あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「ゴーストインザシェル」感想・考察とあらすじ解説/原作を尊重し、ハリウッドで進化を遂げた大作!【実写版攻殻機動隊】

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【2017年4月18日更新】

かるび(@karub_imalive)です。

4月7日に封切られた「攻殻機動隊」をリメイクした実写版映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」を見てきました。思ったより原作に熱いリスペクトを捧げた手堅い内容に一安心。

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」の基本情報

<映画「ゴーストインザシェル」特別予告編>

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【監督】ルパート・サンダース(「スノーホワイト」)
【配給】東和ピクチャーズ
【時間】107分
【原作】マンガ:士郎正宗「攻殻機動隊」他

本作の監督、ルパート・サンダースは、ハリウッド版の実写リメイクを制作するにあたり、インタビューでは押井守版の劇場版「攻殻機動隊」(1995)や、士郎正宗の原作マンガ版 「攻殻機動隊」シリーズを参考に、奇をてらうことなく豊富な資金と技術でゴージャスに先行作品の世界観をリメイク作品として仕上げました。

日本語版、英語版とも予告動画が沢山リリースされていますが、プレイステーションが編集・リリースした、約10分の最長プロモーション・ムービー、再現された世界観や映像美をまとめてチェックするにはぴったりだと思います。時間のある時に、是非チェックしてみてくださいね。

<映画「ゴーストインザシェル」10分間特別予告編>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

2.映画「ゴーストインザシェル」の 主要登場人物とキャスト

「攻殻機動隊/ゴーストインザシェル」の世界において欠かせないキャラである草薙素子、バトー、荒巻はきっちりと原作の雰囲気通り再現されています。惜しいのは、トグサが若干キャラと違い、年を取りすぎかな?という感じ。日本人じゃなくてもいいから、トグサはもう少し若いほうが良かったです。

少佐=草薙素子(スカーレット・ヨハンソン)f:id:hisatsugu79:20170408015403j:plain

原作での草薙素子を意識してか、演技はかなり喜怒哀楽を抑えた半サイボーグ的でフラットな演技。姿形は白人ですが、違和感はなかったと思います。映画「LUCY」で意識体として進化を遂げ、限りなく神に近い存在を演じた経歴や、「アベンジャーズ」でのブラック・ウィドウで鍛えたアクション演技での経験が全てこの作品で結実していました。ゴツ目の体型も、全身義体のサイボーグらしくて良かったんじゃないでしょうか・・・

バトー(ピルウ・アスベック)f:id:hisatsugu79:20170408015709j:plain

ストーリーの途中で負傷し、アニメシリーズで見慣れた両目を義体化した姿へと進化させるアイデアは非常にスマートで良かったと思います。原作では話が進むに連れて義体化が進んでいくバトーならではの変化でした。

荒巻大輔("ビート"北野たけし)f:id:hisatsugu79:20170408015630j:plain

渡辺謙や真田広之以外でも、先日の「沈黙」でのキチジロー役を演じた窪塚洋介など、ハリウッド大作でも日本人俳優の活躍が増えてきましたね。ビートたけしも今作で非常にかっこいい良い配役をもらっているのですが・・・。やっぱり発音が不明瞭なのは年齢のせいもあるんですかねぇ。

オウレイ博士(ジュリエット・ビノシュ)
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実写版でのオリジナルキャラクター。ハンカ・ロボティクス社で全身義体化を推進する極秘プロジェクトの責任者として、深く大佐とかかわっていく。

クゼ(マイケル・カルメン・ピット/写真左)f:id:hisatsugu79:20170408020738j:plain

「攻殻機動隊SAC 2ndGIG」で素子が追いかける存在として描かれ、今作でも似たようなニュアンスで中盤以降のキーマンとなっていくクゼ。

トグサ(チン・ハン)
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どういうわけかあまり見た目から若さを感じないのですが、それもそのはずで、演じるチン・ハンの実年齢は、今年48歳。トグサって原作ではその半分くらいの年齢で、公安9課で唯一の義体化していない最年少メンバーなんじゃなかったでしたっけ?。今作ではモブではなかったですが、あまり活躍する場面はありません。だからといってちょっとオッサン過ぎないですか?(笑) 

