていました。彼には、重病の許嫁がおり、彼女を救うために莫大な医療費が必要な状況であることを政府筋の高官に見透かされ、半分脅されるような形で委員長の座についていたのでした。

それにしても、「トザキではない。トサキだ」というセリフや、ミントタブレットのヘビーユーザーであるという設定が、今ひとつ作品中で生きていなかったのは少し惜しかったかも。

疑問点8:なぜ佐藤は鉄壁のフォージ重工ビルに侵入することができたのか?亜人復活の条件とは?

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バブルの象徴のようなフォージ重工ビル
引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

原則として、亜人が「寿命」以外で死亡することはありません。その生命力は無限と言っていいほど強く、亜人が死亡した時、少しでもその死体の肉片が残っていれば、一番大きな肉片を起点にして全身を復活させることができます。

脳を含む頭部が完全破砕されても、残された別の部位から復元します。この時、元の記憶は復活して新しく造られた脳に引き継がれるため、人格としての連続性は保たれるようです。

佐藤は、この原理を応用して、フォージ重工ビルへの潜入に成功しました。20年間の人体実験で「死」についての感覚が麻痺した佐藤ならではの、冴えたやり方ではありますが、異常な作戦でした。

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フォージ重工ビルの攻防戦で、佐藤は事前に左腕を切り落として、バッグに入れて田中たちにフォージ重工ビル内に事前に運ばせた上で、自らは木材の破砕機で、全身を切り刻みました。これにより、フォージ重工ビル内の左腕を起点として復活を果たし、自らを「転送」することに成功したのでした。

ちなみに、「転送だよ、ミスター・スポック」という発言は、アメリカのSF映画「スタートレック」で出てくる転送装置にかけています。これからぐちゃぐちゃになって破砕機で死亡する前に軽口を叩く余裕が、彼の異常性を示していますね。

疑問点9:特殊神経ガス「AJVX」とは?

映画オリジナルで登場した、微量でも大量の人間を殺傷できる、非常に致死性の高い神経ガスです。フォージ重工社が、亜人として20年間拘束した佐藤を使った人体実験で開発に成功しました。開発が非常に難しく、フォージ重工社の社内にしか存在しないという設定でした。(そんな危ないものが、普通に社長室の金庫にあるって、、、)

佐藤は、自らを苦しめた人体実験を通して開発された猛毒ガスを敢えて使って人々を殺害することで、復讐しようとしていたのですね。 

疑問点10:政府の特殊部隊「対亜」とは?

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ラストシーンで辛うじて影だけ写った「対亜」兵士
引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

陸上自衛隊内部に設けられた、亜人の殲滅を第一目的とする秘密部隊「対亜人特選群」の略称です。映画中、警視庁特殊急襲部隊(SAT)が佐藤の前に全滅してしまったため、戸崎の要請により、フォージ重工ビルの最終局面において、土壇場で上空から投入されました。

ただし、戸崎が圭に秘密裏に政府と約束した「対亜」の投入条件が、佐藤だけでなく圭も合わせて拘束するという条件だったため、佐藤・圭の両者に対して無差別に液体窒素が噴射されたのでした。

疑問点11:ラストシーン~エンドロールの解釈は?続編制作に含みを持たせたのか?

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液体窒素で急速冷凍される二人
引用:映画『亜人』公式予告【2017年9月30日公開】 - YouTube

ラストシーンでは、永井圭が強く要望していた「対亜」部隊がヘリで到着し、組み合っている圭と佐藤をまるごと液体窒素で固めて破砕することで、二人の亜人をリセットさせず活動停止に追い込むことに成功したかに見えました。これはマンガ原作にはない、上手いアイデアでした。

しかし、「対亜」が液体窒素を噴射する直前に、圭はとっさの機転で片腕を切り落として、復活できるようにしたのです。「対亜」による現場処理が一段落したところで、圭は復活し、そのままビルを落下して逃亡していきました。

問題は、エンドロール中に、誰かの手が、佐藤のハンチング帽をそっと拾うシーンが挿入されていたことです。このハンチング帽を拾うシーンについて、第1感では結局佐藤がどうにかして復活したのでは?と思わされましたが、映画パンフレットでの本広監督のコメントによると、そうでもないようです。

わからないですよ。全然違う亜人があの場所にいたとか、対亜人チームの中に亜人がいたとか、いろいろな想像ができるようにはしてあるんです。だから、続編がもしできたときに、別の人物があのハンチングをかぶっていて、”えー、綾野剛じゃないんだ~!?”みたいなことになる場合もある(笑)(以下略)

6.マンガ原作との相違点は?

主な相違点1:圭の性格・年齢が若干違っている

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マンガ原作版ではかなり若い
引用:「亜人」原作マンガ第4巻より

映画版では、東都大学病院の研修医として働く26歳という設定でしたが、マンガ原作では、圭は将来医学部を目指す高校生。母から受け継いだ冷たく合理的な性格に、序盤はどうにも感情移入しづらいのですが、「亜人」としての戦いを経験するうちに、父親譲りの「熱さ」をゆっくり取り戻していきます。このあたりの圭の成長・心境変化を様々なエピソードで少しずつ描いて見せていくのがマンガ原作やアニメの見どころですが、映画では単に「冷静で合理的」で「妹思い」と単純化されています。

主な相違点2:佐藤の性格・設定が大幅に違っている!

