あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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「ボストン美術館の至宝展」が素晴らしい!意外な名作揃いで初心者でも楽しめる!【展覧会感想・レビュー】

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かるび(@karub_imalive)です。

7月20日から東京都美術館で開催中の「ボストン美術館の至宝展」に行ってきました。4000年前の古代エジプトの古美術から、日本美術、フランス印象派、現代アートに至るまで、様々な時代・ジャンルのアートから選りすぐった80点の作品がじっくり味わえる展覧会です。

比較的「わかりやすい」作品群が集められたそのセレクションは、アート初心者にもぴったりでしたし、夏休みらしく小学生~中高生がお気に入りの絵をノートに取ったり写生する姿も目立ちました。

早速ですが、行ってきた感想レポートを書いてみたいと思います! 

1.ボストン美術館の至宝展とは

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国外への巡回展や、作品レンタルに非常に積極的なボストン美術館。日本では、毎年どこかで必ずと言っていいほどボストン美術館の作品をフィーチャーした中・大型展覧会が開催されています。

▼過去にもタイアップした人気展覧会は多数!f:id:hisatsugu79:20170722163736j:plain

特に、2012年に東京国立博物館などで開催された『特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」』や、2014年の『ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展』は評判も高く、かなりの動員数を記録しています。

「日本美術」「フランス印象派」など、テーマを絞り込んで開催されるのが一般的な中、今回の展覧会「ボストン美術館の至宝展 ― 東西の名品、珠玉のコレクション」では、敢えてテーマ・ジャンルを絞らず、幅広くボストン美術館の所蔵品を紹介する展覧会となりました。

展示されている美術品は、大きく分けて以下の7ジャンルに分かれています。

・古代エジプト美術
・中国美術
・日本美術
・フランス絵画(印象派、ポスト印象派)
・アメリカ絵画
・版画/写真
・現代アート

行く前は、「それじゃテーマが散漫になっちゃって、焦点がボケるんじゃないのかな」と思っていたのですが、実際に展示されている作品のレベルの高さを見て、そんな杞憂は吹き飛びました。どのジャンルも非常にハイレベルで、むしろ「あー、こんな作品もあるのか!」と唸らされる見事なラインナップでした。 

音声ガイドは竹内結子

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引用:http://boston2017-18.jp/goods/index.html

本展覧会の音声ガイドには、竹内結子が起用されています。聞いてみて非常にびっくりしたのが、その落ち着いた語り口!アナウンサー顔負けのしっかりした読み上げは、奇をてらっておらずオーソドックスですが、内容が染み渡るように頭に入っていきます。

ガイドコンテンツも、解説パネルやキャプションを上手に補完するクオリティでした。合計35分と大容量ですし、これは借りて良かったです。レンタルおすすめですよ。

2.ボストン美術館とは?

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引用:Wikipediaより

ボストン美術館の設立経緯や特徴

ボストン美術館は、1870年に地元ボストンの市民や文化人たち有志が発起人となって設立された、アメリカで4番目に大きい美術館です。1876年開館時、約6000点のコレクションで始まった美術館は、その後も順調に成長を重ね、今では約50万点の収蔵品を擁するまでに成長しました。(企画展も、常に大小合わせて10展くらい同時並行で行われていますし!)

たとえば、ボストン美術館の特徴としては、、、

・日本国外で最大の日本美術コレクションを保有(10万点!)
・フランス国外で最大のミレーコレクションを保有
・印象派/後期印象派の大コレクションを保有
・アメリカ絵画草創期の傑作を多数保有
・4万点超のエジプト古美術コレクションを保有
・ロスチャイルド家のアートコレクションを保有

などなど。

日本とも縁の深い美術館!