その他、サイトー、ボーマ以下、公安9課のメンバーは「そこにはいるんだけど限りなくモブに近い」空気のような存在でした。まぁバトーと荒巻、トグサがちゃんと存在感があるのならこの辺の割り切り描写は尺の短い映画だし、仕方ないかなとも思います。

3.結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ注)

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3-1.ミラ・キリアン少佐の誕生と公安9課への配属

2069年。とあるアジアの巨大都市において、軍需企業ハンカ・ロボティクス社は、政府との共同プロジェクトにおいて、脳以外の全身をサイボーグ化(=義体化)した人間兵器の開発を推進していた。

プロジェクトNo.2571と名付けられた極秘プロジェクトで、とうとう人間の脳移植による全身義体化に成功した個体は、ミラ・キリアンと名付けられた。ハンカ社の開発推進責任者であるオウレイ博士は、目覚めたばかりのミラを愛おしそうに見つめていた。

1年後、ミラ・キリアン「少佐」として電脳テロ犯罪を取り締まる公安9課に配属され、多忙な業務に邁進していた。その日も、電脳テロを未然に防止するため、少佐はアフリカのある国の大統領と、ハンカ社のオズモンド博士の会食を監視していた。

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やがて、オズモンド博士が会食中に給仕していた芸者ロボットに襲撃されると、公安9課の荒巻部長の制止を振り切り、少佐は窓から襲撃現場へと侵入し、芸者ロボットを一掃することに成功した。しかし、オズモンドは芸者ロボットに殺されてしまった。芸者は、少佐に息の根を止められる寸前、「ハンカ社と組んだら滅亡だ」と捨て台詞を残していった。

戦闘で軽症を負った少佐は、一旦自宅に戻って、物思いにふけっていた。最近、時折幻覚が見えることがある。今日もいないはずのネコの幻影が見えた。少佐は、処方されている薬を脊髄から注入してから公安9課へと出頭した。

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公安9課は、少佐をはじめ、同僚はバトー、トグサ、イシカワ、サイトー、ラドリヤ、ボーマンが集まり、検討の結果、芸者ロボットはみな「クゼ」という男に操られていたことが判明した。カッターは、荒巻に「クゼを探せ」を依頼し、バトーと少佐は芸者のデータを回収するためハンカ社へ、トグサはカッターの元へ向かうことになった。

少佐は、バトーといる時にだけ、心が休まる気がした。バトーは過去の苦い記憶に苦しんでいたが、少佐は自分の過去がどうしても思い出せず、やはり苦しんでいた。

ハンカ社へ到着すると、少佐はまずオウレイ博士から傷の手当を受け、最近発生する記憶のフラッシュバックと、過去の記憶を思い出せないことについて相談したが、オウレイ博士は悩む少佐に、「人間であるかどうか決めるのは記憶の有無ではなく、これから何をするかだ」と、やさしく慰めるのだった。

少佐とバトーは、ダーリン博士に面会したが、博士は押収した芸者ロボットからのデータの抽出に手間取っていた。少佐は、芸者ロボットの電脳内へ直接ダイブして情報を探った。危険を伴い、最後は精神への過負荷から接続異常をきたしてバトーが強制切断したが、少佐はテロリストの居場所について、手がかりをつかむことができた。

3-2.テロリスト「クゼ」を追いかけて

ダイブでの手がかりを元に、二人は、ヤクザの経営するナイトクラブ「サウンドビジネス」へと向かった。ヤクザ達に感づかれ、二人は分断されたが、何とか合流して建物奥へと入っていった。

