あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【美術展】ボッティチェリ展の感想~過去最大点数が集結!すごく良かった!~

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かるび(@karub_imalive)です。

今年は美術展をガツガツ回ると年始に決めてます。先日、早速新年1つ目として「フェルメールとレンブラント展」に行ってきました。そのレビューは、こちらに上げたばかりです。

1月は、これと、ダ・ヴィンチ展、本エントリで取り上げる「ボッティチェリ展」と大型の西洋美術展が東京でほぼ同時にスタートとなりました。今日は、ボッティチェリ展の感想を描いてみたいと思います。

1,ボッティチェリ展の概要

上野の東京都美術館でただいま開催中です。

開催場所:東京都美術館
開催日時:2016年1月16日~4月3日
(月曜日・3月22日は休館)
開催時間: 9:30~17:30
※ただし、毎週金曜日は20時まで ※入館は閉館の30分前まで
HP:http://www.tobikan.jp/exhibition/h27_botticelli.html
Twitter:https://twitter.com/Botticelli2016

公式Twitterをフォローしておくと、混雑状況やイベント状況がわかりやすいと思いますのでお薦め。

2,気になる混雑状況は?

混雑するのが嫌だったので、前売券をネットで予め購入しておき、公開日の開館時間に行ってきました。さすがに朝だからなのか、入場制限等は特になく、スムーズに入れましたよ。これはチケット売り場。全然並んでいませんね。

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入口前もこの通り。待ち時間もゼロ分です。

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ただし、午後はかなり混んでいたみたい。やっぱり狙い目は平日か、土日の午前中朝一がいいでしょう。

3,展示会概要

今回のボッティチェリ展は、日伊修好通商条約締結150年記念と銘打って、世界中からボッティチェリの作品を集めた、かなり強力な大回顧展となっています。主にフィーチャーされたのは、まず、ボッティチェリ。そしてその師匠であるフィリッポ・リッピ。さらには、師匠の息子であり、かつボッティチェリの弟子でもあったフィリッピーノ・リッピこの3人の絵画が時系列で紹介されていきます。

作品リストは、こちらからダウンロードできますよ。

4,ボッティチェリが活躍した時代背景など

ボッティチェリとその師匠/弟子が活躍した年代は、メディチ家が権勢を誇った16世紀後半のイタリア、フィレンツェでした。ちょうどダ・ヴィンチ、ミケランジェロあたりの超大物と同時代です。

ちなみに、「ボッティチェリ」と言う名前はアダ名だそうです。4人兄弟の長兄、ジョヴァンニが大酒飲みだったそうで、末弟だった彼は「小さな樽(ボッティチェロ)」と呼ばれていたので、そのままそれを通名で通したようです。

本美術展を見るにあたり抑えておくと便利な知識は以下の2点です。

4-1:芸術家の最大のお客は貴族や宗教家だった

当時の芸術家達の最大のパトロンは、メディチ家や教会などの政治家、宗教家でした。作品は、いわゆる今で言う請負受託開発体制。彼らからのオーダーを受け、初めて仕事が始まります。著名な芸術家を親方=社長とした徒弟制度の下で経営される工房単位で宗教画、壁画、肖像画、彫刻などを納品する体制でした。たまに下請けの工房にも仕事を出していたそうです。今も昔も、そのあたりの商慣行は変わっていませんね~。

4-2:政治体制が変わると作風が変化していく(せざるを得なかった)

ボッティチェリの駆け出し期~円熟期までは、権勢を誇ったメディチ家の芸術家庇護方針の下、必ずしもキリスト教義に基づかない、自由で開放的な雰囲気の傑作を生み出しました。異教徒の神話に基づく「ヴィーナスの誕生「プリマヴェーラ」などの傑作はこの時期ですね。

15世紀後半にメディチ家が失脚・追放されます。一転して宗教家、サヴォナボーラによる神権政治が始まると、ボッティチェリたちの作風もトーンが抑えめで宗教色を強めていくことになります。残念ながらボッティチェリ晩年の仕事は少し気が抜けている物が多いような・・・(素人目に見ても少しわかるくらい・・・)

5,特に印象に残った絵画を紹介するよ

5-1:ラーマ家の東方三博士の礼拝

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引用元:東京都美術館 ボッティチェリ展特設ページより

まずこれ。ボッティチェリが、メディチ家の仲買人をしていたラーマ家よりオーダーされて制作した、キリスト教で有名なモチーフ、「東方三博士の礼拝」です。これがボッティチェリの出世作になりました。