ボストン美術館は、日本と非常にゆかりの深い美術館です。特に、明治時代から岡倉天心、フェノロサ、モースらによって収集が続けられた日本・中国の東洋美術コレクションは10万点以上となりました。明治初期の廃仏毀釈運動により危機的になった仏教美術作品や、寺院に所蔵されていた日本美術作品は、ボストン美術館のおかげでかなりの数が保全されたという経緯があります。

▼天心園(ボストン美術館内)
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引用:Japanese Garden, Tenshin-en | Museum of Fine Arts, Boston

1988年には、ボストン美術館の初代顧問を務め、中国・日本美術の大コレクション形成に大きく貢献した岡倉天心にちなんで、天心園という気持ちのいい日本庭園ができました。(行きたい!)

市民やコレクターたちの力で大きくなった

ボストン美術館の凄いところは、開館以来約150年にわたり、一貫して市民たちの力によってコレクションが築かれてきたところです。個人コレクションの一括贈与、寄付金を原資とした作品購入を繰り返すことで、世界屈指の美術館へと成長してきました。本展は、作品とともに、ボストン美術館の発展・コレクション形成に特に大きく貢献したの過去のコレクターたちにも焦点を当て、解説パネルで特集しています。

また、ボストン美術館がオンラインで公開しているアーカイブ作品は346,000点を超え、アートでは世界最大のオンライン・データベースとなっています。(今回出展されている80点のほぼ全てオンラインで公開されています)

3.ボストン美術館展の3つの見どころ

みどころ1:ボストン美術館に行った気になれる?全体像を俯瞰できる総合展

▼ボストン美術館の館内写真
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Wikipediaより

本作は、東京にいながら「ボストン美術館」のエッセンスを短時間で味わえる総合展です。何でもかんでも適当に集めたわけではなく、ボストン美術館が一番「強み」を持つ部分のコレクションをいいとこどりして厳選した展示会なのです。 

ちょっと強引な言い方かもしれませんが、東京にいながらにして、ボストン美術館に行った気になれる、そんな展覧会だと感じました。そして、今回の展覧会を見て、今度必ず海外で美術館回りをする際は、ボストン美術館を視野に入れよう!と固く決意したのでした。

みどころ2:見逃すな!日本初公開作品たち

今回は、日本画・洋画の大作2作品が「事実上」日本初公開となります。

▼英一蝶「涅槃図」
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引用:The Death of the Historical Buddha | Museum of Fine Arts, Boston

まずは日本画から。江戸中期に活躍した天才絵師、英一蝶(はなぶさ いっちょう)の大作、「涅槃図」が170年ぶりに里帰りしました。

英一蝶は、現代ではそれほど知名度はありませんが、彼の生きた17世紀当時では、岩佐又兵衛、菱川師宣らと同様、江戸の超有名絵師でした。彼は反骨精神旺盛な画家で、一時期はその行き過ぎた風刺画を幕府に咎められ、将軍の代替わりによる恩赦が出るまで10年以上島流しされたという逸話も残っています。

本作「涅槃図」は、経年による傷みが激しく、ボストン美術館でも、17年前に一度公開されたきりだったそうです。ボストンでも見ることがなかなかできなかった作品なのですね。2016年に大規模修復を行い、満を持して日本への里帰りとなったのでした。

そして、初公開2作目はこちら。

▼ゴッホ:ルーラン夫妻の2枚の絵画
(左)郵便配達人ジョゼフ・ルーラン
(右)子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人
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引用(左):Postman Joseph Roulin | Museum of Fine Arts, Boston
引用(右):Lullaby: Madame Augustine Roulin Rocking a Cradle (La Berceuse) | Museum of Fine Arts, Boston

ゴッホがフランス・アルルに住んでいた時に非常に世話になった老夫妻を描いた絵画。よく見ると、左と右では作風が違っていますよね。右の夫人の絵は、有名な「ゴーギャンとの共同生活」の後に描かれた作品と見られ、デフォルメされた姿や黄土色の顔つきは、あからさまにゴーギャンの影響を受けているような感じもして面白いです。

みどころ3:珍しい?!19世紀のアメリカ絵画

アメリカのアートといえば、ポップアートや抽象表現主義といった「現代アート」に名作が多いイメージですが、今回は、まとめてアメリカ絵画の草創期の作品群を堪能することができます。現代アート以前のアメリカ絵画作品を見れる機会は意外に少ないので、今回まとまってチェックできる貴重な機会です!

