あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】期待以上!映画「本能寺ホテル」の感想とあらすじ・伏線の徹底解説!万城目学降板騒動を吹き飛ばす快作でした!

【2018年2月10日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。

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1月14日に封切られた映画「本能寺ホテル」を朝一の上映で見てきました。酷評が目立った事実上の前作、「プリンセス・トヨトミ」の製作チームが再結集して作られました。前作「プリンセス・トヨトミ」が若干がっかりだったので期待していなかった分、前作よりは良くなっている点が目立ち、満足しました!

早速初日に気合を入れてみてきましたので、以下感想を書いてみたいと思います。
※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「本能寺ホテル」の基本情報

<「本能寺ホテル」公式予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】鈴木雅之(「プリンセス・トヨトミ」

2.主要登場人物とキャスト

主役とヒロインは、「プリンセス・トヨトミ」からのそのままのスライドとなる本作。特に、繭子は前作のヒロインと性格もほぼそっくりで、天然系キャラ。

倉本繭子(綾瀬はるか)
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勤務していた会社が倒産し、現在求職活動中。本能寺ホテルにチェックインして、戦国時代にタイムスリップしてしまう。「素」の綾瀬はるかに近い天然系のキャラクターでいきいきと演じているのが印象的。
織田信長(堤真一)
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天下統一を成し遂げた戦国武将。本能寺の変の直前で、タイムトラベルしてきた倉本繭子と出会う。冷酷で非常なキャラクターとして恐れられていたが、異世界から来た繭子の前では、意外に打ち解けて本音も話すようになる。
森蘭丸(濱田岳)
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信長の小姓として、常に信長のそばで仕える。タイムスリップしてきた繭子について、あれこれと気にかけて世話を焼く。これまで蘭丸と言えば例外なく「イケメン」男優が務めるのが通例だったので、このキャスティングは斬新でした。
吉岡恭一(平山浩行)
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京都生まれの建築会社の御曹司で、繭子にプロポーズする。経営者として多忙な日々を過ごすため、心の余裕がない。
吉岡征次郎(近藤正臣)
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恭一の父で、料亭「よし岡」の主人。繭子がタイムスリップする日、妻との銀婚式を控えていた。ストーリー中で、繭子に頻繁に絡み、影響を与える役柄となる。
本能寺ホテル支配人(風間杜夫)
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本能寺ホテルの支配人。謎のキャラクター。ホテルの秘密について、何かを知っているようなミステリアスな雰囲気を醸し出している。
大塚(田口浩正)
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信長の家臣。蘭丸とは正反対に、タイムスリップして突然信長の前に現れた繭子に不信感を持っている。それにしても「大塚」だけとは。下の名前も付けてあげてほしかった(笑)
明智光秀(高嶋政宏)
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信長の家臣。歴史史実どおり、信長に対して1582年、本能寺の変(謀反)を起こす。セリフらしいセリフがなかったのは少し残念。でも定番の台詞「敵は本能寺にあり~!」は迫力があります。

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3.ラスト・結末までの詳しいあらすじ(※ネタバレ注意)

初夏。倉本繭子は、交際中の彼氏、吉岡恭一の両親の金婚式祝賀パーティに参加するため、京都を訪れていた。パーティまでまだ時間があったため、市内で一人観光を楽しんでいた。

散策も一段落して鴨川の四条河原にて休憩していたら、恭一から電話がかかってきた。ランチの予約ができたとのことだ。有名な料亭「よし岡」での食事は今から非常に楽しみだ。

再び街歩きをしながら、織田信長のイラストが入った金平糖をおみやげに購入する。そこまではよかったが、いよいよホテルにチェックインしようとしたら、トラブルが発生。なんと手違いで1ヶ月後に予約が入っていて、今日は宿泊できないという。

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仕方なく、当日宿泊できるホテルを探して京都中を回る繭子だったが、「本能寺ホテル」という名前の、ある古めかしい洋館のホテルを見つけた。早速中に入る。ホテルの中は外観同様レトロな雰囲気で、部屋の真ん中に動かないオルゴールがポツンと置かれていた。

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「ようこそ、本能寺ホテルへ。」フロントに立っていた支配人に宿泊できるか聞いてみたら、部屋は空いているという。繭子は、渡りに船とばかりにチェックインを済ませ、早速部屋へと向かおうとエレベーターに乗った。

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次の瞬間、繭子は見たこともないお寺のお堂の中にいた。えっ?と思って後ろを見ると、エレベーターのドアはどこにも見当たらない。混乱しつつ回りを探っていたら、ある侍風の男にみつかり「何奴?」と怪しまれたが、その男は体調が悪そうだ。