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そして、建物の最奥部にてクゼと思しき男を目にしたが、そこに到達する直前、叱れられた爆弾が爆発し、少佐とバトーは倒れてしまった。少佐のボディは大破し、バトーは視力を失った。これを機に、バトーは義眼を装着することになった。

一方、カッターは荒巻に少佐に勝手に芸者ロボットへのディープダイブをさせるな、と警告した。しかし、荒巻はカッターの指示ではなく、総理大臣の指示で動いている、と動じなかった。

クゼは、ダーリン博士を殺害していた。公安9課メンバーがかけつけたが時既に遅く、現場に残されていた手がかりから、次のターゲットはオウレイ博士であることがわかり、博士の保護に動いた。

クゼは、ゴミ収集車のドライバー達の脳を操り、オウレイ博士の乗った車に当てて殺害しようとしたが、その寸前でバトーと少佐が現場へと急行し、オウレイ博士は一命をとりとめた。少佐は、その後ドライバーを追い詰め、署へと連行して尋問を行った。

しかし、そのドライバーは、実際にはその場で操られていただけだった。尋問中、ドライバーは自殺する前に、急にクゼの声色になって公安9課のメンバーを脅すのだった。

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このやり取りで、トグサはクゼの居場所の特定に成功した。少佐とバトーが現場へ急行すると、そのアジトの中には何十人もの人間が電脳空間につながっており、クゼはそれら人間の心を使い、そのネットワークの中につながっていた。

3-3.真実を追って動く少佐

そこで、少佐はクゼから、彼らは同じハンカ社のプロジェクトNo.2571の実験体であったこと、クゼが解体廃棄された次の実験体が、少佐であったこと、クゼは廃棄される前に意識体としてネットワーク上で独自進化したことを聞かされた。

しかし、クゼも少佐同様、思い出せない記憶を持っていた。それは、少佐のフラッシュバックにも出てきた、「小屋が燃えている」シーンだった。クゼは、少佐に記憶を抑制する投薬治療をやめるように示唆した。

少佐は、真相を究明するため、オウレイ博士のところへ急行した。博士は、少佐が98体目で、初めて実験に成功した実験体であることを告白した。その時、少佐はその場に現れたカッターに捕らえられてしまう。

カッターは、真相に気づいた少佐を廃棄するようにオウレイ博士に迫ったが、オウレイ博士は彼女を廃棄処理する代わりに、彼女の出自の手がかりを探すためのデータを注入した。怒ったカッターは、少佐が出ていってしまうと、オウレイ博士を射殺し、荒巻には少佐がオウレイを殺害したと伝えた。

手がかりが示す住所は、アヴァロン・アパート1912号室に向かうと、そこは彼女の母の住む高層アパートだった。話を聞いてみると、レジスタンス活動をしていた娘は1年前に失踪してしまったのだという。彼女の本当の名前は、草薙素子という名前だとわかった。彼女の母は、少佐を見て、目が娘に似ていると言った。

少佐は、母の自宅を出た時、電脳通信で荒巻と会話した。荒巻は、少佐がオウレイを殺害した、とカッターから通告があった、と少佐に伝えた。それを盗聴していたカッターは、公安9課全員に刺客を送った。

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荒巻は移動中にカッターの部下達から襲撃されたが、撃退した。また、トグサやバトーもそれぞれカッターの部下と戦闘になっていた。

少佐は、隠れ家でクゼと再会した。そこは、記憶の断片にあった、燃えてしまった小屋とよく似ていた。隠れ家を探索するうち、少佐には完全に記憶が戻ってきていた。かつて、少佐もクゼも電脳化に反対するレジスタンスとして活動しており、クゼの元の名はヒデオといい、素子=少佐の恋人だったのだ。

その時、カッターが二人の元へ遠隔操作で送り込んだ戦車が、二人を追い詰めた。少佐は、戦車の制御パーツを引きちぎり、公安9課のバックアップも得て、なんとか戦車を撃退することに成功した。少佐の体は大破し、二人は崩れ落ちた。クゼは、少佐に電脳空間で融合して、ネットワーク上で情報体として生きていこう、と少佐に迫ったが、少佐は断った。