▼ヘンリー・レーン「ニューヨーク港」f:id:hisatsugu79:20170722151528j:plain
引用:New York Harbor | Museum of Fine Arts, Boston

港の風景を描くスペシャリストだったというヘンリー・レーンの写実絵画。今と違い、ニューヨークもかなりのんびりした雰囲気です。19世紀のアメリカの牧歌的な様子が伝わる、技巧的な作品でした。

▼オールストン「月光」
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引用:Moonlight | Museum of Fine Arts, Boston

絵画修業でイタリアやフランスの色々な風景画を描いたというオールストン。幻想的な田舎の風景は、見どころたっぷりでした。1819年の作品です。

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4.ボストン美術館展で特に印象的だった作品を7点紹介!

その他、個人的にこれは素晴らしかった!と思えた作品を、ここでいくつか紹介したいと思います。作品画像を見て、これは!と思ったら是非現物を見に行ってくださいね。現物は、画像より断然素晴らしいですから!

4-1.周季常「五百羅漢図」

▼左:観舎利行図 右:施財貧者図f:id:hisatsugu79:20170722155306j:plain
引用(左):Lohans watching the distribution of the relics | Museum of Fine Arts, Boston
引用(右):Lohans bestowing alms on suffering human beings | Museum of Fine Arts, Boston

元は京都の大徳寺で大切に保管されていた、南宋時代に製作された全100幅の「五百羅漢図」シリーズの一部です。明治の廃仏毀釈運動で荒廃した寺院を立て直すため、フェノロサ、岡倉天心らの仲介により、ボストン美術館とフリーア美術館へ合計12幅が売却されたのでした。

それにしても、この絵、12世紀の作品とは思えない状態の良さです!幸いなことに、まだ日本には82幅現存しており、その全ては重要文化財指定を受けています。いつか残りを全部見てみたいなぁ。。。

4-2.曾我蕭白「風仙図屏風」

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引用:Transcendent Attacking a Whirlwind | Museum of Fine Arts, Boston

「ボストンを見ずして蕭白を語るな」と言われるくらい、ボストン美術館で有力作品が多数所有されている曾我蕭白の作品。2012年の東京国立博物館でのボストン美術館展で見られた作品とは違う作品2点が来日していますが、着想の奇抜さ・スケール感・妙なかわいさは見飽きないです!

4-3.ミレー「編み物の稽古」

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引用:Knitting Lesson | Museum of Fine Arts, Boston

日本では、山梨県立美術館のコレクションが有名ですが、フランス国外では、ボストン美術館が最大のミレーコレクションを保有しています。その数、関連資料も合わせて合計187点!

今回来日しているのは3点ですが、この「編み物の稽古」は、ミレーが絵の画題を求めて滞在したフランスのバルビゾン村の庶民の生活情景を描いた傑作。なお、今回は展示されていませんが、余程ミレーはこのテーマが気になったのか、同タイトルで別バージョンも描いています。

▼ミレー「編み物の稽古」(同名タイトル)
※今回展示ではありません
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引用:Knitting Lesson | Museum of Fine Arts, Boston

4-4.ブーダン「ヴェネツィア、サン・ジョルジョ島から見たサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂」

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引用:Venice, Santa Maria della Salute from San Giorgio | Museum of Fine Arts, Boston

海辺の風景が本当に美しいブーダンの作品。ブーダンは、日本ではそれほど有名ではありませんが、モネに屋外で絵を描くことの重要性を教えた「先生」として紹介されることが多いですね。この風景画、素晴らしかったです!