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聞いてみると、その侍風の男は、森蘭丸と名乗った。このあとお館様(織田信長)の開催予定の失敗できない茶会の準備で、朝から胃が痛いのだという。繭子は、ポーチから胃腸薬のビンを取り出して、蘭丸に渡した。

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感謝する蘭丸。そこへ、大塚と名乗る侍が現れ、繭子を見て「また異国の者か」と呟いた。さすがに、繭子も戦国時代にタイムトラベルしたのではないかと思い始める。

まもなく、客人を招いての織田信長主催の茶会が始まった。繭子も、末席で飛び入り参加することになった。茶会では、地元の豪商が、天下の名器「楢柴型月」(ならしばかたつき)を持参してきた。それを見て、豪商から茶器を強引に取り上げようとする信長。

すると、それを見ていた繭子は、唐突に前に出てきて、とっさに信長から茶器を取り返し、豪商に手渡してしまう。普段やりたいことは特に無いくせに、こういうときだけ衝動的に正義感が働くのだ。

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「無礼者!」と怒る信長。家臣と信長に追われ、切られまいとお堂の中を逃げ回り、やがてお堂の端の小部屋に追い詰められてしまう。しかし、間一髪で、その瞬間、繭子は本能寺ホテルのエレベーターの中にいた。元の世界に帰ってきたのだ。

しかし、帰ってくる時に、履き物と胃腸薬、通りでもらったチラシをあちらの世界に置いてきてしまったことに気がついた。

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急遽、近くで代わりの靴を調達して、恭一と約束した料亭「よし岡」へ向かった。なんと料亭の経営者は、恭一の父、征次郎だった。ランチを頂いていると、征次郎がやってきた。かしこまってあいさつする繭子。取引先のトラブルで、恭一が電話をしている間、繭子は征次郎と話し込んだが、初対面なのに征次郎の物腰やわらかな雰囲気の前に、色々と仕事探しの悩みを話す繭子。

恭一は、トラブルで急遽現場に戻らなくてはならなくなったため、繭子は一旦ランチを切り上げて夜までホテルに戻ることにした。ホテルに帰ってきてこれまでの近況を思い出す繭子。

繭子は、今年の3月に会社が倒産して休職中だった。何の取り柄もなく自信もない繭子は、突然職を失い、次に何をしたいのか、何をしたらいいのかわからなかった。そんな中、付き合い始めた建築士の恭一から、唐突にプロポーズされたのだった。友人たちからは、渡りに船だから結婚しちゃえば、とアドバイスされたが、時期的に早すぎる気もするし、本当に恭一のことが好きなのかもわからず、今ひとつ踏ん切りがつかないのだった。

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繭子は、先程体験した不思議なタイムトラベルの顛末をホテルの支配人に話したが、怪しまれて相手にしてくれない。支配人と一緒にエレベータに乗ってみたが、普通に何も起きなかった。再度、一人で乗ってみると、今度は唐突にタイムスリップした。

あれ以後、突然消えてしまった繭子を探し、信長の部下たちは寺の境内中を捜索していたようだ。大塚とばったり出くわして、繭子は捕らえられ、信長の前に連れてこられる。

繭子は、手に持っていた金平糖をお土産として差し出した。信長や家臣たちは、それを見て、貴重な嗜好品である金平糖を繭子が大量に持っていることに驚く。「どこから来たのか」と信長に聞かれ、咄嗟に「江戸から来た」と答える繭子。

そして、繭子は信長に対して「部下が胃が痛くなるほど緊張していて不幸せそうだ」と爆弾発言をしてしまい、信長を怒らせる。別の部屋に幽閉されることになってしまった。

繭子は、そこで見張り番に「ここは何ていう寺?」と聞き、今いるところが1582年6月1日の本能寺であることが判明。繭子は、衝動的に信長に「本能寺の変」について教えてあげなきゃ、と部屋を出て信長の元へ走り出していく。と、そこで、繭子は元の世界に戻った。

またくつを1582年に置いてきてしまったので、もう一度別の靴を買い直して恭一と恭一の同級生のカップルと合流した。鴨川沿いのウェディングパーティ会場の下見も兼ねて、そこで少しお茶をした。

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恭一とのデートが終わり、一旦ホテルの自室へ戻ろうとした時、3度目のタイムトラブルが起こった。今度は一人でいる信長と唐突に鉢合わせしてしまった。信長の誘いで、着物に着替えて京の街を二人で練り歩きながら、信長の信念や真っ直ぐな性格に心惹かれる繭子だった。