一方、カッターのオフィスへと向かった。そして、首相の許可も得ると、最後に少佐と連携したうえで、カッターを射殺したのだった。

後日、少佐は母と一緒に素子の墓参りへと向かっていた。そして、これからは墓参りは不要だ、と母に告げた。そして、少佐はいつものように任務についていた。少佐には、やるべきことがわかっていた。過去の記憶に自分の証を求めるのではなく、これから何をしようとしているかが「自分」を決めていくとわかっていたからだ。電脳通信でコンタクトを取った荒巻から「少佐、お前に任せる」と合図が来ると、少佐は現場に突入していくのだった。

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4.ストーリーの感想や評価(※ネタバレ注)

4-1.予想以上の原作に対するリスペクトに驚いた!

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事前のインタビューでは、押井守監督の後押しもあって「割りと好きなように作っていった」と語っていたルパート・サンダース監督。しかし、フタを開けてみたらストーリーや扱っているテーマ、エンディング音楽に至るまで、マンガやアニメ原作を参照している部分が非常に多く、原作ファンには嬉しい内容になったと思います。

特に、1995年の押井守版「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」からの引用が非常に多く、ストーリーは違っていてもアクションシーンを中心に、4箇所で同じシーンが使われていました。そして、極めつけは川井憲次作曲のエンディング。1995年版のオープニングをここで持ってくるか!

もっとハリウッド流にあれこれ設定を弄ってくると考えていたので、世界観がしっかりキープされていたことにまずは嬉しくなりました。

反面、「攻殻機動隊」の世界をそれほど知らない人や、そもそも世界観がそんなに好きではない人にとっては、「なぜこの場面でこのストーリーや演出?」と乗れないファンもかなり多かったようですね。

4-2.豪華CG/VFX/美術による最新のブレードランナー的世界表現だった!

今作では、内容やキャストに不満がある厳しいレビュワーであっても、映像表現について真正面から批判したエントリはほとんど見かけませんでした。1995年の押井守版で提示された、英語や日本語、中国語、ハングルが渾然一体となった香港ライクなきらびやかで騒々しいな大都市の光景は、今作で大幅にバージョンアップされて表現されています!

高層ビル群に林立するのドデカイ立体CG広告f:id:hisatsugu79:20170408023552j:plain

きらびやかなネオンサインf:id:hisatsugu79:20170408023733j:plain

特に、都市の立体CG広告や、都市に張り巡らされた都市高速道路網、それにスラム街から都心の超高層ビルまであらゆる年代が渾然一体となったようなバイタリティに溢れ混沌とした猥雑な感じは、まさに原作のイメージどおりでした。

4-3.ハリウッドらしく、アクション重視でわかりやすく整理されたストーリーやテーマ

そうは言っても、士郎正宗のマンガ原作、1995年の押井守版は相当内省的・哲学的で難解なイメージがあるので、さすがにこの部分はハリウッドブロックバスター作品らしく、かなり分かりやすくブレイクダウンされていた印象です。

派手なアクションシーンの連続!f:id:hisatsugu79:20170408023907j:plain

まず、アクションシーンの割合が大幅に増えました。移動しては戦い、移動しては戦いの連続で、ハリウッド的に美麗なCG/VFXをふんだんに入れたアクションサスペンスになりました。劇中に平気で3分程度の無音パートが入る1995年押井版とは違い、テンポの良さが際立ちます。

「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」シリーズでは、原作マンガの時から一貫して「人間とは何か?」「自分とは何か?」「機械と人間の違いや境界線はどこにあるのか?」といった非常に抽象的で難解なテーマを扱ってきました。

その結論があいまいなまま、問いかけと問題提起で鑑賞者に自由に考えさせるように仕向けて終わる原作群とは違い、本作では、結論がハッキリとキャラクターのセリフとして大事なシーンで2度繰り返されます。1回目はオウレイ博士により、2回目は少佐のモノローグシーンとして繰り返して語られました。