4-5.モネ「ルーアン大聖堂、正面」

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引用:Rouen Cathedral, Façade | Museum of Fine Arts, Boston

モネが1日の間に光が変わりゆく姿を捉えようと、1892年~1894年にかけて約30枚描き続けた有名な連作シリーズ。その1枚が今回来日しています。

4-6.ジョージア・オキーフ「赤い木、黄色い空」

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引用:Red Tree, Yellow Sky | Museum of Fine Arts, Boston

アメリカ20世紀を代表する女性作家、オキーフ。ちょうどこれは抽象と具象の境目くらいの作品です。砂漠の山の上に立つ奇妙な形の木の切り株を描いた作品ですが、見ていると色々な姿に見えてきそうです。ダリの作品だって言われたらわからなかったかも。

4-7.「メンカウラー王頭部」

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引用:Head of King Menkaura (Mycerinus) | Museum of Fine Arts, Boston

1905年、ボストン美術館は、美術品を購入するのではなく、そのためのお金をエジプトでの考古学調査支援に当てる思い切った決定をしました。その投資は見事に大当たり。ジョージ・アンドリュー・ライスナー博士の指揮の下、発掘に成功した多数の古代エジプト美術品がエジプト政府からボストン美術館に寄贈されることになったのでした。

このメンカウラー王の頭部は、ギザの第3ピラミッド内部から見つかったもので、紀元前25世紀頃の作品です。約4500年前にこのレベルのものが作れたエジプト文明はハンパないなぁと思いながら見ていました。美しい頭部像です! 

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5.混雑状況と所要時間目安

▼平日は空いていました
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僕が行ったのは、開催2日目、7月21日の午後15時~17時。平日午後なので、まだ落ち着いてゆっくり見ることができました。入場制限が入るほどではないと思われますが、夏休みのお盆期間や、シルバーウィーク、会期終盤になると非常に混雑しそうです。是非、会期前半に行くか、週末の夜間延長を狙うなど、空いている時間帯を狙ってみて下さい。

ちなみに、展示点数がやや少なめなので、所要時間としては60分~90分前後になると思います。僕はちょっとじっくり見たので125分かかりました。

6.非常によくまとまった公式図録は「買い」!コスパも最強!

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今回の「ボストン美術館の至宝展」は、美術館限定販売となっている「公式図録」のクオリティが非常に高いです!

まず、ひとつひとつの作品への解説がくわしいし、非常にわかりやすい!知識ゼロの初心者でも全然OKです!

▼作品と一緒についている詳細解説f:id:hisatsugu79:20170722161436j:plain

また、リファレンス機能だけでなく、コラムや読み物が非常に充実していました。こちらも読み応え抜群!単に「図録」として保管するだけでなく、より詳しい知識がほしいアートファンの要望にも答えた、かゆいところに手が届く工夫が素晴らしい!

▼コラムが充実!
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しかも、この内容でなんと1900円!2000円を切ってくるとは凄い!B5サイズで軽いし、場所も取らないし、非常に良く頑張っているなと思いました。Amazonや楽天では買えませんので、見かけたら会場でサクッと買い物かごに入れちゃいましょう!

7.まとめ

お気に入りの一枚を探すもよし、新たな好みのジャンルと出会うもよし、色々な楽しみ方ができるボストン美術館展。ボストン美術館のコレクションの凄さが良く分かる、素晴らしい展覧会でした!

それではまた。
かるび

「ボストン美術館店@東京都美術館」展覧会開催情報

「ボストン美術館の至宝展」は、東京展のあと、神戸・名古屋と国内2箇所を巡回予定です。

◯美術館・所在地
東京都美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園8−36

◯最寄り駅
JR「上野駅」公園口より徒歩7分
東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分
京成電鉄「京成上野駅」より徒歩10分
◯会期・開館時間・休館日
9:30~17:30
※金曜は20:00まで
※7月21、28日、8月4、11、18、25は21:00まで
※入室は閉室の30分前まで
◯公式HP
http://boston2017-18.jp/
◯Twitter
https://twitter.com/BOSTON_TEN
◯美術展巡回先

■神戸市立博物館
2017年10月28日~2018年2月4日
■名古屋ボストン美術館
2018年2月18日~7月1日