Salvastyle.comサンドロ・ボッティチェリ-「東方三博士の礼拝」解説ページ

こちらのサイトで詳述されていますが、この絵画、タニマチへ媚びまくってます(笑)メディチ家の先祖代々オールスターが絵画中にに登場してます。本人も画面右端でこっち向いてます。もっとイケメンに描けばいいのに(笑)

5-2:美しいシモネッタの肖像

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引用元:東京都美術館 ボッティチェリ展特設ページより

当時、貴族たちの間で絶世の美女と歌われたシモネッタ。15歳で貴族の人妻になって社交界にデビューしてから、瞬く間に大人気になりました。貴族ってロリコンばっかりなんだろうか・・・。人妻なのにメディチ家のパーティに駆りだされたり、画家のモデルになったり大人気でした。

なんで横顔なんだ!正面が観たい!と思ったのですが、当時は「横顔像」が一斉を風靡していたそうです。

 

そして、これが少し年をとったあとのその2です。少し老けましたかね?

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5-3:ボッティチェリ「聖母子(書物の聖母)」

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引用元:東京都美術館 ボッティチェリ展特設ページより

今回は、これが一押しです。この聖母=マリアが赤ちゃんのイエスをだっこしている構図は鉄板ですね。みんなメジャー画家はなんだかんだでこの構図でヒット飛ばしてますよね。ボッティチェリも全盛期にこれを描いていて、今回、目の前でみたらオーラが凄かったです。青の部分は、フェルメールも愛用したという高価な顔料、ラビス・ラズリがふんだんに使われています。

5-4:ボッティチェリ「誹謗」

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引用元:http://art.pro.tok2.com/B/Botticelli/vv036.htm

ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」もそうですが、1枚の絵の中に、ユニークな姿勢で沢山の人が言い争っているような構図の絵って、この時代特有だと思います。人々の気持ちや感情の揺れを、こうしてオーバーアクションな姿勢や身振り、手つきなどで表現したのでしょうね。非常に人間的で好きです。

この絵は、古代ギリシャのアペレスが描いた同名のタイトルを、ボッティチェリが復元したものです。画面の各人物は、擬人化された人間の感情を表現しています。これも、当日現場で生の絵を見た時に非常に迫力がありました。

5-5:フィリッピーノ・リッピ「聖母子と聖ステファヌス、洗礼者聖ヨハネ」

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引用元:『ボッティチェリ展』聖母子の画像 - turblog...I hope too -

最後に、ボッティチェリ以外で1枚ピックアップしておきますね。ボッティチェリの弟子、フィリッピーノ・リッピが最晩年に残した渾身の一枚です。

フィリッピーノは、ボッティチェリの師匠の息子であり、ボッティチェリの弟子でもあります。ボッティチェリの弟子としてキャリアをスタートさせましたが、1490年代以後はフィレンツェ画壇のエースへと成長します。

宗教画に傾倒したせいか、制作が停滞しクオリティの下がった晩年のボッティチェリに代わり、キャリア中期以降は独自性も打ちたて、円熟していきます。

初期作品は、師であるボッティチェリの劣化コピー的な作品にとどまっていましたが、キャリア中期~後期では、見応えのある作品が多くなります。

この1枚は、トーンが非常に落ち着き、枯れた色合いの中に、非常に丁寧に描き込まれた写実性が際立っていました。展示フロアの中でも、完全にボッティチェリ作品を食っていました。

6,まとめ

このボッティチェリ展は当たりです。西洋美術展に興味がある人は、絶対行くべき!20点以上のボッティチェリの作品が一同に会して展示される威容は見応え抜群でした。普通、巨匠の作品って多くても数点レベルで、そこにだけ黒山の人だかりができる・・・というパターンの展示会が多いですが、本展示会では、ボッティチェリの作品が多数展示されており、圧巻でした。「プリマヴェーラ」「ヴィーナスの誕生」のどちらかが来ていればパーフェクトだったと思います。

また、ボッティチェリの晩年の作品は、なんとなくですがイケてませんでした(爆)わざとでしょうが、構図が変だったり、人物に躍動感が感じられなかったり・・・。

それに代わり、ボッティチェリの弟子であり、ライバルに成長したというフィリッピーノ・リッピの確かな腕前と気品ある作品群が予想外に良かったです。にわかファンなので、メジャーどころしか知らない自分には非常に世界が広がり、勉強になりました。

7,おまけ:こんなエントリもあります

また、2016年度で、東京圏にて開催される西洋美術展について、これ行きたいなーというのをまとめてあります。こちらも、お役に立てれば是非。 

また、同時期に開催された展示会2つも合わせて載せておきますね。1日に幾つかはしごするのもいいと思います!

それではまた。

かるび