「過去の記憶を自分の存在証明にするのではなく、これから何をしようとするかが自分を決める」

自らの凄絶な過去を受け入れ、肉親とも再会し、確かな人間的なつながりを得た素子=少佐は、これで過去に一旦ケジメをつけることができたのでしょう。不確かで過ぎ去った過去に固執するのではなく、今後どう生きていくかが自分自身を作っていく=自分自身の運命は自分で切り開いていく、という前向きな考え方に至ったのは、素子=少佐の確かな成長の証でもあり、アメリカ人らしい明快な脚本だなと感じました。

それを裏付けるかのような荒巻の少佐への接し方の変化も印象的です。映画冒頭では、現場へと突入しようと気がはやる少佐を荒巻は必死で抑え、コントロールしようとしますが、ラストの突入シーンでは安心したのか、一言「お前に任せる」と信頼しきって余裕ですからね。

ラストシーンで人形使いと融合し、電脳の海の中に消えていき、「神」に近い意識体のような存在へ進化した素子を描いた原作や1995年版と違い、本作では素子=少佐はあくまでまず「人間」であることにこだわり、それまで通りの人生を選択します。

この映画は、そういう意味で自らのルーツや出自に関する記憶喪失に悩んでいた素子=少佐が、過去の辛い経験や自らの運命を受け入れて、その上で「自分とは何なのか」答えを探りながら成長を重ねていく、素子の成長譚という見立てもできると思います。

ネット上では、意外にも日本人よりアメリカ人の方に「内容が薄い」「原作のほうが良い」と書いているファンが多かったのは意外でした。でも、個人的には、ともするとアート的になりがちだった過去作から、娯楽映画路線へとバランスを取り、上手にまとまった良作に仕上がったのではないかなと思います。

4-4.ビートたけしが思ったより大活躍!

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トレイラーを見る限りでは、添え物のようなチョイ役程度の出演かと思いきや、ラスボスとの対決シーンをはじめ、少佐の父親的な立場として全編に渡って非常に重要な場面で大活躍だった”ビート"北野たけし。

桃井かおりら出演した日本人が全員英語で話す中、一人日本語を貫き通すビートたけしは電脳通信で同時翻訳が確立した(と思われる)21世紀中盤においては、逆にリアリティがあってよかったし、日本人として嬉しくもなったり。

また、ラスボスを射殺するシーンは、気のいい部長というよりは、北野映画でよく出てくるヤクザそのもので、迫力あってよかった(笑)彼もキムタク同様、どの映画に出ても北野武なんですよね・・・。

ただし、ちょっと1点だけ致命的な難点が・・・。滑舌が悪すぎませんか?!重要な場面に限って、短くぼそっとあの滑舌の悪さでつぶやかれるのと、録音の小ささから、しばしば何を言っているか聞き取れないシーンが多発・・・。英語の字幕を読み取って、何とか文意を無理やり理解した場面が何箇所もありました。たけしのセリフのところにも、日本語字幕つけてくれないかな・・・

5.伏線や設定などの考察・解説(※ネタバレ注)

5-1.アメリカでは爆死?!意外に低評価にあえいでいる理由とは?

アメリカでは、日本公開日の1週間前に先行して封切られた本作。過去、1995年の押井守版「GHOST IN THE SHELL」が、日本アニメではじめてアメリカのビデオ売上チャートでNo.1を獲得した実績があっただけに、ブロックバスター映画としてかなり期待されていました。

にもかかわらず、公開初週の興収額は、期待したよりかなり低い1,800万ドル前後と期待はずれだったようです。この理由としては、事前のレビュー内容等がパッとせず前評判が低かったからなのですが、低評価がついた各種記事でやり玉にあがっていたのは、映画の内容やキャストの演技力等ではなく、起用されたキャストの「Whitewashing」問題でした。