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信長と街歩きから帰ってきて、繭子は信長の家臣たちと振り振り毬杖(ぶりぶりぎっちょう)という町人に流行っているまり遊びを楽しんだ。あとで信長も合流し、楽しく午後の時間帯をすごした信長と繭子達。

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夕刻になり、繭子は迷ったが、信長に「本能寺の変」のことを伝えた。信長を恨んだ明智光秀の謀反が起きて、亡くなってしまうので、逃げてください、と伝えたが、信長は「了解した」と答えるだけだった。

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そのすぐあと、繭子は元の世界に戻ってきた。着物から着替え直して、恭一の父、征次郎の金婚式に出席した。実は、征次郎はちょうど少し前、妻のすみえを亡くしていたのだが、生前のすみえの強い意向を尊重し、妻の遺影を持って金婚式を実施した。

金婚式のスピーチで、もう一度原点に戻って、高級料亭「よし岡」を閉めて、大衆食堂を再度開きたいとプランを話す征次郎。息子の恭一にも打ち明けたことがない、サプライズ発表だった。そして、その潔さと熱意に心打たれる繭子だった。

金婚式がお開きになり、本能寺ホテルの7Fラウンジで飲み直すことになった繭子たちだったが、どうしても本能寺の信長がその後どうなったのか気になって仕方がない。これまでのタイムトラベルがどうやって起きたのかよくわかっていない繭子は、支配人に「どうやったらタイムトラベルできるのか」と必死に食い下がり、金平糖を食べて再度タイムトラベルを果たした。

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本能寺に戻ってみると、すでに境内に火が回り、明智光秀が信長の元に迫っていた。繭子からの情報を聞いても、信長は逃げずに自害することを選んだのだ。蘭丸と合流し、火の手を避けながら信長のいる部屋へ向かう繭子。

信長の部屋に行くと、部屋の中央には酒と塩が用意されていた。運命を悟り、自害する直前だったのだ。豪商から取り上げた茶壺を返し、繭子に最後の別れの言葉をかわす信長。後の天下統一の計画については、秀吉に密書を渡して託したので、もうこの世に未練もなかった。

一方、現代へ帰ろうとするが、肝心の帰り方もまたわからない繭子。火の手が回り、絶体絶命になった所で、繭子はなんとか現代へ帰還した。フロントの呼び鈴を鳴らされた時に戻れる仕様だったのだが、支配人が呼び鈴を掃除していた時に、呼び鈴を落としてしまい、偶然呼び鈴をならすことになってしまったからだった。

ホテルの7Fラウンジに戻ると、恭一が一人で待っていた。恭一から「婚約を一旦白紙に戻そう」と伝えられた。翌日、チェックアウトして、金平糖の残りを支配人に渡してホテルの外に出た。街を歩きながら、昨日観光で行った鴨川の河原に座り、ハローワークに「社会科教員」になりたいので登録してくれと電話をした。とうとうやりたいことができたのだ。

そして、河原に座って川を眺めていると、繭子は、隣に信長が座っているような気がした。

一方、本能寺ホテルでは。繭子が帰ったあと、ホテルの支配人は、繭子のやった通り、金平糖を口に含み、オルゴールのネジを巻いてエレベータに乗りこんだ。そして、エレベータのドアが開いた時、そこには驚くべき光景が広がっていたー。

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4.感想や評価(※ネタバレ有注意)

4-1.タイムスリップものとしてしっかり楽しめる作品

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「本能寺の変」という、日本人なら大半が知っている歴史事件の直前の京都にタイムトラベルするという「わかりやすさ」と「インパクト」のお陰で、世代を超えて楽しめる王道的な作品になりました。(実際当日の客層も、小学生から年配の方まで幅広かった)

これに加え、過去に大河ドラマ、歴史ジャンルに沢山出演しており、かつ天然キャラでもいける綾瀬はるかを主演に起用したことも大きかったです。大河ドラマ以降、演技力に磨きがかかって、安心して見ていられる作品でした。

タイムトラベルものは、細かい時代考証(言葉遣い、史実との差異、服装など)を突き詰めていくとどうしてもアラが出てしまうもの。でも、少々のディテールの甘さは「まぁ綾瀬はるかの天然キャラだし、割り切って楽しむかな・・・」と許せてしまうところも大きかったと思います。

信長は「天下統一」という夢を秀吉に託し、自分の運命を受け入れて自害して果てますが、それが決して悲劇で終わらず、「異世界」での信長との交流が、繭子の中の思いを揺り動かし、最後に繭子がやりたいことを見つけることに成功する、という前向きな結末も良かったです。