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亜人、佐藤の誕生した瞬間
引用:「亜人」原作マンガ第10巻より

映画版では、佐藤は政府に20年間人体実験をされた「第1の亜人」という扱いですが、マンガ原作では、元々母が中国人のアジア系アメリカ人で、本名はサミュエル・オーウェンといいます。

サミュエルは、先天的にある種の人間的な感情が抜け落ちた本物のサイコパスです。それ故、彼は、ベトナム戦争など、人間の心に負荷がかかる過酷な戦場にてその真価を発揮し大活躍しますが、右足を負傷切断し、軍を退役します。

退役後、その戦闘能力を高く買ったアンダーグラウンドな組織に所属する彼の叔父が、サミュエルを日本へ連れてきますが、そこでサミュエルは敵に捕まって銃殺されてしまいます。しかし、そこでサミュエルは「亜人」として目覚め「佐藤」という名前でテロリストとして活動を開始したのでした。

ちなみに、マンガ原作での「第1の亜人」は、中村慎也という若者で、「IBMのフラッド現象」を起こして、多数の監視兵を惨殺して逃走、現在では行方不明となっています(コミック2巻参照)

主な相違点3:登場人物が絞り込まれている

本作は、マンガ原作で登場する重要人物もかなり省略されています。主に省略された人物を紹介します。

・海斗
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引用:「亜人」原作マンガ第1巻より

圭が交通事故に遭って「亜人」と判明してから、政府に追われた圭の逃走を助けた圭の幼なじみ。原作では、圭が政府に拘束されて、人体実験を受けるまでの描写で主役級として描かれますが、映画では全てカットされました。

・曽我部
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引用:「亜人」原作マンガ第10巻より

マンガ原作では、亜人管理委員会内にて、戸崎と協力関係にありつつも、スキあらば戸崎を追い落として自らが亜人管理委員会のトップに成り代わろうとする野心家でした。こちらもカットされています。

・中野 攻
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引用:「亜人」原作マンガ第9巻より
佐藤の呼びかけに呼応し、奥山や高橋らと一緒に厚労省前に集まった亜人のうちの一人ですが、佐藤の危険性を察知し、永井圭サイドの亜人メンバーとして佐藤と対峙します。単純で、バカで、熱い、「少年ジャンプ」の主役のようなキャラクターである中野は、圭とほぼ正反対の性格。ストーリー中盤以降、海斗に変わる圭の相棒役として物語に欠かせない存在となりましたが、映画内ではカットされました。

・圭の母親
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引用:原作マンガ第10巻より

元ERの医師。父が臓器売買で進退極まった時、子どもたちを守ることを最優先に考えて、父と即刻離婚したように、目的達成を第一に考えて、感情を捨てて動ける合理性と行動力を持った、ある意味強い母親。母親とのやり取りは、圭がなぜ合理的で冷たい性格となったのか説得力を持って伝えてくれる超重要なシーンだったはずなので、映画本編で使われなかったのは惜しい・・・。

7.まとめ

マンガ原作でフォーカスされている、謎解き的な要素やダークなサスペンス要素、主人公の成長描写は敢えて捨象され、アクションシーンに特化して制作された本作。原作からの改変・省略が著しいですが、これはこれで形としてアリなのかなと思いました。(詰めは甘いですが)

むしろ、アニメ・マンガ原作とは別の切り口で描かれた新しい世界観の中で、気楽に楽しめる娯楽映画としては、ありなのかなと思います。完成度はともかく、やろうとしていた方向性は良かったと思います。折角なので、是非映画館の大画面で楽しんでみて下さいね!
それではまた。
かるび

8.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

劇場版アニメ3部作コンプリートブルーレイBOX

2015年に映画館で公開された劇場3部作を1つのブルーレイBOXへとまとめた、お得な一枚。TVアニメ版とほぼストーリーは同一ですが、細かい描写やエピソードが少しずつ違っています。総集編的におさらいするためにはぴったりのお得版ボックスです。

マンガ原作「亜人」

現在11巻まで発売中。最新の第11巻では、映画で描かれた「フォージ重工」での攻防戦の先へと進んでいます。連載6年目を迎え、「フラッド現象」や「半亜人化」など、より亜人のより深いディテールや、多彩な登場人物のそれぞれの背景、キャラクターもきっちり掘り下げされてきています。現在、KindleやKoboでは、第1巻が無料配布されています。

劇場版ノベライズ「亜人」

今回の実写映画の脚本に忠実に描かれたノベライズ作品。当初脚本にあったであろう、圭の「母親とのエピソード」や、戸崎のバックストーリーなど、亜人にまつわる各種設定・背景やそれぞれの登場人物の心理描写がしっかり描かれているため、ストーリーとしてはこのノベライズ版の方が映画版より優れていると思います。