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(引用:https://www.youtube.com/watch?v=1WUdQpuVRtw

「Whitewashing」問題というのは、原作や原案では有色人種が主役あるいは主演級なのに、ハリウッドで制作されると、制作側の思惑からキャストがなぜか全部白人ばかりになってしまう問題です。現代アメリカに特有の「人種差別」と深くからんだトピックです。

確かに今作は主役の「素子=少佐」役のスカーレット・ヨハンソンをはじめ、バトーやクゼ、オウレイ博士、カッターなど、ビートたけし以外の重要な役回りはみな「白人」が演じていましたね。今のハリウッドでは、2016年のアカデミー賞が白人だらけだったことが猛烈に批判を浴びたように、「人種問題」にはアメリカ人にとっては非常にセンシティブな状況なんだなと実感。

面白いのは、日本人のレビューを読んでいても、誰もスカヨハ主演が人種差別だ!なんて気にしていないことです。というか、逆に言うと日本人若手俳優で誰かこの役をやれたのだろうか?と。渡辺謙や真田広之クラスの実績ある若手女性俳優はハリウッドには皆無ですからね。(ローラに期待/笑)

そんなこと言ったら、この後実写化される「ジョジョ」や去年の「進撃の巨人」「テラフォーマーズ」なんかは外人役も全部日本人が無理やりやっていますからねぇ・・・(そして酷評の嵐が・・・/笑)

5-2.今からでも楽しめる!後追いで「攻殻機動隊/Ghost In the Shell」の世界に入っていくには

今回の実写映画から初めて「攻殻機動隊」シリーズを見たという人も多いと思います。映画が良かったら、今度は是非アニメ版やマンガ版にも入って行きたいところですが、どこからどう入ったらいいのか迷いますよね?

そこで、映画をきっかけに後追いで楽しむため、簡単な過去作品のまとめやガイドラインを書いておきますね。(実は、僕も士郎正宗の原作版以外は、実写映画化が決まってから初めて後追いでチェックしたクチなのです)

まず、これまで多数出ているアニメは、制作を担当した監督別に大きく3つの系列に分けることができます。

◯押井守監督作品(劇場版映画)
・「攻殻機動隊/Ghost In the Shell」(1995)
・「イノセンス」(2004)
・「攻殻機動隊2.0/Ghost In the Shell」(2008)
→1995年版のリメイク作品。「2.0」→「イノセンス」と見ていっても問題はない。

◯神山健治監督作品「Stand Alone Complex」
・「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(2002)
・「攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG」(2004)
・「攻殻機動隊S.A.C Solid State Society」(2006)

◯黄瀬和哉監督作品「ARISE」
・「攻殻機動隊ARISE」全5話(2013-14)
・「攻殻機動隊 新劇場版」(2015)

結論から言うと、どの監督系列作品から見ても大丈夫。それぞれが、独立したパラレルワールドとして位置づけられており、主要登場人物名やキャラ設定は概ね共通であるものの、少しずつ時代や場所、環境が違っているからです。

ただ、今回のハリウッド実写版と一番関連が深いのは押井守監督作品「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」なので、今回の実写映画が初めての方は、こちらを一番最初に見るとわかりやすいと思います。

そして、最後に是非チャレンジしてみたいのが、士郎正宗の原作シリーズ全3巻。こちらは、アニメや映画とは少しテイストも違い、ギャグマンガ的な味付けも少し入りますし、2巻などはエロマンガのような凄い描写もあります。ただし、中身の濃さはダントツ原作がNo.1でしょう。欄外までびっしり備考が書かれた濃厚な世界観は何度読んでも新たな発見があります。

5-3.攻殻機動隊アニメ新作続編の制作決定ニュースが!