4-2.プリンセス・トヨトミと比較しての評価

事実上の前作とも言える「プリンセス・トヨトミ」からは格段に良くなっていました。

荒唐無稽な設定が多い万城目学の作品は、小説ならではの「万城目ワールド」が楽しいのですが、その反面映像化がかなり難しいです。前作は、原作の設定を尊重しすぎて、厳しい作品になってしまいましたが、今回は、その「原作」という縛りがありません。

主演「綾瀬はるか」ありきで、映画のために最適化してアテ書きされた脚本は、流れ的に無駄な点が削ぎ落とされて起承転結がハッキリしました。

4-3.やや自己啓発臭のするテーマ「自己実現」も嫌いではなかった

今作は、やりたいことがわからず、行動に主体性を持てない繭子が、異世界で信長と出会い、現実世界では恋人の父、征次郎と交流し、交互に刺激を受けることで最終的に「自分のやりたいこと」を見つけ出す、という自己実現的な成長譚でもあります。

信長に「やるかやらないかただそれだけだ」「誰もやらないから、儂が(全国統一を)やった」と語らせ、征次郎に「やりたいことがなければ見つかるまで待てばいい」「何歳からでも挑戦できる」と諭されるなど、わかりやすく各キャラクターが自己啓発してくれる流れは、やや安っぽい感じはしますが、別に嫌いではなかったです。

僕も、40歳になるまでやりたいことが見つからず割と人生を漂流してきた自覚があるので、フラフラしている繭子のもどかしさがすごくわかりますし、スッと感情移入できました。

4-4.やりたいことを見失ったら、自分の原点に立ち返る大切さ

今作では、信長、征次郎、繭子ともに自分の原点に立ち返って、やりたいこと=人生の目標を再度見つけ出していましたね。

家臣から極度に恐れられていた信長は、繭子に指摘され、全国統一して皆を幸せにする「原点」を思い出しました。征次郎は、料理人を志した当初の「お客さんの笑顔を近くで見たい」という思いを貫徹するため、ゼロから大衆食堂のオープンを決めました。

そして、この二人から啓発された繭子も、学生時代に一度は取得した教員免許を活かす形で、「歴史」の教師を目指すことになりました。やりたいことがなくて、モヤモヤしている人には、【原点に立ち戻り行動してみること】の大切さが伝わったのではないでしょうか。 

4-5.京都観光映画としての魅力

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今回のロケ地は、1582年、現代ともに、京都市内の様々な場所で撮影されていましたね。ざっと覚えている範囲で挙げていくと、八坂神社、仁和寺、妙心寺、神護寺、東福寺(1582年の本能寺のロケ地)、渡月橋、ねねの道、祇園、南禅寺、今宮神社など、有名な観光スポットを惜しげもなく使っていましたね。

特に、東福寺の境内は映画内で本能寺として使われており、あとで聖地巡礼してみたくなりました。昨年末から、「古都」、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」など、京都ロケの映画が集中的にリリースされていて、京都好きの自分としては嬉しい限りです。

★参考記事★
【映画レビュー】映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の感想と解説

5.伏線や設定、用語などの解説(※ネタバレ有注意)

5-1.タイムスリップする条件(行き・帰り)

繭子が信長のいる1582年6月1日の本能寺にタイムスリップして戻ってくる条件は、映画を見ていると比較的わかりやすいですが、一応まとめておきますね。

<現代→1582年>
・ロビーにおいてある古いオルゴールが動き出し、エレベータで金平糖を食べる
<1582年→現代>
・フロント前に置かれている呼び鈴が鳴らされる

5-2.金平糖(こんぺいとう)に信長はなぜ驚いていたのか

金平糖は、カステラやボーロなどと一緒に、16世紀中盤にポルトガルのキリスト教宣教師とともに日本に初伝来した南蛮菓子です。当時、砂糖が貴重だった日本では、ごく限られた貴族や有力武将など、富裕層でも少量しか手に入れることができませんでした。その貴重な金平糖を、繭子が無造作にたくさん持っていたので、目の色が変わったのだと思います。

ちなみに、映画中で使われた金平糖の「緑寿庵清水」は実在する京都老舗のお店で、繭子が金平糖を購入するシーンも、緑寿庵清水の実店舗でロケをしたそうです。

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5-3.ぶりぶりぎっちょう(振振毬杖)とはなんだったのか?