そして、日本でのハリウッド実写版が公開されたまさにその日に、神山健治監督によって攻殻機動隊アニメ新作の新作決定がアナウンスされました!まだ「映画」なのか「TVアニメ」なのかメディアも明らかにはされていませんが、今後要注目ですね。(個人的にはまず「ひるね姫2」あたりを作って欲しいのですが・・・/笑)

6.まとめ

映画「ゴーストインザシェル」は、単純なアクションヒーローモノとして原作関係なく楽しめる作品ですし、原作を知っていれば知っているほど新たな発見のある映画でもあります。まだまだ「攻殻機動隊」の世界は広がっていきますが、その中でも本作は後々必ず抑えていなければならないとされる重要な作品になりそうな予感がします。

是非、映画館の(できれば3D環境で)スクリーンでゆっくり見てくださいね。
それではまた。
かるび 

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年4月現在上映中映画の感想記事一覧

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

7-1.押井守版 映画「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」(1995)

今作と一番関連がある作品は、数ある原作作品の中では1995年の押井作品だと思われます。すでに20年前の作品ながら、映像等の古さはともかく、今見てもメカデザインや扱っている深遠なテーマは2017年の今でも十分通用する快作。現在Amazonの動画配信でもアニメ部門No.1となっていますね。不朽の名作です!

7-2.士郎正宗 マンガ原作「攻殻機動隊」シリーズ

そして、本作制作にあたって監督が度々立ち返ったのがこちらの原作マンガ版。押井版作品より更に古く、1980年代にこれが描かれたというから驚異的です。士郎正宗が斬新だったのは、AIやサイボーグの描写にとどまらず、経済や社会、政治などと密接に絡み合った文脈・背景の元で緊迫感あふれるサスペンスタッチ(+妙なギャグセンス)で描いたことでした。表現をギリギリまでわかりにくく間引いた映画的な「引き算」的コマ割り表現もあって、何度でも読む度に新発見のある傑作です。

7-3.攻殻機動隊 PERFECT BOOK 1995-2017

過去に発表されたアニメの攻殻機動隊シリーズを全作品取り上げ、キャラ設定、ストーリー、深読み解釈など徹底的にわかりやすく説明を加えた解説本の決定版。これをとりあえず読み込むことで、攻殻機動隊の全てが俯瞰できるすごい充実したムックでした。これは買ってよかった!

7-4.その他攻殻機動隊/GITSのグッズ類はこちらから!

これまで、TV版DVD-BOX、劇場版DVD、映画サントラ、スピンオフ小説、フィギュアなど、様々な関連商品がリリースされてきた「攻殻機動隊」シリーズ。下記リンクに、それぞれAmazon、楽天の関連グッズのページを整理しました。よろしければ、ご活用ください! 

Amazon・楽天「攻殻機動隊/GITS」コーナー
Amazonで「ゴーストインザシェル」関連グッズを探す!
楽天で「ゴーストインザシェル」関連グッズを探す!

 

7-5.膨大な過去「攻殻機動隊」シリーズ作品群は、まとめてU-NEXTで!

過去の「攻殻機動隊」作品を一気に楽しむには、ビデオ・オンデマンドが一番時間をお金を節約できるベストなサービスだと思います。僕も、押井守「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」などは、たびたび加入中のU-NEXTで視聴しました。最近、手放せない頼もしいVODサービスになりつつあります。

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現在、僕はU-NEXT、Hulu、AmazonPrime、TSUTAYAとオンデマンドサービスに4社加入しているのですが、「攻殻機動隊」シリーズはU-NEXTが一番品ぞろえが良く、便利でした。ちなみに、加入初月は無料。見放題以外の有料作品も、毎月自動的に付与される1000ポイントを使えば、3本まで無料で見れるようになっています。国内最大120,000点の品揃えはさすが!

2017年4月18日現在、「攻殻機動隊シリーズ」作品は、全部で9作品がラインナップされています。U-NEXT一つあれば、ほぼ全作品がオンラインで見れちゃいますね。

今回の実写映画で「攻殻機動隊」の世界にハマったら、お金と時間を節約できるU-NEXTがおすすめです!

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