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3回目のタイムスリップ時、夕刻にかけて繭子と信長の家臣団が本能寺の庭でゲートボールみたいな遊びで打つ時に「ぶりぶりぎっちょう!」って言って遊んでいましたね。

この、「ぶりぶりぎっちょう(振り振り毬杖)」は、古くから日本で遊ばれてきたボールゲームの名称です。ゲートボールのスティックのような形状の棒で、木製の玉を打ちあって遊び、平安時代~江戸初期にかけて流行したそうです。

資料を調べたら、山東京伝の「骨董集上編」二巻にぶりぶりぎっちょうについて説明しているページがありました。雰囲気だけでもわかるかなと思います。

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(引用:http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/wo06/wo06_03258/wo06_03258_0003/wo06_03258_0003_p0009.jpg

5-4.豪商から取り上げた茶器「楢柴肩衝」(ならしばかたつき)とは?

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(引用:http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1171

本能寺で開催された茶会で、信長が強引に豪商(島井宗室と思われる)から取り上げた茶器を「楢柴肩衝」(ならしばかたつき)と呼んでいましたね。戦国期、一流武将の嗜みとして信長が積極的に振興・擁護した茶の湯で使われる、ブランド物の中国製茶葉入れです。肩が付きだした形状から、「カタツキ」と呼ばれ、今の金額に直すと数億円以上の超ブランド品でした。

この楢柴肩衝、そして新田肩衝、初花肩衝とあわせ、日本三大肩衝と呼ばれ、一時期は全て豊臣秀吉の手中にありましたが、楢柴肩衝は惜しくも1657年の明暦の大火の際に逸失しました。映画では、信長がぞんざいに放り投げていましたが、1個数億円の希少品なので割れたら大変なことだったわけです(笑)

5-5.映画中で食べていたあぶり餅とは?

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映画中、現代では今宮神社の前で、1582年では、信長と街歩きした際にお店で買って神護寺の階段のところで繭子が食べていた串もちは、「あぶり餅」と言います。きなこと味噌をまぶして、竹串に刺しただんごで、京都では、特に古くから今宮神社の境内で、売られていました。

今宮神社の境内のお店は特に由緒のある日本最古の和菓子屋、と言われています。映画中見ていて、すごく食べたくなりました。

6.まとめ

年末に、当初脚本を担当する予定だった小説家、万城目学の脚本担当からの降板騒動など、直前にネガティブなゴシップがあったにもかかわらず、興収・動員も予想以上の滑り出しとなった本作。

天然キャラ「綾瀬はるか」の地の魅力を上手く引き出した、わかりやすい娯楽映画に仕上がっています。京都好き、歴史好きな人にも楽しめるSF歴史ファンタジーですし、老若男女日本人なら誰でも楽しめる作品です。おすすめ。

それではまた。
かるび

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連書籍・DVDなど

映画「本能寺ホテル」ブルーレイスペシャルエディション

本作のブルーレイ/DVDも発売中。通常の映像特典としての、監督へのスペシャルインタビューや予告編セットに加え、豪華48ページのスペシャルブックレット、美術資料、ロケ地マップ、緑寿庵清水の紹介、フォトギャラリー、歴史コラムなど、特典満載のスペシャル・エディション。スタンダード・エディションより若干お値段は張りますが、歴史好きな人にはこちらが断然おすすめです!

本能寺の変431年目の真実

「本能寺の変」は、日本の歴史で最も有名で、同時にまた謎も非常に多い政変です。信長の遺体や遺品がなぜ出てこなかったのか、秀吉はなぜ中国大返しが可能だったのか?など、まだ解明されていない点が多いと言われますね。この本では、「本能寺の変」だけに焦点を絞り、ひたすらその謎に迫ります。これを機に、実際に史実に興味を持たれた方は、この本がおすすめ!

映画「プリンセス・トヨトミ」

今回の「本能寺ホテル」主役・制作スタッフが同じで、5年前に制作された作品。荒唐無稽ながら、小説世界では妙に説得力もある「万城目ワールド」を上手に映画化できず、原作に負けている部分は確かに目立ちます。ただ、歴史SFファンタジーという点で共通点もあり、リアリティにこだわらず、「ファンタジー」として割り切れるならまぁまぁ楽しめます。

映画「信長協奏曲」

小栗旬が主演で、今作同様「信長」「タイムスリップ」を扱った歴史SFファンタジー。こちらは、主人公の高校生がそのまま信長になりきって活躍します!2016年春の邦画興収No.1作品で、約46億円売上を記録したヒット作。今回もヒットしていますし、やっぱり歴史ファンタジーは「信長」ものは鉄板なのでしょうか?!